トヨタを含む日本の自動車メーカー8社などがエンジンの共同研究を行うという、従来では考えられない枠組みでの取り組みが先日発表されました。
これからはEVやPHEVが主流で、内燃機関はなくなるのでは? と思われる方もいるかもしれませんが、そうした光景は新興国も含めると10年後、いや20年後でもどれだけ実現しているかは分かりません。
今後もエンジンも使うハイブリッドが主役級になるはずで、トヨタの先見の明には改めて驚かされますが、ハイブリッドの燃費向上もまだまだ計っていく必要があります。
トヨタはデンソーと豊田中央研究所(豊田中研)と共同で、新しい素材である「SiC」によるパワー半導体を開発したと発表しました。「SiC」とは「Silicon Carbide」の略で、シリコンと炭素の化合物。
SiCパワー半導体は、ハイブリッド車(HV)などのモーター駆動力を制御するパワーコントロールユニット(PCU)に採用する予定で、今後1年以内に公道での走行実験を開始するとのこと。
走行時にバッテリーの電力をモーターに供給することで車速を制御し、減速時には回生した電力をバッテリーに充電するなど、HVなどの電力利用で重要な役割を担っているのがPCU。
重要な役割を担っている一方で、PCUはHVの電力損失の約1/4を占め、その大半がパワー半導体であるため、HVの車両全体の電力損失の約20%は、パワー半導体によるものだそう。
パワー半導体の高効率化(電流を流す時の抵抗を低減すること)は、燃費向上のキーテクノロジーのひとつであり、トヨタでは1997年の初代プリウス発売時よりパワー半導体の自社開発に取り組み、HVの燃費向上を図ってきたという背景があります。
将来的には、現在のシリコンパワー半導体と比べて、HVの燃費はJC08モードで10%の大幅向上、PCUは1/5の小型化を目指すそうです。
トヨタではHVがメインですが、SiCはHVだけでなく、EVやPHEVでも高効率化のカギを握っています。産学官挙げて日本の主導権獲得が活発で、世界からも注目が集まります。
(塚田勝弘)