以前「消費増税に世界から待った! 政府が自工会など意見聴取 !」でお伝えしたとおり、8月26日から31日にかけて麻生財務金融担当相や甘利経済再生担当相、日銀黒田総裁らが60人の有識者から消費増税に関する意見を聴取する場が持たれました。
聴取対象の人選が功を奏したのか7割超が消費税増税に賛成意見を述べたそうで、その約一週間後の9月8日にオリンピック2020年東京招致が決まるや、最後のワンピースが埋まったとして、「安倍首相が消費増税の意向を固めた」というニュースが一斉に報じられたのは周知のとおり。
そもそも消費増税はデフレからの脱却が前提で、「4~6月期のGDP(国内総生産)推移などをよく吟味した上で10月1日に最終判断する」だった筈が半月以上も前に増税が正式決定したかのようなムードが演出されるのには甚だ違和感を感じるところ。
政府は9月13日の段階で既に消費増税を前提に、2014年度に法人税を引き下げる調整に入ったようで、安倍首相は消費税率3%引き上げで見込める約8兆円の税収のうち、2%分となる約5兆円を「経済対策」に回すように関係閣僚に指示していると言います。
実質的な国民の負担増を1%程度に抑えて景気の腰折れを防ぐ狙いとか。
ただ、この「経済対策」と称する中身は公共事業への投資が中心になるとみられ、増税による税収の配布先が特定業者に偏る可能性が指摘されています。
本来、消費税増税は民主党時代に「社会保障と税の一体改革」の中で打ち出されたもので、少子高齢化に伴って予算額が膨張し続ける年金や医療、介護などの社会保障制度を維持・安定させる目的で制定されたもの。
消費税は1989年4月に3%で導入され、その後1997年4月に5%に引き上げられた結果、消費者を直撃、それまで10%台だったGDP成長率が1%~2%程度にまで鈍化。
消費税は所得に関係無く一律に課せられる為、結果的に高所得者層と低所得者層の間の格差が拡大し始め、現在もそれが拡大し続ける根源となったことから、著名経済学者の大半が今回の経済再建中の増税を危険視しています。
安倍首相も「増収分は全額、社会保障費に充てる」と明言して来た経緯が有るにも拘わらず、デフレ脱却の名目で増税分を従来どおりの公共事業(建設業界)に当てようという訳ですから「当初と話が違う」という観点で国民の理解が得られ難いのも事実。
冒頭の政府召集の有識者会議に出席した自工会(日本自動車工業会)の豊田会長は日本の持続的成長の為、消費増税には賛成するとした上で、取得税などの車体課税をそのままに消費税が現行の5%から10%に引き上げられた場合、2016年度の国内新車販売は353万台と前年度比で約168万台、3割以上落ち込むとの見解を示した模様。
実際、消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年当時、新車販売台数が約673万台から約580万台へと一気に14%程度落ち込んでいます。
トヨタ自動車の場合も1998年度の国内生産が約200万台から170万台へと30万台程度下回る結果に。
新聞報道によると、トヨタは今後の消費増税による販売減を考慮して、2014年度の国内自動車生産台数を2013年度の見込みより30万台少ない300万台程度とする計画を取引先の部品メーカーに示した模様。
開発競争力の維持や部品メーカーの下支えを考慮した「国内300万台体制」は維持する構え。
こうした先行き見通しを踏まえ、自工会としても9月19日に行われる来年度の税制改正に向けた政府との会議で自動車取得税など車体課税の廃止を改めて求めて行く方針のようです。
いずれにしても従来から世界的に見ても高額な税が課せられている日本の自動車ユーザーは消費増税+自動車諸税のダブルパンチ。
今後も政府の動きから目が離せない状況が続きそうです。
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