過給ダウンサイジングエンジンのすべてが“広島弁”で理解できる「博士のエンジン手帖2」

モーターファン・イラストレイテッドでエンジン評のコラムを連載している畑村博士が、世界のエンジン27機を纏めた「博士のエンジン手帖2」を2年ぶりに出版しました。

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畑村博士は、過給ダウンサイジングは従来とは着想が全く異なる技術であり、エンジンに大変革をもたらしていると論じています。そして「欧州の過給ダウンサイジング」と「日本のハイブリッド及びCVT」を対比させながら、「日本のエンジニアよ、技術の波に乗り損ねるな!」とばかりに、エンジンの長所や弱点、特徴を広島弁で斬りまくっています。「博士のエンジン手帖2」を読めば、過給ダウンサイジングのすべてがわかるといっても過言ではありません。そこでここでは、過給ダウンサイジング技術の経緯や特徴について、お伝えしたいと思います。

■欧州発・ディーゼル発「過給ダウンサイジング」の真の狙いは、燃費だけじゃない!

欧州でブレークした過給ディーゼルですが、当初日本では、排気量のダウンサイジングによるCO2低減効果や優れた燃費が理由だと思われていました。もちろんそれもありますが、本当の魅力は、過給がもたらす図太い低速トルクと、高回転を使う必要のない快適な走りなのですね。欧州では、ディーゼル・ターボで押し出しの効いた走りの良さが認められ、必然的にガソリンでも「過給ダウンサイジング」が拡大していったのです。

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■パワーダウンを受け入れろ!過給ダウンサイジングは低速トルクがキモだ!

欧州市場では「大排気量ガソリン」よりもパワーが劣る「過給小排気量・ディーゼル」が普及し、クルマの走りに大切なのはパワーの「最高出力」ではなく、低回転からの「大トルク」であることが認知されました。日本でも、ようやく過給ダウンサイジングの中核技術「直噴ターボ」が登場。ディーゼルでは、マツダがスカイアクティブDを送り出して欧州勢の度肝を抜きました(素晴らしい!)が、ガソリンエンジンでは未だパワー重視の設計から抜け出すことができていません。

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■欧州発の過給ダウンサイジング技術と日本が誇るCVTは、水と油の関係?!

過給ダウンサイジングの中核技術のターボは、エンジン回転を上げることで力を取り出す仕組みです。一方CVTは、自らが可変変速してエンジン回転を一定に保ち、効率を維持する技術。過給エンジンとCVTを組み合わせると、せっかくエンジン回転を上げてターボパワーを取り出そうとしても、CVTが可変変速して回転を維持してしまうため、過給エンジンの良さを打ち消してしまうのですね。日本メーカーは、「CVT命」で進んできたから、CVTと相性がよくない過給ダウンサイジング技術を、なかなか受け入れられない様なのです。

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BMWが、5シリーズの2.5Lと3L直6NAエンジンを2L直4ターボに載せ替えた時は、正直我が目を疑いました。BMWの代名詞「シルキー6」を捨てた理由が、正直わからなかったのです。今回「博士のエンジン手帖2」を読んで、過給ダウンサイジングの経緯や技術的側面を知り、あらためて過給ダウンサイジングの原理を理解することができました。また日本の技術力をもってすれば、すぐにでもキャッチアップできることも、よ〜くわかりました。

またいよいよ今月は、過給ダウンサイジングの本家VWが、日本で新型ゴルフ7を発売開始します。ネットや雑誌の先行試乗レポートでは、かつてないほどの「絶賛の嵐」ですから、非常に楽しみになってきました。

■新型VWゴルフ
http://new-golf.jp/

(拓波幸としひろ)