以前に「急がれるEV車日本独自充電規格CHAdeMOの将来対応 !」で触れたとおり、EV用の急速充電器「CHAdeMO(チャデモ)」は日本がIEC(国際電気標準委員会)に提案している国際規格の一つで、現在世界で実用化されているものはこの方式のみ。
しかしながら2012年10月15日に米国自動車技術会「SAE」がEVとPHVの急速充電規格として「Combined Charging System(コンボ方式)」を採用すると発表しました。
「コンボ」規格を提唱しているのは米国のGM、フォード、クライスラー、欧州のVWや傘下のAudi、ポルシェ、さらにはダイムラー、BMWといった米欧の大手自動車メーカー8社で、普通充電と急速充電の両方を1個の充電コネクタで行えることが特徴となっています。
既に日本を中心に欧米など世界2445ヶ所(2013年2月末現在)にCHAdeMO方式の充電器を設置するなど、EVや急速充電設備の実用化で先行中の日本ですが、米欧が「コンボ」方式を提唱した為、今後の世界に於ける充電方式の多様化が懸念されています。
つまり日本企業が莫大な投資をして来た独自充電規格の存続に関わる事態となっており、CHAdeMO方式の世界的な普及を急がなければならない状況。
そうした中、経済産業省が音頭をとる「NEDO」(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2013年4月26日、スペインのマラガ市で25日から「スマートコミュニティ」の実証実験を開始したと発表しました。
今回の実証実験で日本製EVを現地へ大量投入、さらに日本製CHAdeMO方式急速充電器を併せて設置することで世界の関心を集めると共に、世界の関連企業を早期に巻き込んでしまおうという作戦に出た訳です。
そもそも「スマートコミュニティ」は一言で表現すれば「環境配慮型都市」のことで、「スマートシティ」とほぼ同義と言える概念。
経済産業省が将来の日本の成長を支える為、日本が持つ省エネルギー・新エネルギー技術を活かして世界市場でビジネスチャンスを獲得すべく、次世代エネルギー・社会システム協議会での取り纏め結果を元に2010年2月15日、「NEDO」を事務局とした官民協議会「スマートコミュニティ・アライアンス」を設立。
既に日本国内でも4地域(横浜市、豊田市、京都府学研都市、北九州市)で次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクトが始動しており、天候による出力変動が大きい太陽光発電・風力発電等といった再生可能エネルギーや、熱・未利用エネルギーも含めたエネルギーを地域単位で統合的に管理する技術にEV等の交通システムなども組み合わせた実証試験が行なわれています。
今回のスペインでの事業期間は2013年度から2015年度までの3年間で、本事業にかかる総事業費(日本側)は約60億円(うちNEDO負担分約50億円)。
「NEDO」はマラガ市の実証プロジェクトで得られた技術や成果を活用して今後は欧州の他の国や中南米地域に対してもシステムの事業展開を図って行くと言います。
実証実験ではまず三菱の「i-MiEV」160台と、続いて日産の「リーフ」40台の計200台を投入、CHAdeMO方式の急速充電器(出力50kw)をマラガ市内外の9か所(三菱重工製5カ所、日立製4カ所)に計23台設置する計画。
実証実験には日本から三菱重工業㈱、三菱商事㈱、㈱日立製作所が、スペインから大手電力会社のエンデサ、通信最大手のテレフォニカ、コンサルティング会社アイエサが参画。
政府の後押しを背景に世界を相手に動き出した日本のEV関連ビジネスの今後の進展が大いに注目されます。
■NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)
http://www.nedo.go.jp/
■経済産業省 スマートコミュニティ Webサイト
http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/smart_community/
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