本当に地球に優しい低公害車とはどんなクルマなのでしょうか。
一般的に「低公害車」とは窒素酸化物(NOx)や一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)等の大気汚染物質の排出が少なく、環境負荷が少ない自動車を指しており、「HV」 「EV」 「CNG(天然ガス)車」 「圧縮空気車」 「メタノール車」の5種類が「低公害車」とされています。
ちなみに政府の2020年時点に於ける低公害車の普及目標は資料によると、HVが20~30%、EV、PHVが15~20%、FCVが1%、低公害ディーゼル車が5%、全体で20~50%、2030年には全体で50~70%の普及率を目指しているようです。
そこでまずジャンル毎に各自動車メーカーの低公害車対応状況から見て行きましょう。
現在、最も普及が進んでいる低公害車と言えば「HV(ハイブリッド車)」。エンジンとモーターを併用して発電した電気をバッテリーに充電しながら走るHVは実燃費が20km/L以上見込めることから、広く一般ユーザーに受け入れられています。
【HV関連】
「HV」のパイオニアであるトヨタは2015年末までに新型HVを21モデル投入予定としており、世界販売の10%以上をHV化する予定と言います。
また、ホンダは3種類のHVシステムを車両クラス(コンパクト/ミディアム/スポーツ&上級)で使い分けてバリエーションを拡大する計画。 「EV」で先行する日産も2016年末までに15モデルの「HV」を投入する計画を明らかにしました。
「HV」は実用的でインフラに左右されないため、普及させやすく、少ない燃料で航続距離を伸ばせるメリットがありますが、化石燃料を使用する点では「本当に地球に優しい低公害車」とは言い切れない面があります。
【EV関連】
排気ガスが一切出ない「EV」については日産と三菱が市販化で先行しており、走行音が非常に静かで発進加速も力強く滑らかなメリットがありますが、急速充電設備などのインフラ整備や電池の性能向上が追い付いておらず、エアコン使用時等の航続距離への不安から米国でも販売が伸び悩んでいる状態。
トヨタやホンダは少数リース販売に留めており、充電可能な「PHV」で当面様子を見るなど、メーカー間で「EV」の開発取組みに温度差がみられます。また充電用の電気を火力発電等で発電した際には大気汚染物質が発生します。
そこで自動車メーカー各社は「ゼロエミッション」を目指し、水素と酸素を化学反応させて発電しながらモーターで走る、究極の低公害車、「FCV(燃料電池車)」の市販化を急いでいます。「FCV」のメリットは水素充填時間や航続可能距離がガソリン車並みである点。
【FCV関連】
トヨタは2015年に「FCV」の市販を予定しており、2013年1月24日のBMWとの正式提携で共同開発&量販効果による車両の低価格化を狙うと共に、2020年の本格普及に向けて水素関連ビジネスへの参入を予定しています。
日産も同じく2013年1月29日にダイムラー、フォード、ルノー日産アライアンスの3者による共同開発を発表、莫大な開発費を削減するのが狙いで2017年頃に量産車を発売予定。
独自路線を貫くホンダも大幅なコストダウンを図った「FCV」を2015年から日米欧で順次販売予定とか。
しかしこの「FCV」も燃料となる水素を電気分解等で生成する際に膨大なエネルギーを必要とします。
こうして見て行くと、現時点で開発されている「低公害車」はどれも車両が走行する際の限定的な環境に対しての「低公害」を目指していることがわかります。
では本題である「本当に地球に優しい低公害車」とするにはどうすれば良いのでしょうか。
その答えは最良の低公害車とされるFCVに風力発電や太陽光発電などの「自然エネルギーを使って生成した水素」を充填することに行き着きそうです。
もう一つの答えとして米国のシェールガス革命により、2017年頃に日本にも輸入が開始される見込みの天然ガス「CNG」に改めて着目するのもスピーディに低公害車を普及させる近道となるかもしれません。
と言うのも、「CNG」はガソリンよりも燃焼時のCO2の発生量が少なく、且つ安価でシェールガス埋蔵量も400年分と言われており、日本に於いても既に採掘テストが繰り返されています。
一例として岡山交通㈱の両備タクシーグループが開発した、LPG(液化石油ガス)も使えるように工夫したプリウスHVの航続距離は2000km以上と非常に優れており、CO2の排出量もガソリン車に比べて12%程度削減できると言います。
結論として「本当に地球に優しい低公害車」を実現するには使用エネルギーの生成段階からクリーン化する必要が有ると言うことになり、トヨタが「FCV」の市販に合わせて取り組む「水素関連ビジネス」はもしかするとその領域まで踏み込んだ計画となっているのかもしれません。
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