2008年8月、当時上院議員だったオバマ氏は2015年までに合計100万台のPHVとEVを普及させるという公約を発表しました。
しかし、「地底に眠るシェールオイルで米国が世界最大の産油国に!」でお伝えしたとおり、IEAが2012年11月、「米国は5年以内に世界最大の産油国になるだけで無く、2035年までには国土全体のエネルギー需要を全て自給可能になる」と発表した辺りから事態が変化。
ロイターが伝えるところによると、米国でEVの普及に失速の兆しが出ていると言います。環境対応車として期待されたものの、消費者の反応が鈍く普及が進まない中、オバマ政権が公約に掲げていたEVの普及目標を1月末に事実上取り下げたそうです。
米国で普及が進まない理由は200kmに満たない航続距離や急速充電設備不足、高めな車両価格などに加えて、冒頭の埋蔵量400年分と言われる「シェールオイルブーム」により、従来の中東情勢に左右されるガソリン価格上昇への不安から開放された事が大きいようです。
EVで先行する日産は2016年までに世界で150万台(ルノー含む)の販売を計画しているものの、2010年12月に発売した「リーフ」の世界販売は2年間で5万台弱に留まっている模様。
こうした事態打開の為に同社は2月1日、米エネルギー省の充電インフラ整備計画への参画を表明。米主要都市に1年半後までに日産製の急速充電器を500基新設するそうです。
また価格に関しては日本でも経産省がEVの普及を阻んでいる要因が「車両価格」に有るとして補助金制度の見直しにより、2015年末までの3年間で段階的な価格引下げ政策を発表。
2016年以降、EVがガソリン車並の価格となるよう自動車メーカーに働きかけています。但しインフラ構築については政府主導の動きが見られないのが実情。
一方で日産は2012年12月、15モデルのHVを2016年末までに投入する計画を発表。 さらに2013年1月24日にトヨタがBMWとFCV(燃料電池車)の共同開発で正式提携を発表すると、5日後に日産がダイムラー、フォードとのFCVシステムの共同開発を発表。
加えて日産は2月1日にFCV開発を加速させる為、開発組織をEVと独立して新設したと発表。2017年をめどにFCVの量産を始める計画と言います。
このようにEVで先行して来た日産もリーフによるEV普及を基本軸に据えながらも、実際にはHVやFCV、更にはクリーンディーゼルも含めて全方位で取り組んでいるのが実情。
世界的に期待値程にEV普及が進まない最大の理由はやはり「電池容量」が現時点で不十分な為で、ガソリン車並の航続距離が期待できるFCVが一般的な価格になって普及するまではエンジンを併用するHV技術に頼らざるを得ない状況。
世界最大の新車販売市場である米国で当面、利便性の良い化石燃料を併用するHVなどが支持を得るとすれば、EVはむしろ「超小型自動車」などに代表される都市内の足として急速に普及して行くことになるのかもしれません。