タイヤの性能表示“ラベリング制度” 欧州と日本での違いに注意

タイヤラベリング制度は低燃費タイヤの拡販を目的として日本では世界に先駆けて2010年1月に始まったが、EU(欧州連合)でも2012年11月までにラベリングすることが義務された。しかし性能のグレーディング(等級分け)に関して、日本では「転がり抵抗」「ウェットグリップ」の2種だけだが、EUでは「騒音」も加えた3種類をグレーディングしている。「転がり抵抗」と「ウェットグリップ」は二律背反の関係にあるからこの2項目は重要だが、「騒音」に関してもユーザーにとっては有用な情報になる。

欧州のタイヤが日本に輸入されたときには「騒音」も参考になるから良いのだが、その前に問題点がある。それは日本と欧州のグレーディングの違いだ。

日本のラベリング制度では「転がり抵抗」はAAA,AA,A,B,Cの5等級にグレーディングされ、「ウェットグリップ」はa,b,c.dの4等級に分類される。しかしEUは「転がり抵抗」はA,B,C,E,F,Gの6等級(表示は使わないDも入れた7等級)と「ウェットグリップ」はA,B,C,E,Fの5等級(表示は使わないDとGも入れた7等級)で、「騒音」は3段階の評価と音の大きさを表すdB(デシベル)が表示される。等級が同じ「A」でも意味が異なる。つまり日本のラベリングとEUのラベリングをそのまま直接比較できないということだ。

さらに大きな問題点があることがドイツ最大のタイヤメーカーであるコンチネンタルの提案によって判った。

それは「ウェットグリップ」の性能をテストするときに、同じクルマ、同じタイヤでもテストコースが異なれば絶対評価の結果が変わってくる。さらに同じクルマ、同じタイヤ、同じテストコースでも、季節が異なれば気温が変わるので結果も異なるという問題がある。もちろん屋内の機械でタイヤ単体を試験すればいつも一定の結果が得られるが、荷重変化やABSが作動したときの実車でのテストとは別物のものになってしまう。

そんな試験結果の矛盾点を克服するためにコンチネンタルが開発したのが世界初のAIBA(全自動ブレーキ性能屋内試験場)である。コンチネンタルのテストコース内に設置された。

AIBAの室温は10〜25℃±1℃の範囲でコントロールすることができ通常は年間を通じて20℃でテストする。1枚が75mで120トンあるテスト用舗装路面は油圧で少し浮かせ420個のローラーの上を電動モーターで移動するようになっていて、スイッチ1つで別の路面と交換することができる。現在の路面は4枚だが5枚までのキャパシティがある。自動散水設備がありウエット路面も可能だ。

このコースとは別に従来型のアイス路面も同じ建物の中に平行して1本用意している。こちらも温度管理が可能でタイヤ倉庫も冷却してテスト精度を高めている。

AIBAではテスト車のブレーキペダルを踏むのは人間ではなくロボットの脚だ。同じ急ブレーキテストを年間10万回できるという。

トレーラーヒッチを改造して付けた鉄のプレートをリニアモーターで駆動する爪が押してガイドレール沿いに加速していく。その加速力はなんと0-100km/hが4.6秒、最高速は120km/h、3.5トンのSUVもテストできるというから凄い力持ちだ。通常ドライ路面は110km/hから3回、ウエット路面は85km/h5回のテストをするという。テストごとに20cm横にずらした路面を使うから、舗装路面のばらつきの影響を少なくしている。

実車を屋内でテストするというのは日本にもある。ブリヂストンの士別テストコース内、ミシュランは士別にある寒冷地試験場内にあるがアイスバーン専用コースで夏は試験できない。ウインタータイヤだけでなくサマータイヤも含めて1年を通して、ドライバーなしで試験できるコンチネンタルのAIBAとは大きな違いがある。

ユーザーにより正確な情報を与える必要があるラベリング制度だが、コンチネンタルのAIBAが他のタイヤメーカーにも広がってほしいものだ。

 (菰田 潔)