去る11月2日、米国環境保護局(EPA)が「現代」と傘下の「起亜」が販売した車両の燃費性能に過大表示があったと発表。対象車は2010年後半以降に米国とカナダで販売された計100万台にのぼり、北米市場で成長して来た両社にとって大きな痛手になりました。
報道によると、現代の看板車種の「ソナタ」や「エラントラ」など8車種、起亜の小型車「リオ」など5車種、計13車種が対象で、燃料1ガロン(約3.785リットル)当たりの走行距離を最大6マイル(約9.6km)過大に表示していたというもの。
米国では「1ガロン40マイル」の燃費性能がエコカーの基準となっており、対象13車種のうち6車種が、最大燃費を1ガロン40マイルとしており、燃費の良さを訴える為に意図的に数値を水増ししていたのでは?との疑惑がもたれました。
おりしも現代グループはウォン安を追い風に米国でシェアを伸ばし、2012年度1-11月の販売でシェア8.3%を確保。
米国での新車販売台数は1-11月で116万台に達しており、VW(39.4万台)やBMW(30.4万台 MINI含む)を遥かに凌いでトヨタ(189万台)やホンダ(129万台)にも迫る規模となっていることから、米国は現代グループにとって非常に重要な市場の一つであることが伺えます。
こういう話を聞くと同じく米国でユーザーの純正外フロアマット使用によるアクセル戻り不良事故でNHTSA(米国運輸省道路交通安全局)からやり玉に上げられ、対応が後手に回ったことで膨大なリコールに至ったトヨタの一件が思い出されます。
新聞報道によると、指摘を受けた現代グループは燃費性能を信じて購入したユーザーに対する補償として、過大表示分や走行距離などから燃料費を過去に遡って算出、さらに15%を上乗せして支払うことを即座に決定したと言います。
こうした素早い対応はトヨタの米国での事例からの学習成果なのかもしれません。
しかし、どうやらこれで一件落着したという訳ではなさそうです。
と言うのも、「燃費の水増し広告」の影響で、買ったばかりの新車のリセールバリューが下がったとして、ユーザーから燃料代だけで無く、今度は車両値下がり分の補償を求める集団訴訟が発生した模様。
現代グループの2012年度世界販売台数は11月時点で651万台で、12月末には700万台突破が確実視され、昨年に続き世界販売第5位にランクインする情勢。
欧州腕利きデザイナーのヘッドハンティングによる車両デザインの急激なレベルアップや徹底した日本車研究による品質の向上など、巧みなマーケティング戦略との合わせ技で急成長を見せる同社ですが、今回の事件では熾烈化する低燃費化競争で日本やドイツなどに対する焦りがあったのでは? と思わせるフシも。
研究開発の分野に於ける技術の蓄積不足が垣間見えた一幕だったと言えそうです。
いつかは何処かで起きそうな燃費過当競争の顛末。日本車メーカーも「対岸の火事」ではなく今一度、カタログ燃費広告にも細心の注意をはらった方が賢明かもしれません。
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