既報のとおり、米国自動車技術会「SAE」が10月15日にEVとPHVの急速充電規格として「Combined Charging System(以下コンボ)」を採用すると発表しました。
「コンボ」規格を提唱しているのはGM、フォード、クライスラー、VW、Audi、ポルシェ、ダイムラー、BMWといった米欧の大手自動車メーカー8社で、普通充電と急速充電の両方を1個の充電コネクタで行えることが特徴となっています。また急速充電時間もフル充電まで15分程度と短く、現状の「CHAdeMO」方式の半分以下とか。
現在EV、PHV用に実用化されている急速充電システムは日本で規格化された「CHAdeMO」だけですが、コネクタが普通充電と急速充電で分かれており、車両への搭載スペースなどでは合理的とは言い難い面も。
VWが2013年に投入予定とされる「uP!」のEV版やそれに続く新型Golf のEV版でも「コンボ」方式を採用しているようで、同社はその理由として「顧客の利便性」を一番に上げている模様。確かにメーカーにしてみれば一体化されている方がコスト面でも設計面でも有利であることは言うまでもありません。
とは言え、この「コンボ」方式はVWの事例の如く2013年から展開される予定で、未だ実用化はされていません。しかも米・欧ではコネクタ形状も異なるようです。
一方、日本の自動車メーカーや電力会社が中心になって策定している「CHAdeMO」方式は日本を中心に既に24ヶ国1600ヶ所に設置が進んでおり、日産、三菱、トヨタ、PSA、東電などが「コンボ」方式に先行して今後も粛々と採用拡大する意向と言います。
欧米自動車メーカー各社が既存の日本規格に目を向けず、「コンボ」規格を採用したことで、結果的に日本に輸出するEV車には「CHAdeMO」方式を搭載せねばならず、このあたりが日本にとって将来的に理不尽な「輸入障壁の火種」の材料にされかねません。
そこで日本からの輸出車や現地生産車などで当面の策として考えられるのが両規格に適応する車両側のコネクタ開発が挙げられます。
また既に普及中の急速充電器についても「CHAdeMO」、「コンボ」用共にAC-DCコンバーターを使って交流電流を直流に変換しており、手を加えれば「コンボ」式との併用も可能かもしれません。いずれにしても、莫大な「CHAdeMO」方式への投資を無駄にしない工夫が必要となります。
さらに一歩進めて既に都営バスで実証運転中の「非接触充電方式」も有効な解決手段かと。なにせコネクタ形状云々といった面倒な話も無く、ドライバーは煩わしい給電時の配線作業からも開放される訳で、その実用化が急がれると共に、遅れているとされる電波法などの法整備も急務です。
EV技術で先行する日本の独自規格「CHAdeMO」に対する政治的判断が見え隠れする今回のSAEの「コンボ」規格採択ですが、日本企業が技術で先行しながらも国際規格競争に敗れた前例は多く、「CHAdeMO」が日本だけのガラパゴス規格とならない為にも、次の一手を官民一体で早急に打つ必要性が有るのではないでしょうか。