すべてのメカニズムは「超低重心FRスポーツカー」実現のために!【新型トヨタ86のすべて★メカニズム編】

トヨタ86を言葉で表現すると、「2L水平対向エンジンを搭載した超低重心FRスポーツカー」であり、「トヨタとスバルが共同開発した量販グローバルスポーツカー」であり、「昭和のハチロク魂を伝承する199万円からのリーズナブルなスポーツカー」でしょう。

実際特徴を書き出すだけでも、スポーツカーが売れないこの時代に「よくぞ生まれてきてくれた!」と頭が下がる思いがします。 m(_ _)m

中でもメカニズム的に響くキーワードは、やはり「ボクサーエンジン搭載の超低重心FRスポーツカー」ですよね。
まさに他の国には真似のできない、ジャパンオリジナルパッケージと言えるでしょう。その実現には大きく3つのポイントがあります。

ひとつは、新開発の専用エンジンです。もともとは、スバルが開発したFB20型をライトチューンして搭載する企画だったそうです。ところがトヨタ側が「スポーツカーなら2Lで200馬力!」とトコトンこだわったため、ボアとストロークが86mmスクエアの高回転型FA20型が新開発されました。

「2010年にボクサーエンジンとして21年ぶりに全面刷新されたFB20型をベースとして、高回転域の特性と高出力化を狙いボアストロークを変更。さらにトヨタの技術であるD-4Sを組み合わせている。」
「直噴は高負荷時には冷却効果でよりパワーが出せるが、低負荷時では気化が遅れるため絞りバルブ等で対応するのが一般的。D-4Sでは低負荷時はポート噴射を使うことで、絞りバルブなしでドライバビリティを向上させている。」

2つ目はエンジン搭載位置です。是非ともボンネットを開けて、足元の高さを比べてみてください。なにしろエンジンが膝の高さにあるのですから、只事ではありません。

「スバル製4WDに対し、エンジン搭載位置を下方に60mm、後方に240mm移動して搭載することで、460mmという重心高と、前後53:47という良好な重量配分を獲得している。」

更に3つ目は、超低重心パッケージによる別次元の走りを実現するために「プラットフォーム」も新設計しました。トヨタとスバルが開発費を折半し、両ブランドでグローバル販売を展開するからこそ、こんな贅沢な仕様が実現したのでしょう。

「既存の何かを流用したのでは、ここまで低重心にすることはできなかっただろう。現代の乗用車のボディは一般に、前席乗員のほぼ真下に骨格が通っている。ここで前面衝突荷重を支え、乗員を保護するためだ。この骨格断面が大きいほど、座屈強度は高くなるが、その上にフロアパネルを載せる都合上、乗員の着座位置も高くなる。そこで86はこの骨格を扁平にし、フロアパネルを下げた。」

このクルマは「すべてのメカニズムは”超低重心FRスポーツカー”実現のために存在している!」と言っても、過言ではないと思います。本当にトヨタとスバルが、持ちうる技術を出し切ったからこそ、この世に生まれ出ることができたのだと実感しました。
でもこうなってくると、このお宝のようなプラットフォームを「2ドアクーペ専用」で終わらせてしまってはもったいないですよね。セダンやワゴン等もっともっと違うジャンルで花開いて欲しいと、切に願う次第です。

(拓波幸としひろ)