登場間近、SKYACTIV-G 1.3は、まだまだ伸びる!

まもなくマイナーチェンジ、6/9よりディーラーで予約も始まった新型デミオ。発売は6/30予定、希望小売価格は114万9000円~162万1750円。

 

その燃費性能は30km/L(10・15モード)で、ハイブリッドなどに頼らずエンジンの改善によって燃費性能を大幅にアップしているというのがウリ。

 

思い起こせば、現行デミオのデビュー時に省燃費グレードが存在していたことは話題となりましたが、その13C-vグレードに搭載された1.3リッターエンジンは、自然吸気ながらミラーサイクルとすることで、それまでより燃費性能を20%も改善した23.0km/Lを実現しましたが、今度のエンジンは30.0km/Lと、さらにさらに燃費性能を向上させているわけです。さて、そのヒミツは?

 

というわけで、新型デミオに搭載される『SKYACTIV 1.3』エンジンに大注目。

 

■『SKYACTIV-G 1.3』の主要諸元

直列4気筒1.3L直噴ガソリンエンジン(i-stop付)

排気量: 1.298L
ボアxストローク: 71.0mm x 82.0mm
圧縮比: 14.0
最高出力(ネット): 62kW/5,400rpm(84PS/5,400rpm)
最大トルク(ネット): 112Nm/4,000rpm

 

■『SKYACTIV-G 1.3』の特長

  • 圧縮比14.0を世界で初めて達成する、効率の良い自動車用ガソリンエンジン
  • マルチホールインジェクターによる緻密な燃料噴射制御を行い、理想的な燃焼を実現
  • マツダ初の「デュアルS-VT」(可変バルブタイミング機構:吸気側電動式)と高圧縮比との組み合わせによって、従来にないミラーサイクル化(吸気バルブの超遅閉じ)を実現して効率を向上
  • ロングストローク化したコンパクトな燃焼室設計によって効率を向上
  • 理想的な燃焼室形状をつくるキャビティ(くぼみ)付きピストンを採用
  • クランクシャフトの細径化や新型動弁機構(ローラーフォロワー)、オイル消費量を低減しながら採用した低張力リングなどにより、機械抵抗を30%低減
  • 「クールドEGRシステム」の採用をはじめ各種の徹底したノッキング対策を実施
  • アイドリングストップ機構「i-stop」の作動頻度を向上し、さらに再始動時の燃料噴射量を低減して燃費性能を8%向上。よりスムーズな再始動が可能
  • 軽量・高剛性のアルミ合金製エンジンブロックを採用

メーカーとしては、上記のようにいろいろなアピールポイントがあるわけですが、ものすごく端折っていえば「アイドリングストップと高圧縮(ハイコンプ)によって燃費性能を稼いでいる」という風にまとめられます。

 

『i-stop』と名付けられたマツダ独自の直噴と組み合わせたアイドリングストップ機構が燃費改善に効果があることは、すでに採用したアクセラなどのモデルによって証明されているところですから、この『SKYACTIV 1.3』と呼ばれる新型エンジンのツボは”ハイコンプ”にあり、と言い切ってしまいましょう。

 

これまた乱暴な言い方になりますが、ガソリンエンジンは圧縮比が高いほど熱効率に優れるもの……でありますが、より正確にいうならばピストンが上昇するときの圧縮比ではなく、ピストンが下降する際の“膨張比”が大きいほど効率に優れることになるわけです。

ただし、通常のエンジンでは圧縮比=膨張比といえます(正確には圧縮比が14:1としたら膨張比は1:14と逆の表記)となるので、本来の膨張比ではなく、圧縮比が高いことが高効率と表現されてきたわけです。

 

では圧縮比(膨張比)を高めるほどに効率が上がるのであれば、どこまでも高くすればいい、と思ってしまいますが、そうはいかないのは圧縮比を高くすることによる大きなマイナス面があるから。それがノッキングと呼ばれる異常燃焼で、これが発生するとエンジンの寿命にも悪影響を及ぼすので、点火時期を遅らせるなどの制御によってノッキングを回避する必要に迫られます。しかし、その状態は効率にいいはずはなく、むやみに高圧縮にすることは、ずっとノッキング回避の制御になってしまうのでデメリットしかありません。

 

そいういう意味で、圧縮比の上限は決まってくるのですが、ハイオクよりノッキングの起きやすいレギュラーガソリンの場合は、さらに厳しい条件なので圧縮比を上げることは困難。現時点でいえば日本国内のレギュラーガソリンに対応した直噴エンジンでは圧縮比12.0あたりが上限となっていました、これまでは。

 

しかし、新型デミオのSKYACTIV 1.3の圧縮比は14.0と一気に高くなっていて、このまま動かしたのではノッキング回避するのは難しいのでは? と思ってしまいます。しかし、それが問題ないのはメーカーの発表にあるように『「デュアルS-VT」(可変バルブタイミング機構:吸気側電動式)と高圧縮比との組み合わせによって、従来にないミラーサイクル化(吸気バルブの超遅閉じ)を実現して効率を向上』しているから。

 

ミラーサイクルというのは圧縮比<膨張比となるエンジンサイクルのことで、この場合はカタログの圧縮比が示すのは膨張比のことで、実際の圧縮比はその数字より小さくなります。つまりカタログ上の圧縮比が高くても実際にはそれほどでもないのでノッキングが起きまくるなんてことはないわけです。

 

その肝となるのが、こちらの『電動式可変バルブタイミング機構』。

吸気側に電動式可変バルブタイミング機構を備えることで、吸気行程を終えて下死点に達したピストンが上昇して圧縮行程になったときにも吸気バルブを閉じるのを遅くすることで、圧縮の開始をズラし、有効圧縮比をカタログ上の圧縮比よりも小さくすることでノッキングの発生を抑えることを可能としたわけ。

 

これにより圧縮比<膨張比のミラーサイクルが実現され、高膨張比ならではの高効率なエンジンとなっているというわけです。そしてSKYACTIV 1.3の有効圧縮比はだいたい12.0前後(状況によって可変しているので一定の数値にはなりません)といいます。つまり、レギュラーガソリンとして実績ある範囲に収まっているので、ノッキングの心配無用ということ。

 

と、ここまではノッキング回避の視点から見てきたわけですが、理屈でいえば圧縮比と膨張比の差が大きいほどミラーサイクルとしては優位ですから、圧縮比は低ければ低いほどいいわけで、有効圧縮比を12.0より下げていくほうが有利。

 

メカニズム的、ドライバビリティ的に、このエンジンにおいてどこまで圧縮比を下げられるかは別として、膨張比が14.0ならば圧縮比は10.0くらいまで下げたいところ。

 

そういう意味では、間もなく登場するSKYACTIV 1.3ですが、まだまだ伸び代を持った環境エンジンではないかと予想できるわけで、その可能性に夢が膨らみます。

 

(山本晋也)

 

この記事の著者

山本晋也

山本晋也 近影
日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。