アウディのなかでも実はすごくスゴくアウディらしさが詰まっているのがアウディA1といえるんです。


アウディA1(欧州仕様)

ダウンサイジングとはよく言われる製品の傾向ですが、クルマの世界では特にヨーロッパで積極的です。エンジンが小排気量のターボに移行していったり、車体のサイズがわずかずつですが小さくなる傾向にあります。

そこでひとつのポイントとなったのが、BMWのミニの登場だったでしょう。ミニは単にコンパクトカーを作ったということではなく、コンパクトなFFのなかでのプレミアムカーを作ったということに意義がありました。またその世界的に見て好調な売れ行きによって、新たな市場が生まれたことも証明しました。サイズの小さなクルマでも、誇らしく乗ることができる。その価値を高級な仕立てとともに、オリジナルのミニが持っていたクラシカルなスポーツ性によって成立させたのです。

通常、ダウンサイジングというと機能や性質をそのままにサイズを小さくするものですが、クルマの場合にはたとえばクラウンをすぐにコロナのサイズにしたところで成立はしません。むしろ小さなサイズでもプレミアムを主張できるという一般的認識を作っておいて、徐々にサイズを移動していくということのほうがよいのでしょう。果たしてBMWによるミニブランドの2001年の復活が、その時点ですでに全社的なダウンサイジングさえも意図していたかどうかはわかりませんが、結果としては大きく貢献することになりました。

そしてこの市場に多くのクルマたちが参入することになりますが、そのなかでも注目されるのがアウディA1です。アウディはかつてアルミボディのA2(1999~2005,日本未発表)というきわめてコンセプチュアルなモデルを持っていましたが、大きな室内や、充実したユーティリティなど、小さなクルマでも大きなクルマにひけをとらないモデルとしてコンパクトカーのあるべき狙いの王道を行ったクルマでもありました。


アウディA2(1999~2005、日本未発表)

アウディA1は、そのA2にくらべるとまったくの別物。普通の2ボックスです。このあたりに、アウディがA1に与えた使命がA2とはまったく違っていることを見ることができます。

いかんせん心配なのは、その存在感です。ミニはかつてのオリジナル・ミニの財産をうまく生かして、ブランドを継承するという強みがありました。しかしA1にはそれがありません。実際にはA3などのトライは同一線上にあると思うのですが、まだまだインパクトが少ないようです。

ミニはキャラクターで売るクルマという側面も持っていますが、A1の価値は小さいことと真っ向から向き合ったことにあります。キャラクターに頼らない「小さくても上質」な点に特化して追い求めようとしています。ある意味これは、かつてブランド力のそれほど強くなかったアウディ・ブランドがここまで進展してきた反骨精神にもつながっているようにも思えます。ここに注目したいですね。

(MATSUNAGA, Hironobu)