注目の新型ヴィッツですが、全長を100mm、ホイールベース50mm拡大することによって、フィット、デミオ、スイフトはほぼ同じサイズとなりました。VWポロはやや長く幅は少しだけ狭いサイズです。
ボディの拡大は、これまでライバルに対して小さいといわれた荷室の拡大などの意図をもってはいますが、それだけではありません。空力性能や高速性能のための延長という面が強いようです。
ボディスタイルを見てみると、これはかなり力の入った空力モデルです。
空気抵抗係数は先代の0.3に対して0.285を達成しています。特に空力に効くと言われるフロントバンパーのサイド。ここをスパッと切り分け、フロントタイヤ前の部分にリヤ形状に併せて整流するフラットな面を作ることが、空力改善に大きく貢献するといわれています。ただこの形状も一律にかっちりと角をつけて、その後の面をフラットにつくればよいのではありません。きれいな流れをフロントタイヤの影響を受けずにうまく後方へつなげるための手法なので、ボディサイドの後方の形状やボディの長さなどそれぞれの条件によってバンパーサイドの最適な形状は異なるのです。
またバンパー左右には、大きく開かれたサイドインテークのようなものがあるのですが、ここはインテークではなく必ず口をふさいでいます。そうすることで走行時には、空気をなめらかにサイドに流せるのです。このあたりは見かけのデザインと機能がまったく違う部分です。そしてバンパー中央の大きく見えるインテークも、実は巧妙にブラックアウト化されて有効面積はそれほど大きくないことがわかります。その上のグリルも実際にはガーニッシュが半分以上を占め、インテーク部分は必要にして十分なサイズにされているようです。
アンダーボディは、前後ともサスペンションアーム前に大き目なフラップを装着し、また下面の流速を高める工夫もみることができます。技術的にはお金さえかければいろいろな空力対策はできるのでしょうが、それらの効果をアイデア次第でリーズナブルに実現するところが、ヴィッツ開発者たちの腕の見せ所でもあるのです。
そうしたなかで、全長とホイールベースの延長でルーフを伸ばしたり、アンダーボディの形状を最適化させることは空力にとって非常にメリットのあることです。そのほかでも、クルマの安定性を高めることも狙っています。より力の入った欧州マーケット狙いということも、これらの連想ゲームから想像されますよね。(写真 1.5RS)
(MATSUNAGA, Hironobu)