80国産車の花形といえば、トヨタソアラをはじめとする「スペシャリティーカー」ですよね。今振り返ると、大人のスペシャリティ、若者のデートカー、創造的スペシャリティの3種類に分けられると思います。
大人向けには、トヨタソアラと日産レパードでしょう。ソアラの知的でシャープな2ドアシルエットやゴールドを基調にしたツートンカラー、デジタルメーターや2800ccDOHCエンジン等、とにかく商品力の塊のようなクルマでした。レパードも魅力的でしたが、相手が悪すぎましたよね。
若者向けには、シルビアとプレリュードが大人気でした。CMでも、デザインに自信満々・アートフォースのシルビアに対し、プレリュードはシックなボレロで演出していました。でも決してカッコだけではなかったんですよ。シルビアはFRで走り屋御用達、プレリュードは、地を這うような着座位置で、両車とも走りも個性的でした。
セリカは、ランボルギーニミウラのような、露出したヘッドライトが起き上がるリトラクタブルライトで登場。でも、さすがにちょっとやり過ぎでした。セリカXXを際立たせはしたけれど。途中で普通のリトラクタブルに変更して、次のFF化した流面形セリカにバトンタッチ。角から丸へ転身したデザインが、とても斬新でした。
創造的なクルマ造りには、中堅のいすゞとマツダ、そしてスバルが挑戦しました。
まずは117クーペに続いてジウジアーロが腕を振るったのが、いすゞのピアッツァです。今でも通用するくらい、本当に美しいクルマでした。当時スリッパとかマヨネーズと言って冷やかした事を、若気の至りと反省しています。
マツダのコスモでは、シルエットは割と普通でしたが中味が違いました。ロータリーエンジンと4灯リトラクタブルライト、空力性能で勝負していました。
一方アルシオーネは、未来的なクーペデザインに4WDを組み合わせ、独自の世界をアピール。まさに今でいうクロスオーバーカーでした。
それから番外ですが、ホンダのアコードエアロデッキを、思い起こさずにはいられません。ワンダーシビックと同じ手法のロングルーフデザインで、個人的にも憧れたクルマでした。4ドアのワゴンに仕立てればもっと売れたと思うのですが、ホンダはあえて2ドアにロングルーフを組み合わせることに強くこだわっていたと記憶しています。
80年代のスペシャリティーカーは、作り手も買い手も、大人も若者もドキドキワクワクの魅力溢れるジャンルだったと思います。
(拓波幸としひろ)