インテリア比較で分かった使い勝手の大きな違いとは?【ヴェゼル&CX-30比較試乗】

●SUVとしての使い勝手はVEZELが上!

2019年4〜10月の半年で、コンパクトSUVジャンルにおいて最も売れたヴェゼルと、発売一週間でヴェゼルの一か月分売れたCX-30。

同じコンパクトSUVとはいえ、そのパッケージングや室内の作り、そして荷室の使い勝手は、実際に見てみないと分からないことがあります。今回、ヴェゼルとCX-30のインテリアを中心に、徹底比較しました。

スタイルの良さとキャビンの大きさは両立が難しい。
比較的コンパクトなSUV ヴェゼルツーリング。

[index]
■インテリアの質感や機能性はCX-30が一枚上手
■前席後席シートはヴェゼル勝ち、CX-30は形状以前に滑りやすい素材が弱点
■荷室の最大奥行きや使い勝手はヴェゼルが有利

■インテリアの質感や機能性はCX-30が一枚上手

今回試乗したヴェゼルには、ツーリンググレードの特別仕様であるブラウンレザーの内装が施されており、シートのサイドや、センターコンソール、ドアトリムやダッシュボードなど、インテリアの質感をグッと引き上げています。

肘置きやドアトリムの触感は柔らかく、また革巻きステリングホイールの太さや触感も良いので、ゆったりとくつろいだ気分で運転ができます。また、メーターの中央に大きく配置されているスピードメーターは非常に見やすく、シンプルにまとめられています。

上質なシートはサポート性も良い。ナビ画面の小ささは設計の時代の古さを感じる。

ただ、ステアリングホイール上に並んだオーディオやクルーズコントロールのスイッチには、滅多に切り替えることのない表示切替のスイッチもあり、やや混雑したデザインとなってしまっています。また、ナビゲーションモニターの位置が助手席側に寄っており、加えてモニターのサイズがやや小ぶりで、タッチパットの様な操作のため、使い勝手はいい、とは言えない印象です。

対するCX-30は、ブラックの皮張りインテリアでまとめており、メッキの加飾を部分的に入れた、シックでクールな印象です。ホワイトレザーのシートも内装の雰囲気を大人っぽく見せることに成功しています。ステアリングのスイッチはコンパクトにまとまっており、やや細めのステアリングホイールの握り感も手伝って、すっきりとした印象を受けます。横長レイアウトのナビゲーションも、インパネの最上段に設置しており、ナビチェックのための視線移動は最小限で済むような設計となっています。

また、運転席からの死角が少ないのはCX-30です。サイドミラー周辺の処理がCX-30はドアミラー化されており、死角が少なくなるように設計されています。対するヴェゼルは大きなAピラーの下に付く一般的なサイドミラーのため、特に助手席側の視界が阻害されている点は注意点です。

ただ、CX-30のナビゲーションモニターはタッチパネル式ではないため、センターコンソールにあるコントローラーで操作することになります。少し操作に癖のあるジョグダイアルの操作をマスターしないと、ストレスに感じるかもしれません。

シンプルで使いやすいインテリア。ホワイトシートとブラックのダッシュボードなど、質感が非常に高い。

ナビ操作の機能性や使いやすいスイッチ、運転視界の広さなど、インテリアに関しては筆者としてはCX-30の方がヴェゼルよりも優れているような印象を受けました。

■前席後席シートはヴェゼル勝ち、CX-30は形状以前に滑りやすい素材が弱点

昨今、シート開発に並々ならぬ気合を入れているマツダ。「骨盤を立てて脊柱が自然なS字カーブを描くようにすることで、座り心地や、運転時のハンドルやペダルの操作性が改善する」としていますが、座り比べて筆者が良いと感じたのは、ヴェゼルの方でした。

CX-30のシートの意図は理解できますが、ホワイトレザーのシート表皮が非常に滑りやすく、気が付くと最初の姿勢とはズレていることがありました。もちろん服装の影響もありますので一概には言えませんが、ツルツルした素材の服と、CX-30のホワイトレザーシートの相性はよくありません。

ホワイトのレザーシート、服の素材が影響したか、やや滑りやすい表皮仕上げだった。

対するヴェゼルのシートは、腰回りを左右からサポートする形状に作りこまれており、また腰が沈み込むようなクッションのためスポっと身体を支えてくれます。シートの中央部分には背中から腿までスエード素材が張られているため滑りにくく、一度決めたドライビングポジションをキープしやすいです。そのため、運転操作や疲れにくさは、ヴェゼルの方が上に感じました。

スエード素材を中央にあしらったシート。ホールド性も高い。

後席に関しては、広さや視界の良さ、乗り込みやすさ、クッション性、サポート性など、ヴェゼル方がいずれも優れているように感じます。CX-30の後席は、膝前が狭く、またCピラー周辺からの明かりも少ないため、後席に座った際の頭の周りに、閉そく感があります。後席にはほとんど人が乗ることはないだろうと、割り切れる方には問題ありませんが、後席に座って移動をする際に快適性が高いのはヴェゼルです。

マツダ3と似ている。暗くて狭いと感じた。
CX-30と対照的に、広く明るい印象。

■荷室の最大奥行きや使い勝手はヴェゼルが有利

VDA方式では、CX-30は430リットル、ヴェゼルは393リットルと、CX-30の方が8.6%ほど広いことになります。ただし、地面から荷室までの高さは、ヴェゼルが68センチ、CX-30が74センチと6センチの違いがあり、荷室入り口の横幅も、CX-30が104センチ、ヴェゼルは116センチと、ヴェゼルのほうが広くなっています。

こうした違いは、荷物の積み下ろしの機会が多くなるSUVなだけに影響が大きく、ヴェゼルの方が使い勝手はいい、といえるでしょう。

シートを倒してフルフラットにすれは1500mm以上の長い物でも乗る。
CX-30よりも、前席シートが下の方まで見えている。それだけ床面が低い。

荷室の奥行は、CX-30が85センチ、ヴェゼルは80センチですが、後席シートバックを前へ倒した場合は、CX-30が156センチ、ヴェゼルが175センチと、ヴェゼルの方が広くなります。これは、キャビンを大きく取ったヴェゼルのパッケージングの良さと、フロントシート下に燃料タンクを配置した「センタータンクレイアウト」の効果が表れています。

特に後席シートバックを前へ倒すと、後席クッションが下面に収納されるなど、限られたスペースを生かした素晴らしい設計がなされています。

リアハッチのキャッチ部分をもう少し下げられたのではと感じた。
荷室の高さが低い分、荷物の載せ下ろしは容易に感じた。
1050mm程度の間口広さ。不自由ではないが、ヴェゼルと比べると狭い。
車幅いっぱいまで使って、間口を大きく取れている。

とはいえCX-30も、決して荷室が狭いわけではなく、SUVとして必要十分な大きさの荷物を載せることができます。このデザインを得られるならば、目をつぶる事が出来るサイズと言えそうです。

※VDA方式:ドイツ自動車工業会が定めた、200×100×50mm(容量1リットル)のテストボックスをラゲッジスペースに詰め込み、その入る個数を容量としてカウントする指標

■まとめ

ヴェゼルは2014年に登場した既に6年目のクルマですから、インテリアの新鮮味はCX-30の方が上です。ただ、SUVとして使い勝手の良さを高い次元で達成しているヴェゼルに対し、デザインを生かしたことで荷室が狭くなっているCX-30。どちらを選ぶかは、各個人のクルマの使い方によりますが、筆者はコンパクトなパッケージングで広い室内を実現できたヴェゼルをおススメします。

次回は、この2台の「走り」について、具体的に「良い点、気になる点」に分けてレポートします。

(文:吉川賢一/写真:鈴木祐子)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
続きを見る
閉じる