さまざまな技術が盛り込まれるタチエスの新しいシートの開発も職人技の世界

世界のシートの約5%を製造するというタチエスの工場見学を通して、日本の技術力の高さと従業員の勤勉さを感じることができましたが、さらに最新術で作られたシートや今後生まれてくるであろう新しいシートについても取材ができました。

製造業の世界ではつねに新しい製造方法が模索され、それが実施されているわけですが、タチエスの製造現場でもそれは行われていました。

シートは仕向地や仕様によってさまざまなタイプが存在するため、部品の締め付けなどを要する骨格部の製造においてはなかなか自動化が難しいとされているのですが、それでもタチエスでは専用締め付け工具の開発によって、組み付け工数を従来に比べて20%の低減を実現しているいいます。また、締め付け作業の自動化に対しても積極的な開発が行われています。

タチエスでは表皮一体発泡技術を用いてヘッドレストなどを製造しています。

この方式は、ヘッドレストの表皮を先に作っておいて風船のようにウレタンを注入し成型するという方式です。注入する角度、原材料、注入するため機械のヘッド部分の違いなどによって仕上がりが違うとのことで、さまざまな手法が今も検証され続けています。

試験エリアで見たのは、ウレタンフォームそのものの実験で、噴射後あっという間に膨らむウレタンフォームにはちょっと驚かされました。

研究・実験エリアでは性能試験を行うために、実験用ダミーを用いて衝突ベンチによるテストを行っているほか、耐久テストや体感テストなども行っていました。

地道な作業の連続となるこうしたテストですが、クルマの性能に大きく影響するシートは、多くの職人肌の人たちによって開発、製造されていることを感じることができました。

(文/写真・諸星陽一)

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この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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