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■排ガス規制をオーバーしている、オーバーする可能性のあるクルマを市場から排除するのが目的
●市場に投入される前にOBDが適正に機能するかを試験によって検証
OBD(On-Board Diagnostics)は、排ガス低減システムや部品に不具合が発生した際に、排ガスに異常が発生したことを警告灯(MIL)でドライバーに知らせる「車載自己診断機能」です。
排ガス規制値をオーバー、またはオーバーする可能性のあるクルマを市場から排除するためのOBD規制と試験法について、解説していきます。
●OBD規制の動向
1980年代ガソリンエンジンは、米国を中心に強化された排ガス規制に対して、三元触媒と空燃比(吸入空気重量と燃料重量の比)を理論空燃比に設定する空燃比フィードバック制御で対応していました。
ところが当初は、新車では適合しながら市場では排ガス不適合のクルマが多数発見され、原因は酸素(O2)センサなどの排ガス部品の不具合であることが判明しました。使用過程車の排ガスの悪化は、排ガス規制本来の目的を消失させてしまいます。
これを受けてCARB(カリフォルニア州大気資源局)が、使用過程車の排ガスを低減維持させる目的で、1988年にOBD-Ⅰ規制を導入しました。
その後、1994年にはモニター項目の追加や故障に関する情報の読み取り機能の規格化が追加され、現在のOBD-Ⅱに至っています。
OBD規制は、米国に先導され、日本や欧州など世界中で導入されています。
●OBD-Ⅰとは
不具合の機能診断も行いますが、基本は回路診断が主です。
診断対象項目は以下の通りですが、故障検知の基準が排ガスレベルの悪化と直接リンクしないため、排ガス悪化の抑制効果が明らかでない点が課題でした。
・O2センサ(不活性状態、回路診断)
・EGRシステム(EGR流量の低下)
・燃料システム(空燃比のずれ)
・排ガス関連の電子部品の回路診断(水温センサ、吸気温センサ、スロットルセンサ、エアフローセンサなど)
OBD-Ⅰでは、故障診断ツールの規格までは統一されていなかったため、車種ごとに診断ツールが必要でした。これらの課題を解決したのが、OBD-Ⅱです。
●OBD-Ⅱとは
排ガスの悪化レベルの検知が基本ですが、できない場合は機能診断を行い、機能診断ができない項目については回路診断を行います。また故障コードを読み取り、表示する診断ツールの規格化が始まりました。
OBDシステムでは、何らかの原因で排ガス悪化につながる不具合が発生すると、ドライバーに警告灯(MIL)で知らせます。ドライバーが修理工場に搬入すると、修理作業員はクルマのECUの専用コネクターに故障診断ツールを接続し、故障コードを読み取ります。
故障コードによって故障個所が特定され、部品交換や修理が行われてクルマは正常な状態に復帰します。
●日本のOBDと検証試験方法
日本のOBD(OBD-Ⅱ相当)の検知対象項目は、米国や欧州とは若干異なります。
・触媒劣化(閾値診断)
・エンジン失火(閾値診断、触媒損傷の可能性がある場合は機能診断)
・酸素センサ、または空燃比センサの不良(閾値、センサとヒータの回路診断)
・EGRの不良(機能診断の結果に基づく閾値診断)
・燃料供給システムの不良、空燃比がずれた状態(機能診断結果に基づく閾値診断)
・排気2次空気システムの不良(機能診断結果に基づく閾値診断)
・可変バルブタイミング機構の不良(機能診断結果に基づく閾値診断)
・エバポシステムの不良(機能診断、電子制御される部品があるときは回路診断)
・その他の電子制御関連の排気関連部品の不良(大気圧センサ、吸気温センサ、水温センサなど)
OBD機能の検証試験は、認証時に行います。
試験方法は、故障部品をクルマに装備する、または故障疑似状態を意図的に作り出し、燃費・排ガスWLTCモードを運転します。対象項目の不具合による排ガス悪化レベルとMIL点灯有無の関係を確認して、OBDが適正に機能しているかを検証します。
排ガス低減システムは、エンジンや触媒を含めさまざまなシステムや部品で構成され、それらを高精度に制御しています。
それらの不具合や機能不全などを検出して、有害ガスの大気への放出を防止するのがOBDの役目なのです。
(Mr.ソラン)