●ルーキーでまず1勝を目標に
国内屈指の人気を誇り、年間40万人もの観客動員数を誇るスーパーGT。その人気ぶりから、F1と並んでキャリアの最終目標だと話す若手レーシングドライバーも少なくありません。
そのスーパーGT、GT300クラスに今シーズン、FIA-F4からステップアップを果たした1人のドライバーがいます。今回はその走りの実力でシートを掴み取った、川合孝汰選手にお話を伺いました。
── 昨シーズンはFIA-F4でシリーズ3位を獲得し、今年はGT300クラスにステップアップということですが、まず川合選手の経歴を教えていただけますか?
「はい、よろしくお願いします。『かわあいこうた』です。僕は13才でレーシングカートを始めまして、6年ほどカートレースをやっていました。20才の時に4輪にステップアップしまして、まずはスーパーFJを1年、それから4シーズンFIA-F4で戦ってきました。ですのでハコ車でのレースは全く経験がなく、このGT300が初めてになります。」
── 初めてのハコ車のレースがいきなりGT300とはまたすごいですね。今回の起用も抜擢だと思いますが、どういった経緯での起用だったのでしょうか?
「そうですね、あまりない例じゃないかと思います。
今回の起用については、今までお世話になってきた周りの方々からの推薦がまずありまして、チームの方からお話をいただいてオーディションを受けたという感じですね。常日頃から(所属していた)チームの監督や先輩方には、ステップアップしていきたいということを機会があるごとにアピールしていましたので、それが今回のお話につながったんだと思います。」
── なるほど。ご自身の走りや行動で見事シートをゲットしたというわけですね。実際にGT300マシンに乗ってみた感想はいかがでしたか?
「実際にこのスープラに乗ったのは2月のタイヤテストの時に数周走らせてもらって、今回の合同テストが2回目になります。その時とは気温をはじめいろんな条件が違うので比較になるかどうかはわかりませんが、前回のほうが初めてだったわりにはタイムだけで言えば良かったです。
今回は最後に初めてロングでも走らせてもらったんですけど、タイヤの減り方だけで見ると吉田選手と比べて僕がリヤ(タイヤ)、吉田選手がフロント(タイヤ)の減りが早いように感じました。」
「僕はあんまりハンドルを切らずにゼロカウンターくらいな感じをイメージして走るのが好きというか、そういう走り方で今までやってきて、特にスープラの場合はホイールベースが比較的短いので、どちらかというと(自分が今まで乗ってきた)フォーミュラカーに近い走らせ方ができるので、無意識にそういう走りになってしまったかもしれないというのもあるのですが、走りの引き出しという意味でもハンドルを切って曲がるっていう走り方も今後覚えていかないといけないなと感じました。」
「特にスーパーGTの場合はスプリントレースではないので、予選一発のタイムだけを狙うわけにはいかないですし、決勝ではタイヤマネジメントだったり終盤タイヤが減ってきた時に今の走りでは厳しくなると思うので、そのへんを開幕するまでにしっかり自分の引き出しとして入れておきたいなというのは正直あります。
そういう意味では正直言うと今回、もうちょっとドライで走りたかったですね。天気はどうしようもできないのですが今回はウェット路面での走行時間が多くて、それから僕自身ルーキーテストもあってそっちがメインっていうのもありましたので、ちょっと時間が足りなかったかなという印象です。」
── ルーキーテストは緊張しましたか?
「実は走る前には知らされていなくて、走行中も全然無線も来ないし(ピットインの指示も)呼ばれないなーと思っていたら、走り終わったあとに『ルーキーテストお疲れさまでした』って言われて、『あ!今やってたんですか』みたいな感じだったんですけど、それであまり緊張もせず普通に走れていたので、それはそれで良かったのかなと思います。」
「ルーキーテスト自体は無事通ったので問題なく良かったかなと思いますけど、やはり今日走っていて思ったのは、走行経験もスキルも少ないので、タイヤが減ってきたとかガソリンがいっぱい入ってるとか、状況の変化に対してどれだけ引き出しを持っていてその状況の中でどれだけ速く走れるのか、と同時にタイヤも労って安定して走れるかどうかが大切だなと思いました。
今回のテストでも、前半ではタイムが出てたんですけどやっぱり後半になるにつれて落ち幅が結構あったので、前半でタイヤを使いすぎてしまったのかなと。例えば30周走って平均して走っていれば波はないので、結局そのほうがトータルで見たら速いですよね。そのへんも今後勉強していかなくてはいけないと思うんですけど、それにしても(走行)時間が限られているので、短い時間で少しでも、できる時間内で最大限勉強していく必要があると思っています。
そういう事をいろいろ考えていて、自分がやっていることが合っているのかどうかもわからないんですけど、失敗は失敗でそれも知識や経験にはなると思うので、とにかく今は色々積極的にやってみようとは思っています。ただやっぱり、マシンも世界に1台しかないクルマですし出来上がったばかりで、なかなか走行時間も限られた中でしかできないので、万一マシンを壊してしまったりすると無駄に練習時間を失ってしまうので、もちろん攻めなきゃいけない部分はあるんですけど、マシンを壊さずに着実に進歩していければと思っています。」
── スーパーGTをご覧の方々に、ご自身のどんなところを見てもらいたいですか?
「ルーキーということで言えば失うものはないと言ったら語弊があるかもしれませんが、(チームとしては)非常にありがたい環境ですし、ここに立つにあたっては運が良かったというのもあるのですが、それ以上に本当にたくさんの方々に応援、ご協力していただきましたので、まずはその感謝を忘れずに、自分の走りと結果で恩返しできればと思っています。
そういう意味も込めて、今シーズンはルーキーとして1勝はしたいなと思っています。もちろんチームとしても狙うはシリーズチャンピオンだと思いますが、まずは本当に1勝を目標にして、その1勝ができた頃にはおそらく自分自身の引き出しだったりスキルも今より進歩していると思うのでまずは1勝、そこから更に記録を伸ばせていければ結果はあとからついてくると思っています。」
「それから僕自身、経済的には恵まれない環境の中で必死にレースを続けてきてF4からGTまで上がってこれたので、そういったドライバーでも頑張ってやっていれば今回のようなチャンスはあるんだっていう事、そしてそこから更に上に行くための架け橋のような役割も僕にはあると思っています。あまり深くは考えないようにはしていますけど、これからまたF4からGTに上がってくるドライバーもいるという意味では、もちろんこのポジションも安泰ではないなっていう危機感もありますし。」
── 1勝、期待しています。それでは最後にファンの方々やclicccarをご覧の皆さんにメッセージをお願いします
「とにかくまずは今シーズン1勝を目標に頑張ります。皆様が観ていて元気になるようなレースをして、印象に残るレーサーを目指しています。マシンは新しいスープラでカラーリングも目立ちますし、あとはルーキーらしい元気な走りをサーキットに観に来ていただければと思います。
また、僕はおしゃべりが大好きで、たくさんコミュニケーションがとれたらと思っていますので、サーキットで見かけたら是非!気軽に話しかけてください。」
過去には現在GT500クラスで活躍している坪井翔選手や牧野任祐選手なども輩出し、毎年激戦となるFIA-F4でシリーズ3位を獲得したドライビングと、コミュニケーション好きな性格で、ルーキードライバーの中でも人気沸騰間違いなしの川合選手。新開発のマシンと合わせて今シーズンのスーパーGT注目のチームとなりそうです。目標の1勝が観れる日も楽しみにしています!
(H@ty)