■上質なハイブリッド、軽快感が際立つ1.3Lガソリンエンジン
良好な乗り心地が得られるのは、リヤシートよりもフロントシートというのがよくあることで、新型ホンダ・フィットも例に漏れません。
前席はシート自体の減衰、足の動きもスムーズに感じられる一方で、後席に移動すると、遮音性などを含めて前席ほどの上質さは得られない印象を受けました。それでも、新型フィットはボディの剛性感も高く、国産コンパクトだけでなく、Bセグメントの輸入車と比べても洗練された乗り味を実現しています。
さらに、そのスムーズさを印象づけるのがハイブリッドの「e:HEV」です。
2モーター内蔵電気式CVTを備えるハイブリッドは、街中でゆっくり走っている分にはほぼEVとして走らせることが可能。通勤などで混む朝夕の渋滞時や信号が連続する市街地などでは、非常に静かな走行フィールが得られるはず。
一方で、郊外路で少し強めにアクセルと踏むと、エンジンが始動しますが、その音・振動はよく遮断されています。ほとんど気にならないレベルといえそうです。
シーンを高速道路に移すと、合流時などの急加速時にはエンジン音とCVT由来の音が高まりますが、こうしたシーンをのぞけば、CVTの癖は比較的感じさせない仕上がりとなっています。また、動力性能は1.2t程度(FFモデル)の車両重量に対して、まさに必要十分といえます。
高速道路の巡航時には効率のいいエンジンがメインになるものの、他のロードノイズや風切り音などの騒音があることもあり、法定速度+アルファ程度であればエンジン音が気になるほどではなく、こうした巡航速度であれば疲れを誘わないはず。
スムーズなパワーフィールが得られるハイブリッドは、重さもあるため、乗り心地にいい意味で重厚感もあり、上質なコンパクトに仕上がっています。
一方の1.3Lガソリンエンジン車は、90〜100kg程度ハイブリッドよりも軽いこともあり、コーナーでのフットワークの軽さなど、軽いことによる美点を感じさせます。モーターがない分、エンジンで回すパワーフィールもガソリン車に慣れた人には受け入れやすく、また街中であればパワー不足を抱かせません。
静粛性や乗り味など、完成度の高さではハイブリッドが際立っているものの、ガソリン車の魅力も十分。
指名買いでなければ迷いそうですが、上質性を求めるのならハイブリッド、イニシャルコストと軽快感を重視するなら1.3Lでも高い満足感が得られるはずです。
(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)