■ピュアエンジンでも感じ取れるフィットの先進性
好調な売れ行きを示しているホンダのコンパクトカー「フィット」。モデルチェンジを繰り返すたびにパワーユニットの変更を受けてきたフィットですが、初代から一貫して続いているのは直列4気筒エンジンのピュアエンジンモデルです。
現行フィットに搭載されるL13B型と呼ばれる自然吸気エンジンは、電動化した可変バルブタイミング・リフト機構によってアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)とオットーサイクル(通常燃焼方式)を切り替えることで出力、燃費、排ガス浄化性を高めたエンジンです。
試乗車は自然吸気エンジンを搭載するNESS(ネス)というグレードです。
ハイブリッドモデルと乗り比べるとどうしてもトルク感で物足りなさを感じますが、絶対値としての性能はけっして低いものではなく、コンパクトモデルに求められる性能は見事にクリアしているといえます。
組み合わされるミッションはCVTですが、従来型のようにエンジン回転数が一定で速度だけ上がっていくというタイプではなく、ギヤ式ATのようにステップ変速する味付けがおこなわれています。ステップ変速については、私はCVTのよさを消し去るアプローチだと思っていますが、この味付けが好きなユーザーが多いというのなら、別に批判対象とするほどではないと思っています。
ビシッと中立感が与えられたステアリングは一般道でも高速道路でも気持ちのいい走りができます。その状態からコーナーに向かってステアリングを切ると、初期応答がしっかりとしていてスッとコーナリング姿勢を作り出してくれます。高速道路の車線変更にも無理な動きはありません。
同時に試乗したハイブリッドモデルはバリアブルレシオのステアリングを採用していましたが、小舵角時での差はほとんどないといえます。
コーナリングそのものはホンダ車らしいしっかりとしたフィーリングです。ねらったラインにきちんとクルマが向きながら、グッと粘ってグリップしています。コーナリング中にステアリングを動かし、ラインを変更する際の不安感もありません。スポーティなコンパクトカーらしい走りを持っている部分は歓迎できます。
ハイブリッドのように先進性のある技術を搭載したモデルではありませんが、基本技術の向上がなされているエンジンを搭載するモデルで、コストパフォーマンスを考えればこちらのほうが上、というのが私の結論です。
(文・写真/諸星陽一)