ハイブリッドにかなわないものの、フィットのすごさは伝わるピュアエンジンモデル【ホンダ・フィットNESS試乗】

■ピュアエンジンでも感じ取れるフィットの先進性

好調な売れ行きを示しているホンダのコンパクトカー「フィット」。モデルチェンジを繰り返すたびにパワーユニットの変更を受けてきたフィットですが、初代から一貫して続いているのは直列4気筒エンジンのピュアエンジンモデルです。

フィットネス 前7/3
フィットネスのフロントスタイル

現行フィットに搭載されるL13B型と呼ばれる自然吸気エンジンは、電動化した可変バルブタイミング・リフト機構によってアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)とオットーサイクル(通常燃焼方式)を切り替えることで出力、燃費、排ガス浄化性を高めたエンジンです。

試乗車は自然吸気エンジンを搭載するNESS(ネス)というグレードです。

フィットネス エンジン
フィットネスの自然吸気4気筒エンジン

ハイブリッドモデルと乗り比べるとどうしてもトルク感で物足りなさを感じますが、絶対値としての性能はけっして低いものではなく、コンパクトモデルに求められる性能は見事にクリアしているといえます。

組み合わされるミッションはCVTですが、従来型のようにエンジン回転数が一定で速度だけ上がっていくというタイプではなく、ギヤ式ATのようにステップ変速する味付けがおこなわれています。ステップ変速については、私はCVTのよさを消し去るアプローチだと思っていますが、この味付けが好きなユーザーが多いというのなら、別に批判対象とするほどではないと思っています。

フィットネス リヤ7/3スタイル
フィットネスのリヤスタイル
フィットネス サイドスタイル
ライムグリーンのアクセント色はネスのみの設定

ビシッと中立感が与えられたステアリングは一般道でも高速道路でも気持ちのいい走りができます。その状態からコーナーに向かってステアリングを切ると、初期応答がしっかりとしていてスッとコーナリング姿勢を作り出してくれます。高速道路の車線変更にも無理な動きはありません。

同時に試乗したハイブリッドモデルはバリアブルレシオのステアリングを採用していましたが、小舵角時での差はほとんどないといえます。

フィットネス インパネ
スッキリしたデザインのフィットネスのインパネ
フィットネス シート
新設計のシートを採用するフィット

コーナリングそのものはホンダ車らしいしっかりとしたフィーリングです。ねらったラインにきちんとクルマが向きながら、グッと粘ってグリップしています。コーナリング中にステアリングを動かし、ラインを変更する際の不安感もありません。スポーティなコンパクトカーらしい走りを持っている部分は歓迎できます。

フィットネス 真後ろスタイリング
グッと張り出したリヤフェンダーが力強いリヤスタイル

ハイブリッドのように先進性のある技術を搭載したモデルではありませんが、基本技術の向上がなされているエンジンを搭載するモデルで、コストパフォーマンスを考えればこちらのほうが上、というのが私の結論です。

フィットネス 真正面スタイリング
ホンダらしい顔つきのフィット

(文・写真/諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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