スポーツタイプを低ミュー路で走らせ、その楽しさを知る【日産インテリジェントスノードライブ2020】

■FRの楽しさを教えてくれるスカイライン&Zと、圧倒的パフォーマンスのGT-R

北海道江別市で開催された2020年の日産のスノードライブには、スカイラインやフェアレディZ、そしてGT-Rといったスポーツタイプのモデルも用意されていました。雪の降る地域だからスポーツタイプはあきらめているという人もいるでしょうが、それはちょっと違うと思います。

400R走り
雪道で安定しているスカイライン400R

雪の降る地域だからこそ、スポーツカーを楽しめる環境です。

スカイラインGT タイプP
素性のいいクルマはVDCオフでも運転しやすい

一昔、いやふた昔前のスポーツモデルは、まだトラクションコントロールや横滑り防止装置の性能がイマイチで、スタッドレスタイヤの性能もかなり低かったので、スポーツモデルに乗ることにはそれなりの覚悟が必要だったでしょう。

しかし現在のスポーツモデルはそうした心配は不要、高性能のスタッドレスタイヤと高性能の制御デバイスは雪道ドライブを信じられないほどにイージーにしています。

400R テールスライド
VDCをカットした400Rの走り

たとえば、今回試乗したスカイラインは、GTタイプPが304馬力/400Nmのスペック、400Rが405馬力/475Nmのスペックで駆動方式はFRですが、制御デバイス(VDC)をオンにしている限りは、クルマはつねに安定を失いません。

定常円走行でフルスロットル状態にしても、エンジン出力はしっかりと抑えられてしまい、リヤタイヤを滑らすにはVDCが働くかどうか微妙な状態でアクセルをコントロールする必要があります……が、VDCはカットすることが可能です。完全にカットはできないのですが、VDCスイッチをオフにすることでリヤタイヤの制御はゆるくなり、アクセル操作に対する反応が敏感になります。こうすることでよりアクティブな走りが可能になるわけです。

フェアレディZ 走り
FRらしい走りをするフェアレディZ

ドリフト走行までのレベルでなくて、タイヤは横滑りを起こしながらコーナリングを行います。この横滑りは路面が滑りやすければより発生します。ドライ路面では高速でなければ起きなかった横滑りが、極低速でも起きるわけですから、限界走行をかなり低い速度で経験することができます。

限界を逸して失敗したとき、高速ではダメージが大きくなりますが、低速ではダメージも小さくリカバリーもしやすいので、クルマの限界を安全な範囲で体験することもできます。もちろん、公道では限界の下で走ることが大切なのは言うまでもありません。

フェアレディZイメージ
VDCカットのFRモデルのスタートは難しい

雪道のように路面ミューが低い状況では、シフトチェンジとくにシフトダウンの際にエンジン回転が合わないと駆動輪で大きなトルク変動が起きて、クルマの姿勢が不安定になってしまいます。

フェアレディZのMTモデルには「シンクロレブコントロール」と言われる制御が組み込まれています。これはシフトダウンをしようとクラッチを切ると、ヒールアンドトゥを使ったのと同じように回転数を合わせる制御です。この制御があるために、普通に操作するだけでスムーズに姿勢を崩さずにシフトダウンをこなせます。

GT-R走り
4WDのGT-Rは走りが力強い

さて、日産が世界に誇るハイパフォーマンスカー、GT-Rは雪道でどのような走りになるのでしょう。

GT-Rは570馬力/637Nmという圧倒的なハイパワーを誇ります。駆動方式はトランスアクスル式のアテーサE-TSと呼ばれるトルクスプリット式の4WDです。4輪の滑りを正確にコントロールするトルク配分を行うのでVDC-Rなどのセッティングをノーマル状態にしてあれば非常に扱いやすく、とくにテクニックもなく普通に走れてしまいます。

説明書には「雪道では使用しないで下さい」と書いてありますが、クローズドコースということでVDC-Rを「Rモード」にして走ります。ノーマルモードでは抑えられていた出力が開放されると、GT-Rらしいアクティブな走りに豹変します。溶けかけた雪をかき分け、これぞGT-Rという圧倒的に力強い走りには全身にしびれを感じるほど刺激的です。

GT-R走行モードスイッチ
シフトレバー前の3つのスイッチが走行モードの切り替え用。VDC-Rは一番左

(文・諸星陽一/写真・小林和久、日産自動車)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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