■第52回BAJA1000で幕を閉じた2019年SCOREシリーズは、TOYO TIRES勢の圧勝に終わった
●道無き道を約1000マイル一晩掛け走り続ける世界一タフなレース
BAJA1000は、SCORE(サザン・カリフォルニア・オフ・ロード・エンスージアスト)インターナショナルが主催するオフロードレースシリーズの最終戦で、メキシコのバハカリフォルニア半島を舞台に繰り広げられる人気の一戦だ。
1967年の初開催から、世界経済が大打撃を受けたオイルショック直後の1974年を除き、ずっと毎年11月に開催され続けてきたレースは今年で52回目。
コースは毎年変わるのだが、毎年米カリフォルニア州サンディエゴ市から国境を超え、メキシコ領内を南下すること100kmほどでたどり着くクルーズ船の寄港地としても知られる太平洋沿岸の観光都市エンセナダをスタート。荒涼とした砂漠が続くバハカリフォルニア半島をジグザグに南下して半島南端のゴールを目指すワンウェイの「ポイント・トゥー・ポイント」と、スタート地エンセナダを出てぐるりと回って再びエンセナダにゴールする周回コース「ループ」の2種類がある。またループコースでも、一周の「シングルループ」と同じコースを2周回る「ダブルループ」があるなど、その年によりルートそのものが異なる。おのずから距離も800マイル程度から1000マイルを超えるものまで、その年のコース設定によりまちまちだ。
しかし常に変わらないのは、僅かに一部国道の舗装路を走ることはあるものの、全行程の殆どが未舗装のオフロードで、きつい高低差もあり、一般車両では走れない砂地やダート、岩場の連続であること。走破するドライバーはもちろん、マシンやタイヤにとっても超過酷なコースレイアウトであることだ。これがまた印象的なバハの景観とあいまって、オフロードフリークのチャレンジ精神を掻き立て、レースの根強くも熱い人気を支えている要因にもなっている。
今年、2019年のコースは、荒涼としたオフロードを駆け抜け、再びスタート地点のエンセナダでゴールする「シングルループレース」。全コース距離は799.1マイル(1286km)だ。
ボディタイプや排気量から改造範囲、ドライバーの年齢などなど、2輪、4輪それぞれに細かなクラス分けはあるが、基本ルールはシンプルでスタートからゴールまでのタイムを争うノンストップレース。一度スタートすると給油やタイヤ交換などを行うピットストップ以外は、不眠不休で走り続けなければならないという過酷さだ。ドライバーは途中で交代することもできるし、ゴールまで一人でステアリングを握り続けることを選ぶことも可能だ。ナビゲーター的な役割を担うコ・ドライバーをつけることもできる。
しかしスタートから34時間以内にゴールしなければ失格で、またマシントラブルやクラッシュなどのアクシデントにみまわれゴールまでたどり着けないマシンも多い。実に完走率は前エントリーの50%を切るという超サバイバルレース。国道から離れたオフロードの奥地でのマシントラブルやタイヤのパンクが発生すれば、チームのサービスカーの到着を待つか自力で修理せねばならず、大きなタイムロスに繋がってしまうため、オフロードタイヤに高い信頼性が求められるレースでもある。
細分化されたクラスのなかでも4輪のトップカテゴリーが「トロフィートラック」で、大排気量エンジンをドライバー背後に搭載した堅牢なパイプフレーム構造と1メートルを超えるロングストロークのサスペンションを組み合わせた車体でレースの花形だ。
今年のレースにも、長年SCOREシリーズとBAJA1000に参戦してきたTOYO TIRESを装着する「SCOREトロフィートラック・クラス」に5台がエントリー。
今年度のSCOREシリーズで2勝を挙げ、ポイントリーダーのアンディ・マクミレンとブライス・メンジースがステアリングを握るフォード・ラプター31号車。
地元エンセナダ出身のアラン・アンプディアと弟アーロン・アンプディアが乗るフォード・ラプター10号車。2006年のBAJA1000ウィナーでもありNASCARやINDYからオフロードまであらゆるジャンルのレースでの豪快な走りで人気のロビー・ゴードンが乗るフォード・ラプター77号車。そしてグスタホ・ヴィルドソラのフォード・ラプター21号車。2012年のBAJA1000覇者BJボールドゥインが乗るトヨタ・タンドラ97号車だ。
「トロフィー・トラック・スペック」クラスには、ルイス・ハビア・ペラヨが乗るフォード・ラプター260号車などもエントリーした。
今年は11月20日と21日に車検日がスケジュールされていたのだが、レース前日の21日にこの時期には珍しい大雨となり、予定されていた22日のスタートが24時間順延。波乱を予感させる幕開けとなった。
23日未明、午前3時に2輪クラスのスタートを皮切りに、安全のため2輪出走後6時間のインターバルを開けるというルール規定に基づき、午前10時30分、前戦のレース結果を元に決められた順番で4輪クラスがスタートした。
ブライスがスタートドライバーを務める31号車は2番目にスタート。序盤でトップ争いを繰り広げ、一時はトップに躍り出たが岩に足を取られ横転。順位を落としてしまった。さらにアンディにドライバーチェンジをした直後には変速機トラブルでトランスミッション交換を余儀なくされ大きくタイムロス。
日没後もレースは続き、日付が変わった24日午前2時47分、4輪トップでゴールにたどり着いたいのはアラン・アンプディアの10号車だった。タイムは16時間10分35秒で、10号車は今年のBAJA1000総合優勝をも勝ち取った。
優勝したアラン・アンプディアは、「最後はボディパネルが殆ど残っていない状態になったけど、大きなトラブルもなく、クリーンなレースができた。ダートの砂も湿った状態に固められ、路面状況はパーフェクトだった。ありがとうTOYO TIRES! 長い180マイル(約290km)ものセクションを終えて交換したタイヤがまるで新品のような状態だったのにはほんとうに驚いたよ。終盤のトップ争いを制し、地元エンセナダで最初にゴールできたことは本当に嬉しい。BAJA1000で地元ドライバーが総合優勝したのは初めてのことで、家族と一緒にその偉業を達成できたことを誇りに思う。」と喜びを爆発させた。
アンディ・マクミレンは42位(クラス13位)で完走を果たし、ポイントを獲得。今年度のSCOREシリーズチャンピオンの栄誉に輝いた。
「毎回思うことだが、BAJAは本当にタフなレースで、今回も我々に試練を与えてくれた。ブライスのセクションでは岩でクルマを横転させてしまい順位を落としたし、自分のセクションでもミッショントラブルで交換修理に4時間もロスしてしまった。今年は雨が降ったお陰で砂埃が少なく熱い、攻めの走りができた。優勝は叶わなかったが、シリーズチャンピオンを獲得する為に、完走することを目標に気持ちを切り替えて最後まで諦めず走りきった。TOYO TIRESは僕のセクションでパンク一つなく、トラクションも最高。雨でもグリップが落ちない。トップ争いをしていたらそのパフォーマンスをさらにいかんなく発揮できたと思うので、それは少し残念だ。」
67位(クラス16位)で完走を果たしたロビー・ゴードンは、
「厳しいレースだった。一ヶ月前のテスト走行中にクラッシュしてしまい、急遽別のマシンを用意してレースに間に合わせた。スタートから快調にレースを進めていたのだが、中間地点を過ぎたあたりでTPS(スロットルポジションセンサー)のトラブルでマシンが止まってしまい、トータル6時間のタイムロスを強いられてしまった。それ以外の大きなトラブルがなかっただけにとても残念だ。タイヤはスタートから一度もパンクすることなくゴールすることができた。信頼性の高いパフォーマンスに満足している。あらためて、TOYO TIRESで新たな優勝をしたアランにおめでとうと言いたい。」
とコメントした。
今年の過酷な戦いとなりエントリー264台中ゴールできたのは124台のみ。ゴールしたTOYO TIRES勢は、皆そのスペアタイヤが使われることなく新品のままであった。
(文:Kenny Nakajima/写真:Kenny Nakajima・高橋 学・小林和久)
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TOYO TIRE BAJA1000プレスリリース
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