●モータースポーツへの情熱とクルマへの理解を感じたSUPER GT・DTM交流戦
今回は日独モータースポーツにおける新たな第一歩、「クラス1」規定に準拠した日欧6メーカーによる史上初めての公式戦をこの目で見るため、ドイツ南西部にあるF1サーキット、ホッケンハイムリンクまで取材に行ってきました。
今回の訪問ではメインのレース以外にもドイツの車文化やサーキット事情など、いろいろと感じる事があったので、ここでまとめてご紹介したいと思います。
歴史的なイベントの舞台となったホッケンハイムへのアクセスは、ドイツの空の玄関口フランクフルト国際空港でレンタカーを借りるところから始まります。レンタカー会社のカウンターが集まっているエリアに来ると、こんなディスプレイが利用者を迎えてくれます。
レンタカーの手続きを済ますと、そこから徒歩でレンタカーの置いてある駐車場まで向かいます。筆者は成田や羽田でレンタカーを借りたことがないので日本のレンタカーのシステムと比べることはできませんが、ここフランクフルトやデイトナ24時間の取材で利用したフロリダのオーランド国際空港では、一般駐車場と同じタワーパーキングの一角にレンタカー置き場があり、車の置いてあるエリアとカーナンバーを頼りに自分で利用する車を探すことになります。(オーランドでは置いてある車の中から自分で勝手に選ぶパターンでした)
今回利用したHertzでは一般的な車の他に、ポルシェやBMW、メルセデスなどの高級車もレンタルされており、同じようにレンタカースペースに駐車してありました。これ、手続きする前に見たら借りたくなっちゃうよなと思うのは筆者だけでしょうか?笑
レンタカーの予約は、今は出発前にインターネットでするのが一般的ですよね。筆者も例に漏れずインターネットで料金の一番手頃なコンパクトカーを予約して行ったのですが、当日カウンターで「料金は変わらないから大きなサイズの車にグレードアップ(この言葉に要注意)しましょうか?」というオファーがありました。まぁ同じ値段ならアップグレードしてもらおうかな、と軽い気持ちでOKしましたが、よく考えると自分独りの移動なら燃費を考えて(燃料満タン返しは万国共通のようです)コンパクトカーほうが良いのと、実際に数日間利用してみると駐車スペースもこちらヨーロッパは路上駐車が比較的当たり前だったので、結果的にはアップグレードしないほうが良かったのかなと少々後悔しました。
それも次回以降への反省点ということで気を取り直し、今回利用したのはアメリカのレンタカー会社らしくFORDのSUV、KUGAです。車種について真新しさは特別ないのですが、驚くべきは乗ってみて気づいたこちら!
SUVに6速のマニュアル車です笑。筆者は以前6速マニュアルのトレノに乗っていた経験があるので事なきを得ましたが、6速マニュアル車の経験がない方だったら、バックギヤに入れるまでに相当の時間を要するんじゃないかとちょっと心配になりました。ちなみに予約の時点でオートマを選択しておけば、ちゃんとオートマ車を借りることはできると思います。
無事レンタカーに乗り込み、その足で今回のレースの舞台ホッケンハイムリンクに向かいます。車載のナビゲーションは当たり前のようにドイツ語です。ある程度の操作方法は経験則でわかりそうなものですが、やはり言葉の壁は想像以上に高く、残念ながらカーナビを利用することは返却するまでありませんでした。ここはやはり安心と安定のgoogleマップですね。ネット環境はすでに海外旅行でもマストですから、Wi-Fiルーターをレンタルするか、あらかじめSIMフリー携帯とヨーロッパのSIMを用意しておくのがよいでしょう。
ちなみにEU圏内では2017年以降ローミングフリーとなっているので、EU加盟国内で利用できるSIMカードでしたらドイツ国内でも基本的には問題なく通話やSNS、インターネットが利用できます。ただしドイツの通信事業者のSIMは開通作業が非常に煩雑なので、手軽に開通できて日本国内でも入手が容易なフランスなどの通信事業者のSIMが筆者のおすすめです。
朝7時、まだ夜が明けきらない薄暗い中、初めてのアウトバーンを6速マニュアルのSUVで南下します。筆者は国内で慣れている時速100kmペースで右車線(ドイツは右側通行)を走行していると、何台もの車に左側から結構なスピードで追い越されていきます。到着初日は東西ドイツ統一の日というドイツ国内の祝日だったことで交通量は少なめでしたので、スピードは出しやすい道路状況でした。
出発から程なく夜も明け、45分ほど走るとホッケンハイムの標識が出てきます。アウトバーンの出口からサーキットの入り口までは5分ほど。日本国内のどのサーキットよりもアクセスの良さを感じました。
今回はメインレースのDTMの他にもフォーミュラ・ルノーやR8 LMS、クラシックカーによるサポートレースなど多くの関係者が来場するため、我々報道陣は場外駐車場に案内され、そこからメディアシャトルで場内まで移動しました。場外駐車場は普段は公園として利用されている場所だったようですが、後から気づいたのですがこの公園は、1966年のサーキット改修以前は最終コーナー(Westkurve)のあった場所だったようです。
そしてまたメディアシャトルに利用されていた車も、ご覧のようにこれまた豪華な車種ばかりで、雨でぬかるんだ道を歩いた後にこんな高級車を汚してしまって良いのだろうかとこっちが逆に気にしてしまうほどでした。ホスピタリティ的な対応もこちらの自動車メーカーは積極的かつ有効、友好的で上手だなぁというのが正直な感想でした。
いざサーキットに入り、初めて来るF1サーキットの下見をします。コース脇に点在するフラッグポストを覗くと、朝早くから夕方のスケジュールが終わるまでの長い時間、コースの安全を担うオフィシャルさんたちの必需品と言うよりはすでに生活臭すら感じられる設備の数々と、いかにもレース好きが集まっているんだなぁというちょっとしたデコレーションがとても印象的でした。
もちろん日本国内のサーキットでもオフィシャルスタッフさんたちは朝から夕方まで各ポストに詰めて、安全なレース運営には欠かせない存在です。ただ、こちらのスタッフさんたちを見ると、安全な運営はもちろんですが、そこにいる事自体も楽しんでいるんだなという印象を受けました。
日本で同じ事をしたら「オフィシャルスタッフがピクニックしてるんじゃないか」と一部の声の大きな人たちに言われてしまいそうですが、食事や休憩時間くらい楽しんでも良いんじゃないかというのが筆者の個人的な意見です。
今回のDTM最終戦では初走行のスーパーGT勢が木曜日から、金曜日には全車そろってのフリープラクティスが2回行われ、土日はフリー走行もなくいきなり午前中に予選、そして午後には決勝が行われました。
天気があまり良くなかったこと、そしてすでに今シーズンのDTMシリーズチャンピオンが決まっていたこともあり、観客動員に一抹の不安を覚えていた筆者ですが、そんな心配をよそに金曜日から多くのファンがサーキットに来場し、見慣れない日本からのレーシングカーに熱い視線を注ぎ、シャッターを切っていたのがとても印象的でした。
土日には時間によっては身動きできなくなるほどのファンでパドックが混雑し、最終コーナースタンドには選手の横断幕も張ってあり、このあたりのファンのメンタルは日独共通なんだなぁと感じました。
いよいよ来月には、DTM車両7台が来日し、スーパーGTのGT500車両15台と合わせて総勢22台でのガチンコバトル第2ラウンドが富士スピードウェイにて開催されます。DTMファンがどれだけ来日するのかは未知数ですが、日本のモタスポファンにも馴染みの深いロイック・デュバル選手やブノワ・トレルイエ選手の参戦が決まり、日独両国のモタスポファンにとっても、とても意義のあるイベントになることは間違いありません。
こうした有意義かつ建設的なイベントが来年以降も継続して開催されることを、いちモータースポーツファンとして願わずにはいられませんし、日本のモータースポーツファンの方が来年以降、DTMを見にヨーロッパまで行ってみたいと思えるようなきっかけになれば、イベントとして成功したと言えるのではないでしょうか? そしてその時にこの記事が少しでもお役に立てれば、取材者としてこれほど嬉しいことはありません。
(H@ty)