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これまで、CVTのためのオイルであるCVTフルードは、交換の必要はないとされてきたのですが、先日、愛車のプリウスを車検整備に出した際に、ディーラーからCVTフルードの交換を勧められました。無交換を推奨されていたCVTオイルを、なぜ交換推奨するようになったのか、元自動車ディーラー営業マンが、この謎と実際に交換しての変化について解説していきます。
■取り扱い説明書を見てみると
まずは、メーカーがどのように考えているのか、クルマの取扱説明書を見てみることにします。取扱説明書には、各種消耗部品の交換目安時期が記載されています。
CVTフルードの交換目安は「無交換、シビアコンディションでは100,000kmごとに交換」とされています。筆者自身もAT車に乗っていた時には、ATフルードを40,000km程度で定期交換していました。ディーラーに勤めてからCVT車の取り扱いが増え、お客様からもCVTフルードに対する問い合わせが多くありました。一緒に働いていたエンジニアに確認すると、基本的にCVTフルードは交換不要という認識だったので私自身も交換不要という認識を持ち、あえてお客様にも交換を勧めてはいませんでした。
このように、メーカー指定でも販売・整備現場でも基本的に無交換推奨だったのが、交換したほうがいいですよというスタンスになったのはナゼなのでしょうか。
●車検整備の付加メニューとしてのCVTフルード交換
今回、CVTフルード交換を勧められたのは、トヨタ系ディーラーへ車検入庫した際です。クルマの状態としては、初度登録から7年、3回目の車検整備で、走行距離は12万kmを超えています。車検整備の基本メニューに加えて、ロイヤルサービスメニューと銘打った商品ラインナップを見せられながら、交換を勧められました。
私自身は、下手にCVTフルード交換をすると故障につながるというイメージがあり、特に大きく汚れた状態であろう、愛車プリウスのCVTフルードを突然新しいものに変えることで、機械もびっくりしてしまうだろうなと考えていました。
故障のリスクについて質問してみましたが、「交換自体に大きな問題はなく、新しいものに変えたほうがCVTの動きもよくなる」と言われたので、交換することに決めました。そのお店で勧められたのは、トヨタ純正CVTフルードではなく、カストロールミッションオイルのCVT車用(全合成油)です。交換金額は約10,000円でした。
●改善が大きく見られる交換後の動き
12万kmの間交換されていなかったCVTフルードが新しくなり、クルマの動きは大きく変化しました。エンジンからの動力を伝える能力が高くなり、発進時の加速がスムーズになりました。特に、モーター発進を行うハイブリッド車では、大きなトルクを受け止めるCVTの働きが非常に重要になり、今回の交換後、アクセルペダルに対する発進時のクルマの動き出しが早くスムーズになりました。
不調として表れていた、走行中の再加速時に発生してたCVTの滑り感や息継ぎ症状も改善し、今回の交換は良い成果が上がったと思います。特に10万kmを超えてくたびれてきたクルマにとってのCVTフルード交換は、アクセルレスポンスの向上、加速時のトルク感の向上につながるはずです。交換したことによる大きな問題も発生しておらず、交換作業も問題なく行われたことがわかります。
●まとめ
基本的に無交換、シビアコンディション下では10万kmごとの交換とされていましたが、基本的にシビアコンディションに該当しないクルマというのはごく一部です。多くのクルマが短距離走行を繰り返し、登坂が多く、東北や北海道地域では寒冷の状態に置かれます。フルードの品質も交換技術も高く、交換に対する不安はほとんどなく、ディーラーでの交換は安心して行える環境になっているのでCVTフルードの交換を行ってみてはいかがでしょうか。フレッシュなオイルで、CVTの性能も改善するはずです。
(文:佐々木 亘)