80〜90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、あらたにカローラ スポーツが登場したのを機に、番外編として歴代カローラのデザインを振り返ります。
バブル経済の崩壊を体現したような先代に対し、21世紀を目前に、コンパクトセダンのあり方を白紙から構築し直すことを標榜。「ニュー・センチュリー・バリュー」のコンセプトを掲げて登場したのが、9代目のカローラです。
3サイズに加え、ホイールベースを2600mmまで伸ばしたボディは、大人5名がゆったり乗れるミディアムクラスの広さを目標に。乗り降りが容易な550mmのシート高を基準に、パッケージングを徹底検証しました。
「ロバストネス」=力強さ、頼もしさをキーワードとしたスタイルは、ビッグキャビンのワンモーションフォルム。豊かな張りを持つボディ面は、丁寧に引かれたキャラクターラインの助けもあり、厚いドア断面を表現しました。ピラーは前後とも骨太感を持ったもので、とりわけ弧を描いたガラスに沿うリアピラーの美しさが見所。
滑らかなボディ面に沿ったフロントランプとグリルは、カローラとしてまったく新しい表情を獲得。一方で、シャープに切り落とされたリアパネルは、安定感のある三角形のランプが、高い質感とともに後方への勢いをしっかり受け止めます。
インテリアは、上下ツートンカラーで分けたインパネが新鮮。ボディ同様、徹底的に隙間を減らしたパネルが高い面一感を作り出し、単なる豪華さとは異なる合理的な質感の高さを感じさせます。
この革新的な進化は、前年に登場してトヨタのBクラスコンパクトの概念を変えた、初代ヴィッツに通じるもの。トヨタが恐ろしいのは、何年かに一度、こうした画期的な飛翔をサクッとやってみせるところです。
そして9台目で肝要なのは、企画意図に「永続性」を謳っているところ。たしかに、この9代目は現在でもまったく古さを感じさせませんが、それが継続されないのがまたトヨタらしいところでもあるようです。
●主要諸元 トヨタカローラ 1.5 G(4AT)
型式 TAーNZE121
全長4365mm×全幅1695mm×全高1470mm
車両重量 1040kg
ホイールベース 2600mm
エンジン 1496cc 直列4気筒DOHC
出力 105ps/6000
00rpm 14.1kg-m/4200rpm ※ネット値
(すぎもと たかよし)