80〜90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、15代目のクラウンが登場したのを機に、番外編として歴代クラウンのデザインを振り返ります。
スピンドルシェイプを掲げ不評となった4代目は、マイナーチェンジで無難路線に大幅変更。1974年登場の5代目はその路線を継承し、ズバリ「美しい日本のクラウン」をキャッチコピーとして登場しました。
風格と格調を謳うボディはとりわけセダンに顕著で、70年代らしい直線基調は保守方向に振られます。「これは魂動デザインか?」と思わせるボディサイドのキャラクターラインも虚しく、メッキのグリルとバンパーが時代を逆行。
一方、セダンを保険に登場した4ドアのピラード・ハードトップは、パーソナルユーザーを想定した企画。2ドア版と同一シルエットで4枚ドアを実現する「第3のスタイリング」と位置づけました。
ボディサイドは、なるほど2ドア同様段付きのショルダーラインが大きな動きを表現し、後端が切れ上がったリアドアガラスは軽快感を生みます。ただ、角型ランプを用いたフロントフェイスはいささか重厚に過ぎ、チグハグさも。
インテリアも保守まっしぐらで、何と「貴品室」を謳う室内にはモケットシートが奢られます。また、全面ソフトパッドのインパネも豪華で、絶壁の計器・操作部は威圧感すら覚えるもの。
前作への反省から保守路線を選ぶのは、それはそれで明快な姿勢です。しかし、そうであれば「美しい日本」をもっと極めるべきでした。5代目クラウンの功績は、4ドアハードトップという「金脈」の発見だったのかもしれません。
●主要諸元 クラウン・4ドアピラードハードトップ 2600
スーパーサルーン(3フロアAT)
形式 MS85-HG
全長4740mm×全幅1690mm×全高1420mm
車両重量 1360kg
ホイールベース 2690mm
エンジン 2561cc 直列6気筒OHC
出力 140ps/5400rpm 21.0kg-m/3800rpm
(すぎもと たかよし)