80〜90年代の日本車からグッドデザインを振り返るシリーズ。第16回は、ラリー譲りの高性能に加え、最先端のスタイルを標榜したFFスペシャルティに太鼓判です。
卓越した走行性能により、サファリラリーなどのモータースポーツで成績を残した歴代セリカ。1985年、流面形をテーマに、スペシャルティ度を大幅にアップして登場したのが4代目です。
リアオーバーハングの短いクサビ型のボディには、ウインドウ内側にB・Cピラーを隠してブラックアウトさせたキャビンが載り、先進性とともに前傾、前進感を生み出します。
豊かなブリスターフェンダーに沿うキャラクターラインの上部は凹型にカットされ、この面が微妙に曲率を変化させながら「流面」を表現。ボディ全体に動きを与えます。
3面折れのフロントノーズは、ガーニッシュとスモークアクリルグリルの組み合わせで一体感を獲得、同時にセリカとしての個性を主張します。一方、長方形の端正なリアランプにより、ボディが必要以上に情緒的にならないようコントロール。
インテリアは、堅実で質感のあるインパネと立体的な8ウェイのスポーツシートが、80年代のトヨタ車らしい先進感を演出。ブルーなど色使いにも「上手さ」が光ります。
3代目や5代目は北米スタジオであるCALTYのデザインとされていますが、間を埋めるこの4代目はラインや面の繊細さが実に日本的で、セリカの歴史の中では特異な存在といえるかもしれません。
往々にして広報用のキャッチコピーは上滑りなケースが目立ちますが、4代目の「流面形」は、極めて的確に繊細なボディを表現しているようです。
●主要諸元 トヨタ セリカ GT-R(5MT)
型式 E-ST162
全長4365mm×全幅1690mm×全高1295mm
車両重量 1120kg
ホイールベース 2525mm
エンジン 1998cc 4気筒DOHC16バルブ
出力 160ps/6400rpm 19.0kg-m/4800rpm
(すぎもと たかよし)