スバル360が運んだ「笑顔」とはなんだったのか?【Great Race 2017】

自動車評論家の国沢光宏さんがスバル360で、アメリカを縦断するグレートレースに出場すると聞き、「なんてバカなことを!それはオモシロい!!」と、反射神経的にに有無を言わさず同行取材を決めました。

現地では、初盤からトラブルが続き、後半に入ったあたりでも「これは途中リタイヤせざるを得ないか?」と思わせるようなステージもありましたが、最終日前日及び最終日は見違えるほど快調で、まったく不安のない走りを見せた360でした。

どうしてそんなことをするに至ったか? については、出発前にインタビュー記事にしていますが、そこで以下のようにおっしゃってました。

ヒストリックカーのイベントといえば高価かつカンペキなコンディションで出場するというイメージです。今回は日本初のファミリーカーであり、かつ身近。それでいてアメリカ人からすれば「面白い!」と言ってくれるだろうスバル360です。クルマの歴史の長いアメリカ人から「日本人もクルマを楽しんでるね」と思われたら本望です。

アメリカ人に「面白い!」と言われるだけでなく、周りのみんなを笑顔にしてくれたのがスバル360であり、Team Kunisawaでしたが、それだけではありません。

ゴールした瞬間の国沢さんは「途中どうなるかと思ったけど、ゴールしたらもう自分が嬉しくなっちゃって笑顔になってた」と言います。

もちろん、レースを完走できたという達成感で笑顔になるのは当然ですが、それだけではないのでしょう。

走行を続けるのが困難かもしれないという日が続きながら、各日のランチポイントやゴールポイントの場所では、地元の人から必ずと言っていいほど注目の的。それも「はぁ? ホントにこれで走ってきたの〜?」という笑いながら信じられない表情を浮かべて近寄ってくるのです。

特に子供達には人気で、「乗っていいよ」と言うと、少しはにかみながらスバルに乗り込みハンドルを左右に動かしながら満面の笑み。親御さんが写メを撮るのは日本と同じです。

    

親子でリヤのエンジンルームを覗き込んでお父さんが息子に「これがエンジンだ。小さいだろう。あれがキャブレターで・・・」と(想像ですが)おそらくそんなことを会話しているのも微笑ましい限りでした。

 

国沢さんのゴールの笑顔は、最初の目的である「アメリカ人に笑顔を届ける」ことができたことからに違いありません。釣られて笑顔になったとも言えるでしょう。

 

しかし、それは日本にも届いていたようです。

帰国後、いろんな人から「スバル360ですごく走ったんだってね。毎日400km以上!4000kmも!それは本当にすごいね」と目を輝かせながら現地の様子を聞いてくる人に何人も遭遇しました。「自分も出たいな、どうやったら出られるんですかね?」とかなり真顔で聞いてくる人もいました。

『アメリカ人から「日本人もクルマを楽しんでるね」と思われたら本望』と言って出かけていたわけですが、十分日本人にもクルマを楽しんできたことが伝わっていたようです。

クルマに限らず、多くの人が「なんか最近の日本は窮屈だ」と感じていませんか? それは好きなこと、やりたいことをやっていないからだと思います。好きなこと、やりたいことをやっている人を賞賛することが少ない(場合によっては非難までする)からだと思います。スバル360を見ながらフランクに笑いかけてくる多くのアメリカの人を見て、つくづくそう感じました。

国沢さんありがとうございます。日本人としてとても嬉しくなりました。そして、元気と勇気をもらいました。きっとそれは多くの日本人にも伝わったことと確信します。

(clicccar編集長 小林 和久)

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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