■運転免許以外に、作業するための「資格」が必要となることが多い
独特の位置に運転席を持つクレーン車などに出くわすと、「あんな大きなものをあそこで運転できるなんてスゴいなあ」などと感心するものです。
ところで、クレーン車をはじめとした多くの特殊自動車は、その自動車自体を運転できたとしても、装備を用いて作業をするにはそれに応じた資格がないと作業ができないのをご存知ですか?
移動式クレーン、高所作業車、フォークリフト、さらにブルドーザー・油圧ショベルなどの車両系建設機械も含め、それぞれで作業を行う場合には、労働安全衛生法などに則った学科・実技等の講習を受けたり、特別教育を受講し、修了する必要があります。
たとえば、電気式操作システムの採用により旋回、ブーム起伏、ジブチルトなどの操作速度などが設定できる、KOBELCOのラフテレーンクレーン・パンサー700を例に挙げると、公道を走るための大型特殊自動車免許、吊り作業用の移動式クレーン運転士免許、つり荷の玉掛け作業のための玉掛け技能講習の3つが必要になります。
ちなみに、「玉掛け」とはなにかというと、クレーンなどのフックにワイヤロープなどを用いて物を掛けたり外したりする作業のこと。国内ではつり上げ荷重が1t以上のクレーンを使用して荷をつる場合、玉掛け技能講習の修了が必要となります。もちろん、技能講習資格ではホイールクレーンの運転はできません。
次に、限定中型自動車免許でも運転できるアイチの高所作業車スカイマスター SJ30ARSの場合。
同社の中で一番高い30mクラスのブームを持ちながら、限定中型自動車免許でも運転できる車輌総重量8t未満の車両なので、運転できる免許の範囲は広いですが、それだけではダメ。ブームの操作に別の免許が必要なのです。
高所作業車なら、作業床(人が乗るカゴ)の高さが10m以上になるブーム式高所作業車や垂直昇降式高所作業車などは、その作業をするために技能講習を受講して修了した証明が必要です。また2m以上10m未満のブームの操作の場合でも、技能講習はないものの、特別教育を受講し修了した証明が必要となります。
フォークリフトも同様に、最大積載荷重1t未満なら特別教育、それ以上は技能講習となっています。このように、扱うものの大きさや重さなどによって、履修する内容が異なることもあります。
マシンコントロール油圧ショベルでの作業機操作をセミオート化したコマツPC200iや、日米欧排出ガス4次規制に適合したクリーンなブルドーザー・コマツD155AXi-8などの、ブルドーザーや油圧ショベルなどの運転はどうでしょうか?
これも機械の重さ(機体重量が3tが基準)によって要求資格が異なり、上位は技能講習、下位は特別教育を修了することが必要です。技能講習には操る機械の種類により、「整地・運搬・積込み用及び掘削用」「基礎工事用」「解体用」等のジャンルがあります。
いかがでしたか? このようにクレーン車だけでなく、建設現場などで活躍する工事車両などにも、それぞれ必要な資格があるのです。
※2017年5月9日の記事を2023年10月13日に追記・再編集しました。
(古川教夫)