いまや日本をはじめ、世界的にも大きな規模を誇る自動車メーカーとして有名な「トヨタ」。その原点が、実は“手織り機”だということをご存じでしょうか?
“手織り機”の開発に邁進したのが、トヨタ自動車を含めたトヨタグループの創業者である豊田喜一郎の父親である豊田佐吉でした。
(画像引用:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/より)
生まれ育った静岡県湖西市山口は綿織物業が盛んで、母親は昼に農作業を、夜は機織りに精を出しており、佐吉はそんな母の苦労を少しでも楽にしてあげたいと思ったのが織機の開発を志したきっかけと伝えられています。
そして1890年、「織機」(木製人力織機)の特許を出願。
(画像引用:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/より)
しかし、佐吉が目指していたのは、蒸気機関やモーターを動力源とする織機。しかも、杼(シャトル)内に収められた糸巻きの糸がなくなったときに自動的に補充しながら織り続けることができる“自動織機”でした。
ただ、自動化するにあたり、糸が不足したり、途中で切れてしまったときには、即座に運転を止めないとキズとなった布が織られたりするなどの不具合が発生する恐れがありました。
それから、7年が経過した1897年に、日本初の動力織機「豊田式汽力織機」が完成。よこ糸の消費または切断を検知すると自動で停止する機構も装着されるなどの配慮が施されていました。
(画像引用:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/より)
さらに、1905年に発売した「38年式織機」では縦糸停止装置を採用し、ムラの無い均一の品質をもつ織物をつくりだせるようになりました。
その結果、製品の製造における人や工程そしてコストのムダが減少。これが、効率良く優れた製品をつくりだすというトヨタ生産方式の起源となったと言われています。
その後、長男の豊田喜一郎が自動車事業をスタート。いまでは世界トップを争うほどまでの成長を遂げました。
この成長にはトヨタ生産方式による効率的な生産方法による影響も大きいでしょう。
そんなトヨタ車の現在のラインナップは、ミニバンやSUVそしてスポーツカーなど多岐に渡るのが特徴的です。
あらゆるニーズに沿ったクルマを開発する姿には、豊田佐吉が「母に少しでも楽をさせたい」という想いから自動織機を開発したのと同じ思想を感じます。
そして先日、トヨタは新型「プリウス」を発表しました。
圧倒的な燃費性能もさることながら、注目は「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」のもとで開発された点です。
ハードウェアを共有することで、さらなるコストカットや開発の効率化をし、より良いクルマづくりを進めるという方針で、まさにトヨタの起源を推し進める一手でもあります。
常に変化する時代の中で、どのようなクルマが誕生し、私たちの生活を楽にしてくれるのか、今後も目が離せそうにありません。
※文中敬称略
(今 総一郎)