このところ国内市場は、軽自動車が大人気。取り回しの良い小柄なボディに広大な室内スペース、優れた燃費やパワフルなターボが選べる上に、税金や維持費の安さが支持されて、売れに売れています。でも最近の660cc軽自動車の中には、車重が1トンを超えて「軽」と呼ぶにはちょっと無理がある豪華仕様も出てきていますよね。
そんな現代の軽自動車も、元をたどれば昭和30年代から始まった、全長が3m未満で360ccエンジンを搭載する軽4輪規格からスタートしました。「360cc軽自動車のすべて」に掲載されているとおり、小さいボディと心臓で、家族の夢と希望を乗せて日本中を走り回っていたのです。今見ると360cc軽は本当に小さくて可愛らしいのですが、残念ながら21世紀の街中ではすっかり見かけなくなりました。
そこでお勧めなのが、ホンダの360cc軽が勢揃いしているツインリンクもてぎの「ホンダコレクションホール」です。「ホンダ車だけじゃ、つまらないんじゃない?」と思いきやさにあらず。軽トラからトールワゴン、セダンとクーペ、更にSUVまで全部揃っていますから、当時の生き生きとした360cc軽の息吹を存分に体感できると思います。
■T360:ホンダ初の4輪自動車で、日本初DOHCエンジンを搭載したスポーツ軽トラ。クルマは開発者に似てくるもので、なにやら本田宗一郎さんの面影があると感じました。
■N360:スバル360がRR&2ストで評判だった頃、いち早くFFと空冷4ストを採用して「軽い・広い・速い」の3拍子を実現したクルマでした。最新のN-BOXやN-oneの「N」は、まさしくN360の系譜なのですね。
■Z:ドアハンドルが縦置きされたスタイリッシュな2ドアクーペで、リアガラスの黒い太枠から「水中めがね」と呼ばれていました。前期はNをベースに空冷エンジンを搭載、後期ではライフをベースに水冷へ換装して商品力をアップ。ホンダらしい小粋なセンスに溢れていました。
■ライフ:N360の後継で、水冷2気筒にバランスシャフトを組合せたホンダ初の4ドアセダン。実は筆者の初愛車(12年落ち)でして、見かけ以上に広い室内とアクセル全開でビンビン回る故障知らずのエンジンが思い出されます。シビックよりも先に登場した兄貴分ながらも、時代は弟分のシビックへと移っていきました。
■バモス:軽トラベースの稀有なオープン・ピックアップトラック。実車を見ると、ジャングル探検ツアーの乗り物みたいで、ものすご~く楽しそう。でも反面ドアもガラス窓もないせいか、日常生活のイメージは湧かないかな・・・。さすがに販売も2500台に留まったそうですが、こちらもいかにもホンダらしい一品だと実感しました。
■ライフステップバン:通り名は「ステップバン」ですが、本名は「ライフステップバン」なのですね。ライフをベースに開発された商用車の「バン」ですが、まとっているスタイルとオーラは現代の「軽トールワゴン」そのもの。隣に展示されているピックアップ仕様も粋ですヨ。
ツインリンクもてぎの「ホンダコレクションホール」では、他にも「ホンダF1のすべて」「ASIMOのすべて」「燃料電池車のすべて」といえる展示も行われています。
(拓波幸としひろ)