皆さん小学校の理科の授業のとき石油がなくなるまであと何年と習いましたか? 私が小学生だったのは1970年代のことですが、石油は「あと30年」で採れなくなると聞いたのをおぼえています。あれから40年近く過ぎていますから、これは大間違いだったことになりますね。
実は地球上の石油資源の埋蔵量は年を追うごとに増えているんです。現在の技術で経済的、商業的に掘り出せる量を確認埋蔵量といいます。今後はかつてのように大規模な油田が見つかる可能性は低く、中規模以下の油田や海底などからコストと手間をかけて石油を掘り出さなければなりませんが、石油の掘削技術は今なお進化し続ける最先端分野のひとつ。これまで採掘が難しかった地層の石油も技術革新により掘り出せるようになってきました。その結果、2011年末現在の世界の原油確認埋蔵量と可採年数は約58年分といわれ(58年で掘り尽くすという意味ではないことに注意)、またIEA(国際エネルギー機関)による最新レポートを見ると、長期的な石油の可採年数の見通しは150年分以上と予測されています(石油連盟資料による)。
●可採年数とは
年末における確認埋蔵量をその年の石油生産量で割った数字。確認埋蔵量は新油田の開発や技術革新により毎年増えるので可採年数も年々延びる傾向にあります。従って可採年数=枯渇までの年数ではありません
しかも今、意外な国々が石油生産ブームに沸いています。それはアメリカを中心とする北米大陸と中国、南米などです。これらの国々には石油になる前の段階で地層にたまったオイルシェールという頁岩(けつがん)の層があり、従来はコスト的に見合わないため本格生産されていませんでしたが、その問題が最新技術の発達でクリアされたことにより石油ブームが到来。オイルシェールの層からはシェールガスという天然ガスが採掘されると同時にシェールオイルという原油も採れ、これらを称して「シェール革命」と呼ばれます。
さらにカナダと南米ベネズエラには石油成分を含むオイルサンドが、またベネズエラにはオリノコタールという重質油も大量にあり、いずれも十分な生産体制が整っています。こうした石油資源の採掘は在来型の石油と比べてかなりのコスト高になるものの、近年の原油高に支えられる形で採算ベースに乗り急成長を遂げつつあります。
世界の石油総生産量はすでにピークをすぎたというオイルピーク説もここ数年話題になりましたが石油業界では否定的な意見も多く、その背景にはこれら新しい石油資源の存在があります。オイルシェールやオイルサンド、オリノコタールは石油代替エネルギーとも呼ばれ、とりわけオイルシェールは北米と中国以外に西欧、中南米、アフリカなど世界の広い範囲で採掘できることが確認されています。すでにアメリカ産のシェールガスはLNGとして日本にも輸入され、原発の停止によりフル稼働が続く各地の火力発電所で活躍中。これら各国での生産が本格化すれば圧倒的な埋蔵量を誇る中東をも脅かす大きな市場になり、世界の石油勢力地図が塗り変わるかもしれません。
かくして当面は枯渇の心配がない石油事情ですが、シェール革命が今後のガソリン価格にどう反映されるかは政治的な駆け引きをはじめ為替相場、市場の需給関係、投機マネーの動向などに左右されるので何ともいえません。
なおオイルシェールからの天然ガスと原油の採掘には、大量の水と特殊な薬剤を使用すること、地中に埋蔵されていた炭素エネルギーが地表に放出されることに寄る二酸化炭素濃度の上昇など、環境破壊の懸念があることを最後に付け加えておきます。
■石油連盟公式サイト(貿易統計情報などもこちらから)
http://www.paj.gr.jp/
(まるほ商会)