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■「車は落雷しても安全」は本当?
雷が落ちても車は安全と言われていますが、本当なのでしょうか。
ハイブリッドカーと電気自動車に人工雷を落としたJAFの実験結果では、人がいる車内は安全なことが確認できましたが、車は損傷して走行できなくなりました。
太平洋側では、雷といえば夏に起こるのが一般的です。しかし日本海側では冬が雷の本番。
JAFが行った検証結果とともに、改めて車に対する雷の危険性について調べてみました。
●ボディに直接触れていなければ乗員は大丈夫
JAFの実験では、アルミホイルを全身に巻き付けたマネキン人形を運転席に置き、車の真上から人工雷を落として、車内に落雷の影響があるのかを検証しています。
その結果、ハンドルやシフトノブに触れた状態で固定されたマネキン人形に、焦げ痕などは見られなかったと報告されています。
専門家によると、車内が安全なのは雷が電気抵抗が低いボディを伝わってタイヤから地面に放電されるためで、過去の落雷実験でも乗員が被害を受けた例はないとのことです。
つまり、雷が落ちても車の中にいる人は安全です。ただし、ボディの金属部分に触れていると感電の恐れがある、とも述べられていました。
今回のJAFが使ったテスト車両は、どちらも天井が金属製の車です。幌タイプのオープンカーやサンルーフ付きの車ではどうなのかを独自に調べたところ、これらの車は確実に安全とは言えないようでした。
急な雷に見舞われたら、オープンカーやサンルーフが付いた車は安全な建物などへ避難したほうがよさそうです。
●ハイブリッドカーと電気自動車は走行不能になる恐れが
実験では車内のマネキンは大丈夫でしたが、車のほうは落雷によって走行不能になったとのことです。
テスト車両のハイブリッドカーはエンジンがかかった状態、電気自動車は走行可能状態で人工雷を落としたところ、どちらも走行システムや車両制御システム警告灯が点灯しました。
ドアロックや灯火類、ワイパーなどはどちらの車も問題なく作動しましたが、車両診断機器を接続して確認したところ、エンジン制御装置(ECU)や走行モーターの制御システムなどに異常が発生していたそうです。
これに対して専門家は、落雷によって電子機器が壊れたか、異常を検知してセーフティシステムが作動したことが考えられると述べています。
もちろん実験では、ハイブリッドカーのガソリンに引火して爆発することはありませんでした。ガソリンは気化して十分な酸素と混ざりあった状態でなければ引火しないので、燃料漏れを起こしていない限り落雷で車が爆発することはありません。
過去の車への落雷事例では、走行中に雷に打たれてもそのまま走行できたケースや、一時的にエンジンが停止したものの大事には至らなかったケースもあります。
落雷の影響は、車や状況によって異なるようです。複雑なシステムを持つハイブリッドカーや電気自動車は、それだけ落雷で故障しやすいのかもしれません。
●雷で車の外装やタイヤが破損する場合も
車の真上で人工雷を落とした場合、実験ではアンテナに落ちて、タイヤから地面へと放電されていました。
一般的にゴムは電気を通さないと言われていますが、雷のような高電圧の電気は流れます。また、タイヤに含まれるカーボンブラックは電気を通しやすい性質があるので、このような結果になります。
JAFの実験結果ではタイヤに雷の跡が残っただけでしたが、場合によってはパンクする恐れもあるそうです。
また、ガラスやボンネットに人工雷を落とした実験では、ボディやフロントガラスに雷の痕が残ったうえ、雷が落ちる箇所によってはヘッドライトが消えたり、車内機器が誤作動を起こしてエアバッグが展開したと報告されています。
つまり走行中の車に雷が落ちると、エンジン停止や機器の誤作動、パンクなどが起こる場合があるということです。
●落雷でも車両保険は使える! そのほかの注意点は?
ハイブリッドカーや電気自動車の主要システムが故障すると、高額な修理費用がかかりますが、落雷での故障にも車両保険が使えるので安心です。
ただし、車への落雷被害は証明が難しい場合もあるので、落雷の時間や写真など状況を証明できるものを残しておき、具体的な対応方法は保険会社に確認するとよいでしょう。
車に雷が落ちるのはとても珍しいケースとはいえ、開けた平地を走行中は落ちる可能性が高くなります。車内にいれば人命は守られますが、車の被害にも備えて、近くに頑丈な建物があれば天候が回復するまで避難するのが望ましいといえますね。
特に、日本海側の東北・北陸・山陰地方で起こる冬の雷は、夏の雷よりも遥かに強力なのだとか。万が一車に落ちた場合は、どのような影響があるか予想がつきません。
また、運転中は近くで稲光が起こると目ががくらんだり、雷恐怖症の人は驚いてパニックを起こすことも考えられます。加えて、停電による交通障害が起こる可能性もあります。
季節を問わず急な雷に遭遇したら、なにより、まずは速度を落とすことが大切といえそうですね。