カワサキの二輪初ストロングハイブリッドシステムはジャパンモビリティショー2023注目のメカニズム【バイクのコラム】

■二輪初のストロングハイブリッド車が日本初公開

エンジンは451cc並列2気筒ながら650~700ccクラスの性能を持つという。
エンジンは451cc並列2気筒ながら650~700ccクラスの性能を持つという。

ご存知のように、2023年より東京モーターショーはジャパンモビリティショー(JMS)へと生まれ変わります。

その記念すべき第1回JMSにカワサキモータースは、世界初のストロングハイブリッド型バイクである「Ninja 7 Hybrid」を展示することを発表しました。

すでに欧州ではお披露目されているハイブリッド・スポーツバイクの日本初公開というわけです。

自動車業界でハイブリッドシステムといえば、エンジン(内燃機関)と電気モーターを組み合わせたパワートレインのことを指します。

今回、カワサキモータースは『エンジンと電気モーターを組み合わせることによりパワフルな走行を実現し、また電気モーターのみでも走行可能なシステム』のことをストロングハイブリッドと定義しています。

逆に、軽自動車などで採用例の多いマイルドハイブリッドは、小型モーターによってエンジンをアシストする機能に限定したハイブリッドシステムの呼び名、という風に認識されていることが多いでしょう。

ちなみに、マイルドハイブリッドであっても瞬間的にモーターだけで走行する制御が含まれていることもありますので、電気モーターだけで走行可能という条件でストロングとマイルドを分類するというのは微妙といえます。

実際、筆者の知る限りストロングハイブリッドやマイルドハイブリッドについて厳密な定義というのは存在していません。たとえば、四輪業界では低電圧のハイブリッドシステムは、それだけでマイルドと分類されることもあります。

●48Vバッテリーは回生ブレーキにより充電

JMSで日本初公開されるNinja 7 Hybrid。車重227kg。システム最大トルクは60.4Nmだという。
JMSで日本初公開されるNinja 7 Hybrid。車重227kg。システム最大トルクは60.4Nmだという。

Ninja 7 Hybridの駆動用バッテリーは48Vのリチウムイオン電池であると、欧州では発表されています。

そして、欧州の四輪業界では12V~48Vのバッテリーを利用するシステムは、マイルドハイブリッドと分類される傾向にあるのも事実です。その意味では、カワサキモータースの二輪初のストロングハイブリッドというアピールに違和感を覚える人もいるかもしれません。

また、駆動用モーターの最高出力は9kWと発表されています。エンジンの出力が43.5kWで、モーター出力とミックスしたシステムの正味出力は51.1kWということですから、エンジンとモーターの出力比からいってもマイルド寄りのストロングイハブリッドと捉えるのが適切かもしれません。

四輪でストロングハイブリッドというと、トヨタ式ハイブリッドに代表されるように、発電用と駆動用に2つのモーターを搭載していることが多いのですが、Ninja 7 Hybridについては、ひとつのモーターしか積んでいないようです。こうなると、バッテリーの充電は駆動用モーターを利用した回生ブレーキによってのみ行うものと考えられます。

四輪のワンモーターハイブリッドでは、エンジンでの走行中に、その出力の一部を利用して駆動モーターで発電、バッテリーを充電する機能を持つモデルもあります。そうした制御をカワサキのハイブリッドバイクが採用している可能性もあるかもしれません。

このあたりのシステム構成や制御については未公表となっている部分も多く、自動車テクノロジーのファンにとっては気になるところではないでしょうか。せっかくカワサキモータースがJMSで日本初公開するのですから、説明員の方にそのあたりの疑問を聞いてみるいい機会になりそうです。

●日本では大型二輪AT限定免許で乗れる?

2気筒エンジンと駆動用モーター、リチウムイオン電池、そして6速自動変速機というシステム構成となっている。
2気筒エンジンと駆動用モーター、リチウムイオン電池、そして6速自動変速機というシステム構成となっている。

日本での発売は明言されていないNinja 7 Hybridですが、JMSで展示されるということは日本導入も考えているということでしょう。

気になるのは、もし日本で売られるとすると、どのようなカテゴリーになるのか、という点です。

ハイブリッドといっても、エンジン排気量は451ccとなっていますから、このままの仕様であれば日本では大型二輪扱いになると思われます。

ただし、このハイブリッドシステムにおいては6速の自動変速機が搭載されるとされ、画像を見る限り、左側のグリップにクラッチレバーは見当たりません。つまりAT限定免許で乗ることができる大型二輪になるといえます。

現状、大型二輪AT限定免許で乗れるモデル(スクーター以外)というと、ホンダのDCT搭載車(アフリカツインやレブル1100など)が中心となっていますが、Ninja 7 Hybridが、その市場に参入すれば、ファン領域の大型二輪における電動化が加速するでしょう。そうなると一気にトレンドが変わる可能性も感じます。

はたして、Ninja 7 Hybridは日本に導入されるのかどうか。JMAのカワサキモータース・ブースでは、そうした質問やリクエストの声がもっとも大きくなるのかもしれません。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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