■Cセグメントホットハッチのエンジンスペックを比較
2022年10月に発売された新型フォルクスワーゲン・ゴルフRは、ご存じのとおり、GTIの上に位置するゴルフ史上最速モデル。
2.0L TSIエンジンは、最高出力235kW(320PS)・最大トルク420Nmというスペックを誇り、GTIを超える刺激的な走りを堪能できます。
ライバルになり得るホンダ・シビックタイプR、ルノーのメガーヌR.S.トロフィー、そして先代ゴルフR、現行GTIとスペックを比べてみます。●エンジンスペック
新型ゴルフR:2.0L直列4気筒ガソリンターボ、最高出力235kW(320PS)/5350-6500rpm、最大トルク420Nm/2100-5350rpm
先代ゴルフR:2.0L直列4気筒ガソリンターボ、最高出力228kW(310PS)/5500-6500rpm、最大トルク400Nm/2000-5400rpm
現行ゴルフGTI:2.0L直列4気筒ガソリンターボ、最高出力180kW(245PS)/5000-6500rpm、最大トルク370Nm/1600-4300rpm
シビックタイプR:2.0L直列4気筒ガソリンターボ、最高出力243kW(330PS)/6500rpm、最大トルク420Nm/2600rpm-4000rpm
メガーヌR.S.トロフィー:1.8L直列4気筒ガソリンターボ、最高出力221kW(300PS)/6000rpm、最大トルク400Nm/3200rpm
組み合わされるトランスミッションは、ゴルフRとGTIが2ペダルの7速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)。シビックタイプRとメガーヌR.S.トロフィーが6速MTです。
駆動方式は、ゴルフRがフルタイム4WDの「4MOTIONシステム」、GTIとシビックタイプR、メガーヌR.S.トロフィーがFFです。
最高出力でトップに立つのは現行シビックタイプRで、最大トルクは新型ゴルフRとシビックタイプRが420Nmに達しています。
駆動方式、トランスミッションの違いは、走行フィールに大きな差をもたらしているものの、新型ゴルフR、シビックタイプRともに低速域から湧き上がるようなトルク感、高速域の圧倒的なパンチ力を備えています。
ゴルフGTI、メガーヌR.S.トロフィーも含めて、一般公道ですべての能力を解き放つのは当然ながら無理があるのは当然です。
筆者が乗り心地も含めて最もピーキーに感じるのは、メガーヌR.S.トロフィー。素のメガーヌR.S.は、乗り味も含めて先代よりも快適になっているものの、トロフィーはハードに引き締められた足まわりもあり、激辛スポーツハッチという仕上がり。足の硬さも含めて、ハードな乗り心地では、ゴルフRも負けていません。
一方で、適度な快適性を備え「Grand Touring Injection(グランド・ツーリング・インジェクション)」を意味するゴルフGTIは、まさにグランツーリング的な仕上がりになっています。
筆者は、昨年ゴルフGTIを数日間乗る機会があり、速さと快適性のバランスに秀でたGTIを指名するファンが多いことに改めて納得させられました。
シビックタイプRも傑作といえる走りを披露してくれます。先代よりもさらにフラットライドな乗り味と高いロードフォールディング性能を備えつつ、極低速域から非常に扱いやすいエンジン、精緻なブリッピングを披露してくれる6MTは、手にできるのであれば欲しい!と思わせる魅力に満ちあふれています。
4名定員ではあるものの、超本格FFスポーツモデルでありながら、この乗り心地ならファミリーユースも「いけそう」な範囲に収まっています。
先述したように、Cセグメントトップクラスのハイパワーを誇る新型ゴルフRは、ターボの過給が始まると怒濤の加速を披露してくれます。若干のターボラグを抱かせるものの、レスポンスも良好。とくに、高速道路の合流路などで加速する際などは、強烈な加速が容易に引き出せます。
現行GTIも十分な速さを備えていますが、やはりRは一枚も二枚も上手で、とにかく速さを求めるのであれば、圧倒的な差があります。新型ゴルフRはさらに、先代までの直線番長的な走りっぷりではなく、旋回性も高く、ハンドリングも堪能できるのが美点。
新型ゴルフRには、2つの多板クラッチがリヤアクスルに配置され、左右後輪のトルク配分を制御する「Rパフォーマンストルクベクタリング」が新たに搭載されていて、安定したコーナリング姿勢に寄与。
電子制御式ディファレンシャルロックの「XDS」とアダプティブシャシーコントロールの「DCC(オプション)」、フルタイム4WD(Rパフォーマンストルクベクタリング)によるハンドリングと操縦安定性やスタビリティの高さも、新型ゴルフRの魅力になっています。
なお、新型ゴルフRに搭載されている「ビークル ダイナミクス マネージャー」もこうした鋭く、安定感ある走りに貢献しています。電子制御式ディファレンシャルロックの「XDS」とアダプティブシャーシコントロールである「DCC」を統合制御するのはもちろん、「Rパフォーマンストルクベクタリング」を備えるフルタイム4WDの「4MOTION」と連携。
走行中は、絶えずシステムが4MOTION、XDS、DCCをコントロールしているそうですが、当然ながらあからさまな介入ぶりはなく、ドライバーが察知するのはほぼ不可能であるはず。ロールを抑えながらノーズが即座にインを向くハンドリングは、FFのGTIとの違いを感じさせます。
こうした速さと操縦安定性の高さを兼ね備えている一方、「DCCパッケージ」装着車は、235/35R19サイズというタイヤも含めて記述のとおり、かなりハードな乗り味を示します。
「DCC」で「コンフォート」にすれば、日常使いで根を上げてしまうほど硬くはないものの、「スポーツ」「レース」モードはその名に恥じないホットな加速、ハンドリングが得られます。
ゴルフRは、今回取り上げたライバルと比べても負けずに迫力あるスタイリング、ディテールを備えつつ、上質さを損なっていない感じがします。GTIよりもかなり刺激的なのは間違いないものの、大人のスポーツハッチに収まっているのも魅力的に映る方も多いのではないでしょうか。
●ゴルフR価格:639万8000円
●DCCパッケージ価格:22万円
(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)