トヨタのパイクカー「WiLL Vi(ウィル・ヴイアイ)」デビュー。異業種との合同プロジェクトで生まれたWiLLシリーズ第1弾【今日は何の日?1月17日】

■“かぼちゃの馬車”のような奇抜なスタイルで注目を集める

2000(平成12)年1月17日、トヨタからシンデレラ物語の“かぼちゃの馬車”のようなスタイルで目を引いた「Wil Vi(ウィル・ヴイアイ)」が発売されました。WiLL Viは、トヨタが中心となって、花王や松下電器などと共同で進めた異業種プロジェクトで開発された、パイクカーシリーズの第1弾です。

2000年にデビューしたWiLL Vi。まさにシンデレラ物語の”かぼちゃの馬車”のイメージ
2000年にデビューしたWiLL Vi。まさにシンデレラ物語の”かぼちゃの馬車”のイメージ

●異業種プロジェクトから生まれたWiLLシリーズ

WiLLプロジェクトは、トヨタが中心となって花王や松下電器、アサヒビール、近畿日本ツーリストと共同で進めた異業種プロジェクトで、20代~30代の若い層をターゲットにした魅力的な商品開発を行う取り組みです。

そこで企画された新しいクルマづくり“WiLLシリーズ”の第1弾が「WiLL Vi」。続いて第2弾が「WiLL VS」、第3弾が「WiLL CYPHA(サイファ)」です。

1987年にデビューしたBe-1。日産が展開したパイプカー第1弾
1987年にデビューしたBe-1。日産が展開したパイプカー第1弾

WiLLシリーズのような個性的なデザインに特化したクルマは、“パイクカー”と呼ばれ、台数を狙った一般的な市販車とは異なる限定的なクルマです。

1990年頃に日産自動車は、ミニクーパー風の「Be-1」、レトロなオフロード風「パオ」、懐かしいスポーツクーペ「フィガロ」といったレトロ調のパイクカーシリーズを投入して、人気を集めました。対するトヨタのWiLLシリーズは、先鋭的で近未来的なデザインに特化したパイクカーでした。

●奇抜なスタイルがゆえに短命に終わったWiLL Vi

WiLL Viは、「ヴィッツ」のプラットフォームを利用した4ドアセダン。何よりも、シンデレラ物語に出てくる“かぼちゃの馬車”をイメージしたような奇抜なスタイルが特徴でした。

インテリアも可愛いWiLL Vi
インテリアも可愛いWiLL Vi

ハンドルやメーター、シフトノブなどの内装も、女性が好みそうなお洒落な造りとなっています。

パワートレインは、1.3L直4 DOHCと4速ATの組み合わせ。ヴィッツよりも100kg近く重かったため、走りには不満がありましたが、そもそも走りをウンヌンするようなクルマではありません。

結果として、購入者の約半数は20~30代の女性となりましたが、一方でスタイル重視のクルマなので取り回しが良くないという不満も結構あったようです。Will Viは、個性的なスタイルで目を引きましたが、販売は厳しく「パッソ」や「ヴィッツ」の登場とともに短命で消えていきました。

●WiLL Viに続いた、WiLL VSとWiLL CYPHA

WiLL Viに続いたのは、2001年に登場したスパルタンなフォルムが特徴の「WiLL VS」と、2002年に登場した当時のハイテク技術を搭載した「WiLL CYPHA」です。

2001年にデビューしたWillブランドの第2弾のWill VS(ステレス戦闘機をイメージ)
2001年にデビューしたWillブランドの第2弾のWill VS(ステレス戦闘機をイメージ)

Will VSは、「カローラ」をベースにした5ドアハッチバックスタイルで、エッジを効かせたステルス戦闘機をイメージした大胆なスタイリングが特徴。ステアリングホイールやメーター、シフトノブなどのインテリアも戦闘機のコクピットを意識した構成でした。

パワートレインは、1.5L&1.8L直4 DOHCエンジンと4速ATの組み合わせ、ハイパワーバージョンでは6速MTの組み合わせも設定されました。

2002年にデビューしたWillブランド第3弾のWiLL CYPHA(ディスプレイ型一体型ヘルメットをイメージ)
2002年にデビューしたWillブランド第3弾のWiLL CYPHA(ディスプレイ型一体型ヘルメットをイメージ)

WiLL CYPHAは、Viと同様にヴィッツのプラットフォームを流用し、そのスタイルから“サイバーカプセル”と呼ばれました。ディスプレイ一体型デザインに、当時最先端のテレマティクスシステム“トヨタG-BOOK”対応ナビを搭載。

パワートレインは、1.3L(FF)および1.5L(4WD)直4 DOHCエンジンと4速ATの組み合わせでした。

2005年2月にヴィッツが2代目にモデルチェンジされました。このときに、CYPHAは販売を終了し、同時にWiLLプロジェクトも終焉を迎えたのです。


初めて街で「Will Vi」を見たとき、トヨタらしくないクルマ、奇抜すぎて購入者は限定されるのではないかな?というのが第一印象でした。今となっては珍車に上げられもする、クルマとしては歴史に残る逸品ではありますね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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