F1ドライバーの小林可夢偉選手が、86に試乗したインプレッションを語っている動画です。私はこれまで86をいろいろ取材してきているんですが、残念ながらまだ乗ってはいないので、このインプレッションから86の乗り味を想像してみたいと思います。
可夢偉選手やはりまずハンドリング性能を高く評価していますね。ハッキリ言ってスペシャルな機構があるわけではない86ですが、最大の特徴でありアドバンテージである部分は、水平対向4気筒をフロントミッドシップに積むというレイアウトだと私は思います。そんなクルマ、他にないですからね。
水平対向4気筒エンジンって、単体で見るとビックリするくらい短くて低いんです。それをホイールベースの中に収めるんだから、きっとハンドリングもキビキビしていいんだろうなぁ、と想像できます。ある意味スポーツカーにとっては理想的なパワーユニットの形式といえるかもしれません。
興味深いのは「グリップ自体はそんなに高くないんですが」といっていることです。“スポーツする”っていうことは、ある意味、性能の限界ぎりぎりを引き出して楽しむことですよね。その限界レベルがあまりにも高いと、一般ドライバーは扱いきれないし、無理して引き出そうとすると危険な状況になってしまうこともありえます。でもグリップ限界が適度なところにあれば、だれでも性能の限界ぎりぎりを楽しみやすい。
他のスポーツだって、誰もがオリンピックやW杯を目指さなくてもいいわけで、ハーフマラソンや草サッカーを楽しんだっていいわけです。それと同じように、“等身大のスポーツ”を楽しめるのが86なんじゃないでしょうか。しかも可夢偉選手は「その、グリップが高くないぶん、バランスがよくて……」と語っています。数字では表現できないクルマの魅力が詰め込まれているのが86なんじゃないかなぁ、と思います。
さて、ここまではノーマルの話です。可夢偉選手もそのコメントの中で少しふれているし、私も15年以上チューニング雑誌で仕事をしているライターなので、チューニングに関しても予想してみましょう。
「グリップが高くない」というのはあくまでもノーマルの話。そんなものいまどきハイグリップタイヤを履けば飛躍的に上げることができます。その代わりバランスが崩れるので、サスペンションやらLSDやらでうまくセッティングをとりなおしてやらないといけませんが。また、今後エンジンパワーを上げるターボキットやスーパーチャージャーキットも発売されるでしょう。そのときに活きてくるのが86ならではの低重心のはずです。なぜなら、これは他のどんなFR車もマネできない基本特性だからです。
さらにサスペンションには現代の技術が活かされているので、ひと昔前のFRスポーツカーより設計も優れているはず。そこを活かせば、サーキットでFR最速のチューニングカーを目指すことだって十分可能なんじゃないでしょうか。
「数字で表現できない魅力」なんていうのはノーマルの話。86のチューニングカーだったら、サーキットのタイムで結果を出せるクルマだって作れるんじゃないかと思います。
なお動画は3月までの掲載になるようです。
[youtube width=”620″ height=”511″]http://www.youtube.com/watch?v=8UB3vlzVB8c
(まめ蔵)