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■インテリアの演出や高い静粛性など細部にわたってエレガントさを追求
シトロエンから独立したDSブランドは、パリ生まれのカーブランドです。
ファションの中心地であるパリで生まれたDSのクルマづくりには、フランスの美学「サヴォアフェール(匠の技)」、高品質な素材、オートクチュールによるエレガントな仕上げが凝縮されています。
したがってDSブランドはどのモデルも個性的で、こだわり抜いたデザイン、これまでになかったクルマを作り出す喜びがあふれています。
今回はそのDSブランドのコンパクトSUV・DS3クロスバックに1.5L直列4気筒ディーゼルターボエンジンが追加されましたので、試乗インプレッションを紹介します。
●DS3クロスバックにディーゼルを追加
2019年6月に日本市場に導入されたDS3クロスバックは、1.2L直列3気筒ガソリンターボ+8速ATというパワートレインのみでした。
2020年7月には、最高出力136ps・最大トルク260Nmを発生するモーターを搭載し、満充電時の走行可能距離JC08モードで398kmを達成したBEVのE-TENSEを追加。
そして2022年5月には、今回試乗することができた最高出力130ps・最大トルク300Nmを発生する1.5L直列4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載したモデルが追加されています。
DS3クロスバックのボディサイズは、全長4,120mm×全幅1,790mm×全高1,550mmで、都市部や集合住宅の立体駐車場に対応した優れたパッケージングが特徴です。
コンパクトなボディながら、大人4人がゆったりと過ごせる居住空間と、リアシート使用時の容量が350L、リアシートをすべて倒すと最大1,050Lまで拡大するラゲッジスペースを確保しています。
1.5Lディーゼルターボエンジンは、最上級グレードのオペラにのみ設定されています。このグレードは、シート表皮やダッシュボード、ドアトリムに高級なナッパレザーを使用しているのが特徴です。
運転支援システムは、衝突被害軽減ブレーキのアクティブセーフティブレーキをはじめ、レーンキープアシスト、アクティブクルーズコントロール。さらにトラフィックジャムアシストなど、9つの機能が標準装備となっています。
外観は、特徴的なシャークフィンのBピラーを採用し、走行時は格納されるリトラクタブルドアハンドル。そしてウェザーストリップの見えないクリーンなグラスエリアなど、美しさを追求しています。
インテリアは、ダッシュボードとドアトリムには、パティーヌ(ムラ染)に仕上げられたアートフィニッシュレザーが張られ、さらにパールトップステッチという伝統技法があしらわれています。その雰囲気は、実用性重視のコンパクトSUVでは味わえない質感の高さを誇ります。
インテリアの質感の高さを最も表しているのが、シートなどに使用された高級素材のナッパレザーです。
コンパクトSUVでは滅多に使われることのない素材です。しかし、DS3クロスバックは惜しげもなく使用することで、エレガントさを表現して、小さな高級車を演出しています。
同時期に、同じ1.5Lディーゼルターボエンジンを搭載したプジョー2008にも試乗していますが、DS3クロスバックのほうがディーゼルエンジン特有の音と振動を制振材を採用し抑えることで、質感の高さを演出しています。
●ディーゼルのネガな部分がすべて解消された、高級BセグSUV
ディーゼルエンジンの経済性は魅力だけれど、騒音と振動で避けていた、という人も多いでしょう。しかし、ディーゼルエンジンのネガな部分を、DS3クロスバックは見事に打ち消しています。
コンパクトSUVながら、DS3オペラBlue HDiの車両本体価格507万円は、決して安いとは言えません。しかし、このDS3クロスバックは、自宅が集合住宅のため立体駐車場に対応したサイズじゃないと困るという人や、1人か2人でしか乗らないから Cセグメントのような大きさは必要ないけれども、高級車からの乗り替えで豪華さは欲しいという、違いのわかる人にはオススメのモデルです。
DSブランドは、立ち上がってから日が浅いブランド。そのため、まだブランドの哲学などを理解している人は少ないかもしれません。
しかし、DS3クロスバックに乗ってみると、プジョー2008と同じシャシー、パワートレインを使用しているにも関わらず、上質さをしっかりと表現できるというのは、DSブランドのこだわりを感じられます。また、所有することで「良いクルマを買った」という高い満足感も得られることでしょう。
DS3クロスバックは、クルマはボディが大きな方が高級という、これまでの概念を変えるだけの魅力を持ったコンパクトSUVと言える実力を持ったクルマです。また、ガソリン、ディーゼル、BEVからユーザーの使い方に合わせてパワートレインを選べることも魅力と言えます。
(文・写真:萩原 文博)