マツダ「RX-8ハイドロジェンRE」公道試験を開始。水素でもガソリンでも走れるロータリー搭載車【今日は何の日?10月27日】

■デュアルフューエルシステム搭載RX-8の実走行試験

2004(平成16)年10月27日、マツダは、当時世界唯一のロータリーモデル「RX-8」にデュアルフューエル(ガソリン&水素)システムを搭載した、「RX-8ハイドロジェンRE」の公道試験を開始することを発表しました。

実車の公道試験によって各種データを取得して、実用化を目指すのが狙いです。

「マツダRX-8ハイドロジェンRE」公道走行試験を開始
「マツダRX-8ハイドロジェンRE」公道走行試験を開始

●最後のロータリーモデルとなったRX-8

ロータリーエンジンを世界で初めて量産化したマツダ、そのマツダが初めて市場にロータリー搭載車を放ったのは、1967年にデビューした「コスモスポーツ」です。以降、高性能のロータリーモデルを次々と市場に投入しましたが、排ガス規制対応や市場の燃費志向の影響で、徐々にロータリーモデルは敬遠され数を減らします。

2003年にデビューした最後のロータリー車RX-8
2003年にデビューした最後のロータリー車RX-8

RX-8は、2003年にBピラーレスの観音開きの4ドアの4人乗車の新しいスポーツカーとしてデビュー。

RENESIS(13B654cc×ローター)ロータリーエンジンを搭載して、全域で高性能を発揮するシーケンシャルダイナミックエアインテークシステム(D-DAIS)を採用、NA(自然吸気)ながら最高出力250PSを誇りました。

しかし、スポーツカー市場の収縮とともに2012年に生産を終え、結果として現状ではロータリー最後のモデルとなったのです。

●RX-8水素ハイドロジェンREは公道試験を経て、リース販売を開始

EX-8搭載の新型ロータリーエンジン「RENESIS」
RX-8搭載の新型ロータリーエンジン「RENESIS」

RX-8をベースにしたハイドロジェンREは、RENESISロータリーエンジンの通常のガソリン噴射に加えて、1ローターにつき2本のガスインジェクターを装着して水素を直接噴射。ガソリンでも水素でも走行可能で、運転席のスイッチで燃料を切り替えることができます。

110L(35MPa)の高圧水素タンクと61Lのガソリンタンクを搭載し、水素使用時の最高出力は109PS、ガソリン使用時は210PS、また航続距離は水素使用時100km、ガソリンでは549kmを達成しました。

「マツダRX-8ハイドロジェンRE」公道走行試験を開始
「マツダRX-8ハイドロジェンRE」公道走行試験を開始

デュアルフューエルシステムは、CO2排出量ゼロの水素エンジンとガソリンロータリーエンジン特有の力強い走りを両立させ、水素の充填ができない環境下でも、ガソリンで走れることが大きなメリットです。

RX-8ハイドロジェンREは、2004年に国土交通大臣の認定を受けて、10月のこの日から公道試験を開始し、2006年にはエネルギー関連企業や広島県など、地方公共団体へのリース販売を始めました。

●カーボンニュートラルの有力候補として水素エンジンが浮上

昨年2021年11月13日、トヨタ、スバル、マツダ、ヤマハ発動機、川崎重工の5社が、内燃機関を活用したカーボンニュートラルの取り組みを発表。その席上で、水素エンジンでのレース参戦、二輪車での水素エンジンの取り組みを発表し、またヤマハの5リッターV8水素エンジンが披露されて大きな注目を集めました。

ヤマハ 5リッターV8水素エンジン
ヤマハ 5リッターV8水素エンジン

水素エンジンが注目され始めた理由は、水素エンジンがCO2を発生しないカーボンニュートラルエンジンである、燃料電池FCVより安価である、EVだけではカーボンニュートラルの実現は困難であり水素エンジンや合成燃料、バイオ燃料などを使う内燃機関活用が必須であることなどです。

水素エンジンは、プレイグ(早期着火)が発生しやすく出力が低下しやすいなどの技術的な課題がありますが、何よりも最大の課題は、FCVと同様に水素インフラの整備ができていないことです。

BMWは2007年に、デュアルフューエルの水素エンジン搭載車「ハイドロジェン7」を市販化しましたが、その販売台数は100台レベルでインフラが大きな障壁となっています。


2022年の今年6月、トヨタは水素エンジン車の市販化を発表しました。カーボンニュートラルには、EV一辺倒でなく、水素エンジンや合成燃料、バイオ燃料の利用など、内燃機関も含めた全方位の対応が必要と思われます。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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