スキー場の近くを自由に走りまわれたオールシーズンタイヤ【グッドイヤー ベクター フォーシーズンズ GEN3試乗・ウインター編】

■グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「ベクター フォーシーズンズ GEN3」を冬の氷上&雪上路面でテスト

●夏冬のタイヤ交換が必須でない地帯のドライバーへの選択肢が広がる

2008年、グッドイヤーは日本に「ベクター フォーシーズンズ」という名のオールシーズンタイヤを導入しました。

それまで日本の降雪地帯や降雪地帯に出かける人達は春夏秋の3シーズンは夏タイヤ、冬はスタッドレスタイヤというのが当たり前のタイヤチョイスで、1年中タイヤを交換しないでいいオールシーズンタイヤというのは選択肢にありませんでした。

GYベクター 全体像
手前が乗用車用のベクター フォーシーズンズ GEN3、奥がベクター フォーシーズンズ GEN3 SUV

それまでオールシーズンタイヤが存在しなかったわけではありませんが、雪道できちんと使えるオールシーズンタイヤはないに等しい状態だったのです。

ところがこの「ベクター フォーシーズンズ」は、凍結路面でなく圧雪路であれば十分にそのグリップが期待できるタイヤで、タイヤ交換がわずらわしいと感じていた人たちに歓迎されました。

とくに首都圏や中京圏、関西圏などの都市部で“雪が降るかどうかわからないが、万が一降ったときのために毎冬スタッドレスタイヤを履いている”というようなユーザーにとっては、まさに待ち焦がれたタイヤでもあったのです。

当初「ベクター フォーシーズンズ」は輸入タイヤだったのですが、需要の増大などもあり2016年には国産化され「ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド」と名前を変更します。

●乗用車用「GEN3」への進化で雪道の状況次第でグリップも十分に向上

歴代ベクター
グッドイヤーは世界で初めてオールシーズンタイヤを市販したメーカー。写真中央は初代のベクター
ベクターフォーシーズンズGEN3
最新のオールシーズンタイヤ、ベクター フォーシーズンズ GEN3

このタイミングでの進化はわずかなものだったのですが、2022年には新たに「ベクター フォーシーズンズ GEN3(以下、乗用車用「GEN3」)」というニューモデルに生まれ変わりました。

GEN3とはジェネレーション3、つまり第三世代です。日本に「ベクター フォーシーズンズ」が導入されたあとに欧州では第二世代の「ベクター フォーシーズンズ」が発売になっていたのですが、日本では「ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド」として国産化が進んでいたことなどもあり、日本市場では第一世代の「ベクター フォーシーズンズ」を継続し、2022年に一世代飛ばして第三世代となる乗用車用「GEN3」が登場したというわけです。

日本グッドイヤーは、乗用車用「GEN3」に相当期待があるのでしょう。冬と夏の2回、試乗会を行いました。

まず冬のレポートとして、2022年2月に長野県の女神湖にて、凍結した湖上とその周辺道路の圧雪路で行われた試乗テストをお届けします。

マツダ3を使って先代モデルとなる「ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド」と乗用車用「GEN3」を凍結湖上で乗り比べます。凍結湖上といっても、ツルツルの氷盤路ではなく、雪が乗った圧雪状態で勾配がないフラットなコースです。

GEN3 雪走り2
ステアリング操作に対する反応もいい

乗用車用「GEN3」の大きな特徴は「ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド」に比べてステアリングを切ってすぐにタイヤが反応することです。冬用タイヤではこれはけっこう大切な性能です。

というのも、ステアリングを切って反応が悪いと、どうしてもそこからさらにステアリングを切り増してしまいます。じつは最初の舵角で待っているとグリップを発生することも多く、切り増したことでかえってグリップが落ちることも多いのです。

もちろん過激なステアリングレスポンスは不要ですが、転舵初期の微少舵角での反応のよさはとても大切な部分で、それが改善されているのは好感触でした。

急ブレーキに関しても距離が短くなっているだけでなく、ブレーキを踏んだ瞬間のグッとした減速感が出ていることも歓迎すべき内容です。凍結路面ではすぐにABS領域に入ってしまうので、最初にどれくらいガツンと効いてくれるかが大きなポイントです。

乗用車用「GEN3」は「ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド」に比べて、このガツンがいい感じで、グリップ感があり安心してブレーキを踏み込めます。

●SUV用オールシーズンタイヤ「ベクターフォー シーズンズ GEN3 SUV」をハリアーで試乗

GEN3 SUV 雪走り
スキー場が点在する女神湖周辺でも、何の不安感もなく運転ができた

乗用車用「GEN3」にはSUVなど車重が重いクルマ用として、「ベクター フォーシーズンズ GEN3 SUV(以下、「GEN3 SUV」)」というモデルも用意されています。

この「GEN3 SUV」は、「ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド」に比べて内部構造を強くしたタイプです。実質的には従来のオールシーズンタイヤである「アシュアランス ウェザーレディ」の後継モデルといういうことになります。

GEN3 雪走り2
ステアリング操作に対する反応もいい

試乗車はトヨタ・ハリアー。公道での試乗は比較試乗ではありませんでしたが、グリップ感は十分に確認することができました。

女神湖周辺はそれなりに勾配のある部分も存在しますが、そうした坂道が上れないというようなこともなく、必要十分な印象。周囲には白樺高原国際スキー場やしらかば2in1スキー場もある土地柄なので、オールシーズンタイヤの乗用車用の「ベクター フォーシーズンズ GEN3」で訪れることが十分に可能だということになります。

ベクターフォーシーズンズGEN3サイズ一覧
ベクターフォーシーズンズGEN3サイズ一覧
ベクター フォーシーズンズ GEN3 SUVサイズ一覧
ベクター フォーシーズンズ GEN3 SUVサイズ一覧

『凍結路面では使用を控えて下さい』とのことですが、万が一のために布製チェーンなどを携帯すれば、都市圏からのスキー&スノボに出かけるといった使い方なら十分に対応できる性能を持つタイヤでしょう。多くの場合、布製チェーンの出番はないと思われます。

(文:諸星 陽一/写真:小林 和久)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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