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■手ぶらで実践テクが学べる初心者向けバイク塾
近年、バイク免許を取得する10代後半や20代の若い世代が増えています。ところが、一方で、せっかく教習所で免許を取っても、公道を走るのが怖いとか、一緒に走る仲間がいないなどの理由で、バイクに乗らなくなる層も多いといいます。
そんな若者ライダーが、公道で「安全に楽しく」バイクを乗るためのスキルを学べるのが、ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)が行っている「平成生まれ若者限定オンロードレッスン&ツーリング」です。
免許を取ったばかりでライディングに自信がなかったり、ツーリングに行きたいけれど仲間に迷惑をかけそうだと悩んでいるライダーなど、初心者を対象としたのがこのレッスン。
しかも、バイクはもちろん、ウェアなどの装具もレンタルできるので、ほぼ手ぶらで気軽に参加できます。
さらに、経験豊富なインストラクターが、参加者2名に対し1名の割合でついて、懇切丁寧に実践的テクニックを教えてくれるのもポイント。そのため、参加後に「ライディングに自信がついた」とか、「バイクの楽しさが分かった」など、多くの若者ライダーたちから大きな支持を受けてます。
では、実際に、このレッスンではどんなことを教えてくれるのでしょうか? 2022年6月18日に、神奈川県の大磯ロングビーチ第1駐車場で2022年一発目が開催されたので、現場に潜入してみました。
●楽しく安全に公道を走る技が学べる
「平成生まれ若者限定オンロードレッスン&ツーリング」は、ヤマハが全世界で展開するユーザー向け安全普及活動「YRA(ヤマハ・ライディング・アカデミー)」のなかでも、バイク初心者やリターンライダーなどに向けた「大人のバイクレッスン」に属するコンテンツのひとつです。
2015年から現在の形態で行っている大人のバイクレッスンは、オンロードとオフロードのコースがあり、さらにオンロードでは、クローズドコースで終日スキルを学ぶものと、今回のように公道のミニツーリングがセットになったものがあります。
また、今回は若者限定ですが、ほかにもリターンライダーなども参加できる限定なしや女性限定などもあり、さまざまなユーザー層に向けたレッスンを展開しています。
大きな特徴は、バイクがレンタルできること。乗れるバイクはコース内容により違いますが、今回は、250cc単気筒エンジンを搭載する「トリッカー」が用意されました。
また、ウェアやプロテクターなどの安全に走るための装具も借りられることで、ほぼ手ぶらで参加できます。さらに、参加費は込み込み8000円。この手のレッスンとしては、かなりリーズナブルな点も人気の理由です。
ちなみに、今回参加者が乗るトリッカーは、オフロードから街乗りまで快適に走れるトレールモデル「セロー250」の兄弟車。
フレームやエンジンを共用としながら、BMX感覚で乗れるバイクをコンセプトにしたトリッカーでは、セローの前21/後18インチホイールに対し、前19/後16インチのホイールを装備。セロー以上にコンパクトな車体や、低速域から扱いやすいパワー特性などで、初心者でもかなり乗りやすいモデルだといえます。
なお、セローとトリッカーは、どちらも現在は生産終了となっていますが、根強いファンなどには、かなり残念に思っている人も多いでしょうね。
●公道走行に自信がない初心者も多い
今回のレッスンに参加した若者ライダーは男女計14名(当日欠席1名)。定員は15名ですから、ほぼ満員です。最も若い人で19歳、最年長でも31歳で、ほとんどが2022年や2021年に普通二輪免許や大型二輪免許を取得したばかりの人です。
また、免許は取ったけれど、公道を走ったことがない人も2名いたほか、公道を走ることに自信がない人や、そもそもバイクを持っていない人も約半数ほどいました。
ちなみに、バイクの場合、教習所で免許を取得する際、4輪車のように公道を走る路上教習はありません。そして、バイクの公道未経験者には、4輪車の運転免許を持っていない人もいて、クルマでもバイクでも、そもそも公道を走った経験自体が皆無というケースもあります。今回も、そうした理由で、なかなかバイクで公道を走る勇気が出ないといった人もいました。
ヤマハによれば、「平成生まれ若者限定」コースを設定した理由は、まず、こうしたレッスンでは「ベテランライダーなど上手い人ばかり参加しているのでは」といったイメージも強く、初心者の中には「参加しづらい」と思う人も多いからだとか。
また参加者を若い世代に絞れば、バイクの知識や経験値などが近かったり、ライディングに関し同じような悩みを持つ人が集まることで、親近感もわきやすいのです。
さらに、このレッスンを通してバイク仲間ができる可能性もあるなど、前述したような若いライダーの問題をできるだけクリアにし、より多くの人に参加してもらうことが目的だといいます。
しかも、インストラクターは、今回の参加者14名に対し9名。前述の通り、ほぼ2名に1名の割合でつくため、グループレッスンにありがちな「偏り」がほぼないといえるのも、ヤマハのライディング講習にしかない特徴です。
●ポジションは前に座り「くるぶし」も使う
あいにくの曇天ながら、早速レッスンがスタート。全員がヘルメットやグローブを着用し、バイクの前に集合。まずは、ライディングポジションについてのレクチャーです。
乗車時は必ず後方確認、フロントブレーキを握って乗車し、またがったらリヤブレーキを踏むなど、バイク乗車時の基本操作をおさらいしたところで、インストラクターから基本的なポジションについて教わります。それによると、主なポイントは以下の3つです。
1. シートの前に座る
2. ニーグリップと「くるぶし」ホールド
3. 腕はハの字
1.は、シート後方に座ってしまうと、ハンドルからの距離が遠くなり、走行中にレバー類やハンドルなどの操作がやりにくくなるためです。特に小柄なライダーの場合は、窮屈にならない程度で、できるだけ前に座る方がいいようです。
2.は、燃料タンクを両ヒザで挟むニーグリップは、両足のくるぶしも車体で挟むようにするとやりやすくなるということです。バイクでスムーズに走るには、車体を下半身でホールドし、上半身には力を入れないことが基本で、ニーグリップはそのためにやりますが、夢中で走っていると、ついついヒザが開いたりしがち。そこで、くるぶしホールドを意識していれば、ニーグリップを忘れることが少なくなるのです。
3.は、ハンドルを持つ時には、腕の脇をやや開いて曲げて、八の字に見えるようにするということです。これは、脇を締めてしまうと、ハンドルを曲げる時に腕が上半身に当たり、操作がしずらくなるため。また、こうすることで、ハンドルに力を入れず、自然な操作がやりやすくなるといいます。
●スムーズな発進はクラッチ操作が重要
基本の乗車姿勢やポジションなどを学んだ後は、スムーズな発進。特に、クラッチを繋ぐためのミートポイントについては、発進時にエンストしないようなスムーズな操作ができるよう何度も練習します。
また、発進後にスムーズな加速をするためには、シフトアップのタイミングも重要。トリッカーは5速シフトですが、1速から2速、3速など、どのシフトでもエンジンが力強くパワーを発揮する回転域を使えるように訓練します。
実は、これって、クローズドの練習コースだけでなく、公道を安全でスムーズに走るためにも重要なファクターです。特に、公道を走ったことがない人は、前後のクルマなど交通の流れにのるという経験もなく、発進や走行中にもたつくと危険ですらあります。
つまり、こうした練習は、基礎であると共に、実践的でもあるということですね。
●ブレーキングでは「3つのブレーキ」を使う
バイクに限らず、公道を安全に走るには「減速」や「止まる」ことも非常に大切。お次は、ブレーキングを練習します。
ほとんどの車両がAT仕様である4輪車の場合は、ブレーキペダルを踏めば減速や停止ができます。一方で、バイクの場合は、ご存じの通り、スクーターなど一部のモデルを除き、前ブレーキは右ハンドルのレバー、後ブレーキは右のフットペダルを操作しますから、より操作が大変。
さらに、MT車であれば、シフトダウンをしてエンジンブレーキも使うことで、より短い距離で停車が可能となりますが、シフトダウンやその後にクラッチを繋ぐ操作も、前後ブレーキをかける操作に合わせて行う必要があります。
レッスンでは、こうした前後ブレーキとエンジンブレーキという、3つのブレーキを上手く使う練習を行います。方法は、まず3速・40km/hまで加速し、目印のパイロンの位置でブレーキング開始。できるだけ10mくらいの制動距離で完全停止できる練習を繰り返します。
ここで大切なのが、前後ブレーキの操作に加え、シフトダウンしてうまくクラッチを繋ぐことでエンジンブレーキをスムーズに効かせること。
参加者の中には、クラッチを繋ぐ際に、レバーをぱっと急に離してしまい、エンジンブレーキが強く効きすぎて、リヤタイヤが白煙を上げてロックした人も。クラッチの繋ぎ方をもう少しゆっくりやる必要があったようです。
また、逆に、シフトダウンを忘れ、高いギアのまま前後ブレーキだけで減速したため、低速時にガタガタとエンストしそうになった人もいました。
ほかにも、ブレーキング時にメーターなど下を見てしまったことで、走行ラインがずれたり、停止位置がなかり先になってしまった人もいて、インストラクターからしっかり前方を見るようにアドバイスを受けていました。
●若いライダーは上達が早い
レッスンでは、ほかにも、スムーズなカーブの曲がり方や、Uターンの上手な方法などの講習がありましたが、いずれも、実践的な内容ばかりです。
しかも、インストラクターが、参加者1人1人に、その人の乗り方や操作に応じたアドバイスを行っていたこともあり、ほとんどのライダーたちがメキメキと上達。
午後には、当日コース内で学んだことをおさらいする総合練習もありましたが、その頃になるとかなりスムーズな走りができるライダーがかなり増えた印象でした。
インストラクターによれば、「若いライダーは、教習所で学んでからあまり日数が経っておらず、体が覚えているせいか、公道未経験者などでも上達するのが早い人が多い」のだとか。
特に、バイクは体を使って走る乗り物ですから、若い分、のみ込みも早いんでしょうね(うらやましい)。
●公道ツーリングもマンツーマン
レッスンのラストは、公道でのミニツーリング。今回は、4組に分かれ、集団で走るマス・ツーリングを実施します。
事前に安全な隊列の組み方や、信号で停車する場合の注意点などについてレクチャーがあった後、いよいよ出発です。片道16km程度、約30分のコースをインストラクターが先導して走行します。
今回の組み分けでは、主に1組5名程度の人数で走りましたが、特に、公道にあまり自信がない女性ライダー1名には、インストラクター1名がついてマンツーマンで走行。
ツーリングの場合、人数が多いと、ほかのライダーに合わせる必要もあるので、経験がないと意外に大変。自信がないライダーには、2名1組の方が走りやすいですよね。
このレッスンは、先述のように、インストラクターの数が参加者に対し十分にいることで、こうした対応も可能なのです。
●バイクで走ることに自信が出た人も
全員が無事にバイクの小旅行を楽しみながら帰還し、レッスンは終了。最後は、参加者全員がバイクに対する自分の夢をスケッチブックに書いて発表するトークタイムもありました。
多かったのが、「日本一周」「北海道」「東北」「温泉」などのツーリングをやりたい人たち。バイクの旅はやはり憬れのようです。
また、なかには「コンパクトに左折できるようになりたい」などスキルをさらに磨きたい人や、「無事故 無違反」といった安全運転に関する想いを書いた人など、各参加者がさまざまな思いを綴っていました。
全レッスンの修了後に、何人かの参加者にも話を聞きましたが、特に印象的だったのが、今年免許を取ったばかりで、今回が「初めての公道走行」だった1名の女性ライダー。
今回レッスンで乗ったトリッカーが買いたいという彼女にとって、「バイクで一番怖いのが事故」。参加前は、そうした恐怖心や公道走行に自信がないことで、なかなか公道デビューを果たせなかったといいます。
一方、参加後は、自分のライディングに自信がついたことで、「公道に出よう」という勇気が湧いたそうです。
トリッカーは、前述のように、現在は生産終了で新車は買えませんが、中古車で「いい相棒」が早く見つかるといいですね。
なお、ヤマハ「大人のバイクレッスン」について詳しく知りたいとか興味を持った人は、公式ホームページへアクセスしてみて下さい。
(文:平塚 直樹/写真:平塚 直樹、小林 和久)
【関連リンク】
ヤマハ「大人のバイクレッスン」公式ホームページ
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/yra/otona/