東北新幹線の現在・過去・未来。開業40周年を迎えた東北新幹線は今後どう進化する?

■3番目の新幹線として誕生した東北新幹線

東北新幹線E5系
東北新幹線の主力として活躍しているE5系

東北新幹線は1982年6月23日の開業から2022年で40周年を迎えました。国鉄時代に東海道・山陽新幹線に続く3番目の新幹線として開業した東北新幹線。その40年を軽く振り返ってみたいと思います。

●全線開通まで28年

東北新幹線は東京〜新青森間674.9kmの路線で、新幹線では最長距離の路線です。

最初に建設工事が始まったのは東京〜盛岡間でしたが、東京〜大宮間は沿線住民の反対運動が激しかったため建設開始が遅れました。そのため1982年6月23日に大宮〜盛岡間を暫定開業させ、「やまびこ」「あおば」の運転を開始。2年9ヵ月後の1985年3月15日に上野〜大宮間を開業させました。

東北新幹線
東北新幹線は1982年に開業しました

1987年3月31日で国鉄は分割民営化され、4月1日にJR東日本が発足。東北新幹線はJR東日本を代表する路線となりました。そして1991年6月20日に東京〜上野間が開業しました。

なお、国鉄時代は東海道新幹線と直通運転が計画されていて、東京駅の配線も直通を考慮していましたが、東海道新幹線と東北新幹線の線路は現在に至るまで繋がっていません。

盛岡から青森市に至る区間は、国鉄の経営が悪化したことを受けて1982年9月に建設を一旦凍結しました。しかし、1987年1月に凍結を解除。

この区間のルート決定は紆余曲折があり、盛岡〜沼宮内間と八戸〜青森間は在来線の線路幅を新幹線と同じ1435mmにして小型車体の新幹線車両を直通させる「ミニ新幹線」、沼宮内〜八戸間は新幹線の線路を建設する「ミニ新幹線・フル規格新幹線混在案」として盛岡〜八戸間が着工しました。しかし、1995年に盛岡〜八戸間が全区間フル規格に変更。1998年に八戸以北もフル規格新幹線で建設し、ルートも八戸〜新青森間に決定しました。

こうして2002年12月1日に盛岡〜八戸間が開業。その8年後の2010年12月5日に八戸〜新青森間が開業し、大宮〜盛岡間の開業から28年を経て東北新幹線が全通しました。

新青森駅開業
新青森駅開業当日の東北新幹線

東北新幹線は東北地方を南北に縦断する大動脈ですが、福島からは山形新幹線が分岐して山形・新庄まで運行するほか、盛岡からは秋田新幹線が分岐して秋田まで運行しています。

さらに、終点の新青森からは北海道新幹線が新函館北斗まで運行していて、それぞれ東北新幹線と直通。東北新幹線は東北・北海道エリアの大動脈としての役割を果たしています。

●最高速度は31年間で210km/hから320km/hへとアップ

東北新幹線が開業した時の最高速度は、東海道・山陽新幹線と同じ210km/hでした。しかし、山陽新幹線以降の新幹線は設計最高速度260km/hで建設していたこと、東北新幹線200系はパワーに余裕があり、車両および地上設備の騒音対策を強化すればスピードアップは容易だと判断されました。

そして1985年3月14日の上野〜大宮間の開業に合わせて、東北新幹線の最高速度を240km/hに引き上げて、新幹線で最速(当時)となりました。なお、最高速度240km/h運転をしたのは大宮〜盛岡間で、東京〜大宮間は急カーブ区間があることから最高速度を110km/hに制限していました。

その後、1990年に上越新幹線上毛高原〜浦佐間の一部列車で275km/h運転を開始して、東北新幹線は最速の座を譲りました。続いて、1992〜1993年には東海道・山陽新幹線でも270km/h運転を開始しました。

東北新幹線が宇都宮〜盛岡間の最高速度を240km/hから275km/hに引き上げたのは1997年3月22日のことで、上越新幹線から遅れること7年後でした。しかし、同日に山陽新幹線が500系で300km/h運転を開始したので、東北新幹線は最速とはなりませんでした。

「はやて」
東北新幹線で275km/h運転をするE2系「はやて」

2000年代に入るとJR東日本は東北新幹線の最高速度を360km/hに引き上げるための速度向上試験をE2系で開始。さらに試験車両のFASTEHC360による試験走行を行いました。試験の結果、フル規格のFASTECH360Sの後部にミニ新幹線のFASTECH360Zを連結した編成でトンネル内を360km/h運転をすると、ミニ新幹線の振動が基準値を超えることが判明。そのため、最高速度を320km/hに決定してE5系とE6系を導入しました。

東北新幹線E5系
2011年から東北新幹線が最速の路線となりました

2011年3月5日にE5系「はやぶさ」が宇都宮〜盛岡間で最高速度300km/h運転を開始して、最高速度で山陽新幹線に並びました。そして2013年3月16日にE5系「はやぶさ」の最高速度を320km/hに引き上げて、新幹線最速の座を奪取。開業から31年で最高速度は110km/hもアップし、以来新幹線最速の座を守っています。なお「はやぶさ」は大宮〜宇都宮間の最高速度も240km/hから275km/hに引き上げています。

●40年間で変化した車両と列車

東北新幹線が開業した時に導入されたのは団子鼻の200系で、「緑の疾風」とも呼ばれていました。列車は速達タイプの「やまびこ」と各駅停車タイプの「あおば」が設定されました。前述の通り最高速度は開業時の210km/hから240km/hに引き上げられています。

200系は、シャークノーズの先頭車や2階建て車両も加わって賑やかになりました。1992年7月1日からは山形新幹線「つばさ」との連結運転も開始。1997年3月22日からは秋田新幹線「こまち」とも連結運転をしました。

一方、1990年代には東北新幹線の通勤需要が増加したため、1995年には東京〜那須塩原間を運行する「なすの」を新設。その一方で1997年3月に「あおば」が「やまびこ」に統合されて消滅しました。「あおば」は上越新幹線「とき」と共に新幹線で初めて消えた列車名となりました。「とき」は5年後の2002年に復活していますが「あおば」は復活していません。

そんな200系でしたが、後継車の登場によって徐々に数を減らしていき、2012年に東北新幹線から完全撤退。上越新幹線に残った車両が最後の活躍をしました。

「緑の疾風」と呼ばれた初代東北新幹線車両200系
「緑の疾風」と呼ばれた初代車両200系

JR東日本は通勤需要対策として、オール2階建て新幹線E1系Maxを導入。1994年7月15日から「Maxやまびこ」「Maxあおば」の運転を開始しました。1995年に「Maxなすの」も運行を開始。一方、1997年には「Maxあおば」が姿を消しました。

E1系は12両編成で、大量輸送能力を閑散期に持て余したため、1997年にオール2階建て8両編成のE4系Max II世を投入しました。E4系は2編成を連結した16両編成で運転することができるほか、山形新幹線「つばさ」を連結することもできました。特に16両編成は高速鉄道としては世界最大の定員1334人を誇っていました。

E1系はE4系に置き換えられて1999年に東北新幹線から撤退して、上越新幹線専用となりました。2003〜2005年にリニューアルしてカラーリングも一新しましたが、2012年に引退。現在は鉄道博物館に保存されています。

E1系
E1系は鉄道博物館で保存されています

E4系は引き続き東北新幹線で活躍しましたが、E5系・E6系の最高速度320km/h運転が始まると、E4系の240km/hという最高速度が足かせとなり、2012年で東北新幹線から撤退して上越新幹線専用となり、E1系と同じ運命を辿っています。

山形新幹線「つばさ」を従えて走るE4系Max II世
山形新幹線「つばさ」を従えて走るE4系Max II世

1997年3月22日には、最高速度275km/h運転に対応したE2系が登場して「やまびこ」「なすの」に投入。200系に代わる東北新幹線の標準車両となりました。また、「やまびこ」の一部は秋田新幹線「こまち」と連結運転を行いました。

2002年12月1日には東北新幹線盛岡〜八戸間の延伸開業に合わせて「はやて」の運転を開始。「はやて」は全列車が宇都宮〜盛岡間で275km/h運転を実施するため、E2系が増備されました。E2系は2010年12月5日には新青森まで到達。

E2系
東北新幹線の高速化に一役買ったE2系

しかし、後継車E5系の登場で活躍の範囲を狭めて、「こまち」との連結運転も解消。現在定期列車では東京〜仙台間の運用となっています。一方E4系に代わって「つばさ」との連結運転を行っています。

現在もE2系の引退は進んでいて、数年後には姿を消すと思われます。

現在の主力であるE5系は最高速度320km/hに対応した車両で、2010年3月5日の「はやぶさ」でデビューしました。JR北海道には同型車のH5系が在籍しています。

E5系の投入は現在も続いていて、E2系を完全に置き換える計画です。

E5系
「緑の疾風」の再来とも言えるE5系

山形・秋田新幹線でも世代交代が進み、2010年に山形新幹線400系が引退し、2013年に秋田新幹線E3系0番台が撤退しています。E3系0番台の一部は東北新幹線で活躍しましたが、2021年に引退しました。

●東北新幹線の今後は?

開業40周年を迎えた東北新幹線。2022年は鉄道開業150周年という節目の年でもあり、JR東日本はE2系に200系のカラーリングを塗装した「200系カラー新幹線」の運行を開始しています。

200系カラー新幹線
6月に登場した「200系カラー新幹線」

6月25日には「懐かしのあおば号」を仙台〜上野間で運転しました。

東北新幹線には現在もE5系の導入が続いており、E2系を完全に置き換える計画です。また、2024年度には山形新幹線の新型車両E8系がデビューして、E3系を順次置き換えていきます。E8系は東北新幹線内で300km/h運転を行う予定です。

2030年度には北海道新幹線新函館北斗〜札幌間が開業し、東京〜札幌間を新幹線が直通します。その頃にはE5系の後継車も登場していると思われ、東北新幹線は更に進化していきそうです。

※2022年6月25日の記事を2023年1月26日に追記・再編集しました。

ぬまっち

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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