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■オープンカントリーA/Tが三代目に進化
トーヨータイヤのクロスカントリータイヤシリーズ「オープンカントリー」に新しくA/T-IIIというモデルが追加されました。その実力を愛知県のオフロードコース「さなげアドベンチャーフィールド」で試しました。
●力強い顔付き(トレッドデザイン)のA/Tタイヤ
A/Tというのはオール・ティレーンという意味です。クロスカントリー用のタイヤは、泥ねい路にあわせてセッティングしたM/T(マッド・ティレーン)や、高速道路にあわせてセッティングしているH/T(ハイウェイ・ティレーン)などがあります。
A/Tはさまざまな路面に対応するタイヤという位置付けですが、一方で泥ねい路や岩などでは弱いという印象となりがちです。
A/Tタイヤを装着するユーザーは舗装路メインで使うユーザーです。SUVを普段使いしている人がヘビーデューティなM/Tタイヤを装着してしまうと、乗り心地や燃費の面でデメリットがあるので、普段使いするSUVにはA/Tタイヤがマッチします。
従来、A/Tタイヤは乗用車タイヤのようなおとなしいトレッドデザインが多かったのですが、この「オープンカントリー A/T-III」はクロカンタイヤらしい顔付きとなっているのも大きな特徴といえます。
今回、A/Tタイヤにもかかわらず、オフロードコースで試乗会を行ったというのはかなりの自信の表れとも言えます。
試乗車はトヨタ・ハイラックスとトヨタ・ランドクルーザー。前日の雨もあり、試乗コースはところどころ濡れた状態で、クロカンタイヤを試すにはピッタリのシチュエーションでした。
●M/Tタイヤかと思わせるほどのトラクション性能の高さ
下り勾配20度のマッド路面をヒルディセントコントロールを使って3km/h程度で下ると、しっかり路面をつかんでいることが確認できます。
ヒルディセントコントロールはクルマ側がブレーキを自動で効かせて速度を一定にしてくれる装置ですが、タイヤがグリップしなければ速度調整はできず、滑り落ちてしまいます。
試乗時、ブレーキが効いた瞬間にちょっとだけ滑るのですが、その後はすぐにグリップを回復します。エンジンの出力や駆動方式に影響されづらい下りでは、タイヤの性能があらわになります。車重が2tを大幅に超えるランドクルーザーをグッと押さえるグリップには感心させられました。
同程度の上り勾配も試しました。アプローチ手前には水たまりがあり、タイヤに水をタップリと含ませてからのトライですが、これもどうってことなく上っていきます。
ハイラックスでアクセルを強めに踏んでみたところ、ズルッとすべりましたが、アクセルを戻せばすぐにグリップが回復します。こうしたグリップの回復のさせ方も上手な部分という印象でした。
少しスピードが上げられるセクションでは強めの加速をしましたが、しっかりとトラクションが掛かりますし、ブレーキもグッと踏ん張って効いてくれます。砂利が浮いている上り坂でもトラクション性能のダウンは感じません。
ハンドルの切れ角が大きなコーナーでも、しっかりとグリップしてくれます。クロカンタイヤはこうした急角度のグリップがとても大切です。オフロードコースでは切り返しができない場所もあり、一発でクリアして行かなければならないことも多いからです。
また、タイヤに角度をつけて動くときはトレッドに入り込んだ泥や石を吐き出す絶好のチャンスでもあります。この状態でグリップしてくれないと排土作業が行えません。
クローズドの短いコースででも、オフロードでの高い性能はしっかりと確認できました。
今回はオフロードでの試乗となりましたが「オープンカントリーA/T-III」にはシビアスノー要件を満たしている証明であるスノーフレークマークも刻印されています。
つまり「オープンカントリーA/T-III」は、雪道からマッド、ロック、舗装路までをカバーするタイヤ。まさにオールティレーン、マルチティレーンのタイヤに仕上げられているという印象でした。
(文:諸星 陽一/写真:諸星 陽一、トーヨータイヤ)