■奇跡のイベントロードスターミーティングの軌跡
毎年、5月の最終日曜日に開催されてきた「ロードスター軽井沢ミーティング」。参加したことのある、見たことのある人なら、日本にこんなたくさんのロードスターがいるんだ、っていう驚きと、日本車を愛する人がこんなにいるんだという喜びを感じたのではないでしょうか。
そんなロードスターミーティングですが、2022年も無事に開催されます。そして今回は30回目となる節目に当たります。その前日には、毎回「前夜祭」が行われてきたのですが、このところ前年までの2年間は、コロナ禍の影響により前夜祭は開催されませんでした。まあ、ここ2年間も感染者数のちょうどピークを避けることで本番のミーティングができてきただけでもすごいことなんですが。
軽井沢ミーティングについて少しお知らせすると、その特徴はオーナー、ファンらによる自主的な自分たちのミーティングであるということです。
「オーナーズミーティングが自分たちでやるってのは当たり前でしょ」とも言えますが、2022年5月29日のミーティングは、ロードスター1410台、来場者2200名が参加する規模のイベント。これを良い季節の軽井沢で行うわけですから、個人のちょっとした思い付きで集まりました、というわけにいかないのはおわかりいただけるでしょう。
個人的にもロードスターオーナーでないのですが、このミーティングは単一車種で集まる台数としても世界最大級であり、例えばN社の〇〇〇〇〇フェスティバル、T社の〇〇〇レーシングミーティングなどメーカー主導イベントに比べても生い立ちから稀有であり、東京オートサロンなどショップ中心から始まったスゴいものを見せるイベントともまったく異なり、その生態系を楽しみにしてほぼ毎年見に行ってきました。
さて、前夜祭に話を戻すとその内容はファンによるファンのためのものであるには間違いないのですが、メーカーであるマツダも「お手伝い」という立場で参加しているようです。
今回、軽井沢ミーティング2022前夜祭のメインとも言えたのが、言わずとしれたロードスター開発者レジェンドのお一人、貴島孝雄さんによるロードスター愛への「講義」。
詳しく説明するとめちゃくちゃ長くなるので割愛しますが、ロードスターが生まれる経緯において初代NAロードスターの開発主査である平井敏彦さんを中心にいかにしてロードスターを生み出したか、のストーリーが語られ、ロードスターのおかげで「みんなが笑顔になれる」ことへの感謝をオーナーたちとともに共有し、参加者は聴き入っていたのでした。
その他にも、ロードスターの現在のチーフエンジニアである齋藤茂樹主査を始めとした現在のNDロードスターに関わるマツダ社員も参加。
初代ロードスターにも大きく関わった初代マツダデザイン本部長である福田成徳さんがデザインしたイラストの手ぬぐいがじゃんけん大会でプレゼントされたりと、和やかな雰囲気ながらも、他ではなかなか味わえない貴重な2時間をファンたちとともに味わわせていただきました。
こうした会が催されるのも、マツダがファンとともに共存すべきとして生まれたM2の担当であった水落正典(当時はマツダ社員。現RCOJ=ロードスター・クラブ・オブ・ジャパン代表)さんによるところが大きいわけです。M2の存続をマツダが経営の影響から断念し、その意志を個人的に受け継いだ水落さんが繋げていくことで、現在に至っていると言っても間違いでないでしょう。それも、メーカーに所属したM2や水落さんでない、任意団体や個人が続けてきたからのパワーに他ならないと確信しますし、その片鱗に接することができ、イチ自動車好きとして幸せに感じます。
参加台数の増加に水落さんは(笑顔で)頭を悩ませていましたが、日本が生み出した車種で日本人や世界の人が笑顔になれる、そんなの望外の幸福であり、そんな車種は世界中他にはないのではないでしょうか。
平和をどこよりも願う広島から生まれたクルマだから起きた奇跡なのかも知れません。
(小林和久)