■ガソリンエンジン仕様と同等のキャビン、ラゲッジスペースなど遜色のない実用性を確保
三菱自動車は、2022年5月20日(金)、日産自動車と共同開発(NMKVが企画、開発)した新型軽EVの「eKクロス EV」を発表しました。
eKクロスの名が付くことからも分かるように、eKクロスシリーズに加わったEVバージョンという位置づけになります。「東京オートサロン2022」でも公開されていたとおり、エクステリアは、eKクロスとイメージを共通化しています。
バッテリーEVで気になる航続距離は、一充電あたり180km(WLTCモード)。同社の調査によると、軽自動車、コンパクトカーのユーザーの約8割が、1日あたりの走行距離が50km以下ということで、必要十分な距離としています。
充電はAC200V(14.5A)と急速充電に対応し、200Vの普通充電は約8時間、急速充電では約40分で80%まで充電が完了。
さらに、バッテリーEVが高速巡航を続けてからの充電では、充電時間の割にほとんど充電されていない場合もあります。この対策として、駆動用バッテリーにエアコン冷媒を使った冷却システムを搭載することで、高速走行と急速充電を繰り返しても高い充電量を確保できるとしています。
また、バッテリーEVならではの利点として、分厚いトルクが確保されているのも注目です。最高出力は、自主規制値の47kW(64PS)を守りながら、最大トルクは軽自動車のガソリンターボ車の2倍近い195Nmを発揮。
なお、eKクロスのターボ車は100Nm。これにより、軽自動車が抱える発進加速への不満が解消されるはずで、ストップ&ゴーの多い街中や急な山道でも力強い走りを堪能できるはず。
さらに、アクセルペダルで減速をコントロールしやすい「イノベーティブペダルオペレーション」モード、好みや状況に応じて任意で変えられる走行モードも用意されています。
「イノベーティブペダルオペレーション」モードは、いわゆるワンペダルモードで、アクセルペダルを離すと高い減速Gが得られるモードで、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み換える頻度を減らすことができます。
同モードのスイッチは、センタークラスターの好立地に配置。走行モードは、ノーマル、エコ、スポーツの3つを用意。こちらは、運転席右下のスイッチパネルに配されています。せっかくの走行モードですので、センタークラスターにあるとより視認性、操作性が高まるような気がします。
ほかにも、給電機能も備え、自宅でV2H(Vehicle to Home)機器と接続することで、駆動用バッテリーに蓄えられた電力を家庭で使用し、夜間に駆動用バッテリーを充電するなどの使い方ができるほか、災害時やアウトドアなどで電化製品を使えるメリットもあります。
また、ガソリンエンジン仕様と同様に広い車内が確保されているのも見逃せません。後席に座ると若干の上げ底感があり、後席座面のヒール段差が少し不足しているように感じます。しかし、身長171cmの筆者が運転姿勢を決めた後方には、足をゆったり伸ばせるほどの足元空間が広がります。なお、リヤシートはスライドが可能で、頭上まわりも広く、ガソリン仕様と同様に、開放感のある車内になっています。
ラゲッジスペースは、後席のスライド機構により調整できるだけでなく、背もたれを前倒しすることで容易に拡大できます。後席前倒し時は、シート部分との間に少し段差が残るものの、EVであっても実質的な実用性はあまり変わらないはず。床下には充電ケーブルが収まるスペースを用意。
操作は荷室側からも容易にできるのが美点で、ガソリンエンジン仕様と同じように使える荷室になっています。
さらに、ガソリン車と同様に、先進安全装備も採用されています。アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援機能、SOSコール付の緊急停止支援システムに加えて、同社初となる駐車支援機能の「マイパイロット パーキング」を採用。駐車可能な位置を自動で検知すると、後退、前進しての駐車、縦列駐車の3パターンに対応します。ドライバーは、スイッチ操作のみで駐車が完了します。
そのほか、コネクティビティの「MITSUBISHI CONNECT」も採用されていて、万一の際のSOSコール、駆動用バッテリーの残量やドアの開閉状況を確認できる機能、車両の駐車位置を確認できる機能などをスマホ・アプリを使って享受できます。
なお、バッテリーEVの補助金(CEV補助金)は55万円。地方自治体(自治体により有無や金額は異なります)が設定している補助金も使えれば軽ハイトワゴンのターボ車よりも安く手に入るケースもあります。
なお、CEV補助金が適用されると「G」は184万8000円、「P」は238万2600円になります。
●ボディサイズ:全長3395×全幅1475×全高1655mm
●価格
「G」:239万8000円
「P」:293万2600円
(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)