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■街を軽快に走れる俊足の100%電動スクーター
4輪車だけでなく、2輪車の世界にも徐々に波及しているカーボンニュートラルに向けた電動化の潮流。
そんな中、BMWのバイクブランド「BMWモトラッド」が2022年4月22日に国内導入したのが、新型の電動スクーター「CE04(シーイー・ゼロフォー)」です。
100%電気だけで走るこの新型モデルは、BMWが提案する新時代のシティコミューター。まるでSF映画に出てくるバイクのような近未来的デザインで注目を集める、250ccバイク相当の軽二輪スクーターです。
そんなCE04を、JAIA(日本自動車輸入組合)主催の輸入2輪車試乗会で乗ってきました!
最高出力42psを発揮、最高速度は120km/h、約130kmの航続距離を実現するという最新の電動スクーターは、一体どんな走りを披露するのか? その実力をチェックしてみました。
●ダイナミックかつスタイリッシュなデザイン
CE04は、BMWが2017年に発売した「Cエボリューション」に続く、電動スクーターの第2弾です。
大きな特徴は、先述した未来的スタイル。Cエボリューション(現在は販売終了)が一般的なビッグスクーター的フォルムを採用していたのに対し、CE04では、大型のLEDヘッドライトなどが生み出す独創的なフロントマスク、マットブラックのボディ、宙に浮いたようなフローティング型シートなどがとっても個性的。
また、全体的にロー&ロングのフォルムを採り入れることで、ダイナミックかつスタイリッシュな雰囲気を演出します。
ちなみに、ボディサイズは、全長2285mm×全幅855mm×全高1150mm (ハイウインドシールドOE装備時1315mm)。
大きさ的には400ccクラスに近いのですが、定格出力15kWの駆動用モーターを搭載するため、250ccクラスの軽二輪モデルに相当し、車検は不要。運転は普通自動二輪免許があればOKです(AT限定普通2輪免許も可)。
では、早速乗車してみましょう。シート高は800mmで、足着き性はかなり良好です。身長165cm、体重59kgの筆者の場合、片足でカカトがベッタリ地面に着き、両足を着いてもバランスを崩すようなことはほぼなさそうです。
ただし、取り回しは意外に重いですね。車両重量が231kgもあるため、駐車場などでの押し歩きはかなり苦労します。
そのためでしょうか、このバイクにはバック機構も搭載しています。使い方は簡単で、左ハンドル付け根の「R」ボタンを押し、スロットルを捻るだけ。バックの速度も、アクセル開度で調整できるため、とっても使いやすいです。
●4つのライディングモードをそれぞれチェック
メインスイッチをオンにし、スタートしてみましょう。CE04には路面状況やライダーの好みなどによって選択できる4つのライディングモードを備えています。
電費を優先する「ECO(エコ)」、通常走行向きの「ROAD(ロード)」、雨天時を想定した「RAIN(レイン)」、それに日本仕様には、より速いペースで走るための「DYMAMIC(ダイナミック)」も用意されています。
各モードは、パワーの出方やアクセルを戻した時にバッテリーに充電する回生ブレーキの強さを自動で変更することで、状況などに応じた走りの特性を設定することが可能です。
まずは、ロードモードでスタート。アクセルを捻ると、エンジン車の250ccクラスとは比べものにならないほど力強いダッシュ力を見せてくれます。それもそのはず、あくまでカタログデータではありますが、このモデルの0-50km/h加速タイムは2.6秒。この凄まじい瞬発力は、まさに電動バイクならではでしょうね。
また、加速時に駆動用モーターが出す「ヒューン」というサウンドも、近未来のバイクを連想させてくれて、個人的には好きですね。音量もウルサイほど大きくなく、心地よい程度に出ている感じ。まるでサウンドチューンが施されているかのようです。
●ダイナミックモードは異次元の加速
次に、ライディングモードをダイナミックにすると、加速感がさらに増大。まるで、1000ccクラスのスーパースポーツに乗っているようなダッシュ力です。
しかも、コーナー手前などの減速時は、回生ブレーキが最も強く効く設定なので、ブレーキをさほど強く掛けなくても、50〜60km/hの速度からの減速であれば十分に車速が落ちます。
また、フロントにダブルディスク、リヤにシングルディスクを装備したブレーキシステムは、効きやコントロール性も抜群。
さらに、前後連動ABSと、前と後ろそれぞれにはバンキング・センサーを駆使したコーナリングABSの「ABSプロ」も装備するため、コーナーでのブレーキングもコントロールしてくれ、とっても安心。最大限の安全性を提供してくれます。
コーナー進入時の倒し込みやS字などでの切り返しは、とても200kgを超える車重があるとは思えないほど軽快です。スチール製ダブルクレードルフレームなどが、高い剛性感と優れた旋回性を両立することに貢献していることが伺えます。
また、車体下部に重たいバッテリーを搭載したことや、低いフォルムによる低重心化により、直進時はもちろん、コーナリング中も安定性は抜群。
さらに、前後15インチタイヤはグリップ感がかなり高く、路面のギャップなどからの衝撃もうまく吸収してくれ、快適な乗り心地などに貢献しています。
●普通に走れるレインモード
ライディングモードをエコにしたときは、加速はダイナミックモード時ほど鋭くありませんが、回生ブレーキの効きは同等に強く、街乗りで多い40〜50km/h以下の速度であれば、やはりブレーキをあまり強く掛ける必要はありません。
一方、レインモードにしてみると、回生ブレーキがさほど強くならないことで、最も普通のバイクに近い感じになりますね。
ほかのライディングモードで、強い回生ブレーキに慣れず、思ったポイントよりも早く減速してしまうような場合があれば、そうした特性に慣れるまで、雨の日だけでなく、まずはレインモードで走るのも手かもしれません。
普通のバイクより、アクセルをじわりと戻せば強い回生ブレーキでも減速をコントロールできるのですが、このあたりは好みの問題もありますからね。
●あくまで街乗りがメインかも
CE04は、60.6Ah(8.9kWh)の大容量リチウムイオンバッテリーを搭載しますが、それも航続距離は、前述の通り、約130km。そう考えると、ちょっと長距離ツーリングには不向きかもしれません。
充電方法も、標準装備している充電器(Mode2規格)の場合、単相200V/15Aで普通充電し、バッテリー0%の状態から80%の状態まで約3時間。
一般的な家庭用の100V電源は使えませんので、自宅で充電を行う場合は、電力会社と「単相200V/16A以下」の契約を結び、コンセントの設置工事が必要となります。
また、日本仕様ではMode3規格のハイスピード充電も可能で、一般に市販されている設置型のEV200V普通充電器(Mode3)、またはBMWが提供する4輪EV用の「BMWウォールボックス」を使う必要があります(フル充電の時間は普通充電で約4時間、急速充電では約1時間20分)。
なお、高速道路のSAやPAなど、日本の公共施設の多くに設置されているチャデモ(CHAdeMO)規格の急速充電器には対応していません。
つまり、CE04は、出先での充電がやりにくく、しかも充電時間がある程度必要です。
あくまでも、自宅に充電設備を備え、通勤や通学、買い物などの日常の足として使うことが前提になりそうですね。
環境に優しいゼロエミッションのバイクですし、走りやスタイルもかなり面白いのですが、まだまだ趣味の乗り物としては課題も多いのが現状のようです。なお、価格(税込)は161万円です。
(文:平塚 直樹/写真:小林 和久)