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■ボディ・デザインの再現精度にプレス技術が大きく寄与
2013年5月にデビューした3代目レクサス「IS」は、2016年10月の初回マイナーチェンジに続き、2020年11月に実施した大規模なビッグ・マイナーチェンジにより、外観を大幅にリファインしており、見違えるように洗練度を増しています。
そんな現行ISを後方から見ると、ラゲッジドア後端部がシャープに尖っていることに気付きます。
トヨタ自動車によると、同車のラゲッジドアには他に類を見ない高度な製造工法を導入しているそうで、ミニバンやSUV人気の中で希少化する正当派FRスポーツセダンの刷新に力を入れたそうです。
●「もっといいクルマづくり」で製造・設計・デザインがワンチームに
それまで同社では、生産サイドのプレス要件を重視した設計・デザインがなされ、鋭利でプレス成形が困難な部位は丸味を帯びたデザインに改められていました。
そうしたなか、2009年の豊田章男社長就任以降、「もっといいクルマづくり」の社風が徐々に浸透。
社長自身のバックアップもあり、競争力のある格好の良いデザインを何とか実現しようとする気運が社内に広まったことで、各部門がワンチームとなって知恵を絞り、ISのラゲッジドアにみられるシャープなデザインが実現できたそうです。
●IS開発チームが考案したラゲッジドアの成形方法とは?
従来工法ではプレス時に製品がキャラクターラインに沿って割れてしまうため、緻密な造形を可能にする世界初の「寄絞り(よせしぼり)工法」を開発。
上型内部にスライドカム機構を設け、まず上下の型で製品をプレス後、金型を閉じた状態でスライド型が作動。製品後方から更に絞りを加えることで、キャラクターラインを鋭利に尖らせることが可能になるというもの。
また、リヤフェンダーについても同様に、絞り成形後にさらにキャラクターライン部を製品内側から突き上げることでシャープさを実現する「突き上げ工法」を採用しています。
いずれも金型側の工夫のみで実現しており、プレス機本体には手を加える必要が無いのが特徴。
●金型はモデルチェンジまで4年以上酷使される
自動車は約3万点の部品で構成されており、そのうち、鋼板で作られる部品は約1,000点存在。そのうち約9割が金型によるプレス加工で製作されています。
ちなみに欧州の高級車の場合、6回のプレス加工(6工程)で製品化するのが主流ですが、トヨタでは高級車でも4工程までと決められており、その条件下で必要な製品精度を確保する必要があります。
完成した金型は大型プレス機にセットされ、約16枚/分のペースで鋼板加工に使用されます。
その後、金型は次のモデルチェンジまで4年以上に渡って1,600トンもの圧力に耐え続けなければなりません。
このように、金型は過酷な環境で使用されるため、ISのように複雑な構造を持つ金型は定期的なメンテナンスが重要であることは言うまでもありません。
現行ISで開発された先進的なデザインを実現するこれらの新工法は、今後のトヨタ/レクサス車の商品性に大きく寄与して行くに違いありません。
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