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■リアル開催だからこそ感じられる、各出展社のクルマへの熱い想い
2年ぶりのリアル開催となった東京オートサロン2022。
厳格な人数制限の下、かつてほどの賑わいはなかったものの、出展社の熱いメッセージが伝わるのはやはりリアル開催ならではの醍醐味。そうした中、会場で新たな流れを感じさせたのが地球温暖化対策を意識したカーボンニュートラルの実現へ向けた動きです。
それは内燃機関エンジン車の出展が当たり前だった東京オートサロンの歴史の中で、まさに時代の変化を実感させる出来事になったと言えるでしょう。
●ヤマハとSTIがタッグを組んでEVとしての新記録樹立を目指す
その中で、東京オートサロンに相応しい注目の出展をSTIが行いました。初公開されたEVのスポーツモデル『STI E-RAコンセプト』です。
車名の“E-RA”は電気自動車として記録樹立を目指すElectric Record Attemptの意味から取ったそうで、2023年以降にニュルブルクリンクサーキットでのタイムアタックで、ラップタイム400秒(6分40秒)切りを目指します。
搭載されるモーターはヤマハ発動機より供給され、システム出力は800kW(1088PS)という怪物級のパワーを発揮。これを独自開発した新採用の4モーター4輪トルクベクタリング技術で制御するということです。
STIでは電動化に向けて積極的に取り組む姿勢を見せており、「脱炭素社会においても、クルマが愉しいものであり続け、お客さまの人生を豊かにするものとするるために今後も新しい価値を創造していく」とコメントしています。
また、2022年半ばぐらいに販売を目指してトヨタと共同開発された、スバル初のBEV『ソルテラ』も出展されました。早くもSTIパーツに身を包み、ひと味違った雰囲気が楽しめそうです。発売時期は未定とのことですが、スバルファンとしてはぜひ実現して欲しいところでしょう。
●今年は「軽EV元年」になる! 三菱がコンセプトカーを発表
三菱自動車が初公開した『K-EVコンセプトXスタイル』も大きな注目を浴びました。
軽ハイトワゴン『ekクロス』をベースにしたBEVのコンセプトカーで、2022年度初頭の発売を計画しています。2022年度初頭に日産自動車との協業によって誕生する予定となっており、全長3395mm×全幅1475mm×全高1655mmの軽規格サイズをキープ。
BEVの肝であるバッテリー容量は20kWh、航続距離は約170kmと発表されています。
ただ、プロトタイプとは言え、車両がほぼ『ekクロス』だったことには多くの人が驚きを感じたはずです。
三菱の加藤隆雄社長はこれについて「EVが特別ではないことの示すために意図したこと。軽自動車は車体も軽く、街乗りに最適なバッテリーサイズにより買いやすい価格にできる。EVが使いやすいと感じてもらえる第一歩になる」と、“軽EV普及元年”を宣言しました。
また、三菱は新型「アウトランダーPHEV」をベースとしたコンセプトカー3台を出展。
いずれもかつて三菱のモータースポーツ活動を支えた「ラリーアート」ブランドを冠しており、その完成度から近いうちにパーツ類の発売も期待できるのではないでしょうか。
BEV普及の立役者である「リーフ」を擁する日産では、2022年6月後半にも発売を予定する「フェアレディZ」が最大の注目点。
しかし、新時代のクロスオーバーEV「NISSAN ARIYA」をはじめ、電動車の売れ筋モデルともなっている「e-POWER」搭載車を数多く出展していました。「ノート・オーラ」や「ノート」「キックス」ではNISMOやオーテックバージョンなども出展し、完成度の高さを披露していました。
●今後のチューニングカーはEVコンバートが当たり前になる!?
ダイハツ「ロッキー」に搭載されたシリーズハイブリッドエンジン「e-SMART」も、電動化として見逃せない存在です。会場にはe-SMARTを搭載したロッキーを“都会派向け”と“クロスフィールド派向け”の2タイプを出展。電動化によるエコロジーを追求しながら、趣向に合わせた楽しさを追求しようとしていました。
そして、東京オートサロンといえばチューニングカーやドレスアップカーが目白押しのショーとして国内外に知られてきましたが、ここにも脱炭素に向けた動きが出てきそうです。
その一つが、内燃機関から電気モーターへの換装、いわゆるEVコンバートです。
これまでも一部でこうした動きはありましたが、その動きが全国の整備工場などで急速に進み始めているのです。現在は半導体不足の影響を受けて思うような動きはできていないようですが、数年後にはEVコンバートを手掛けるチューナーが東京オートサロンで軒を連ねるようになるかもしれません。
脱炭素を目指しながらもクルマとしての愉しみ方は残していく。出展されたクルマを見ながら、そんな流れを東京オートサロン2022から感じ取ったのでした。
(会田 肇)