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■趣味のサーフィン、バイクに乗り、感性を磨いて仕事に活かすクリエイター流活用術
趣味と仕事、いわゆるオンとオフそれぞれを充実させることは人生を豊かにすると言われています。ただし、オンとオフの切り替えがうまくいかないとどちらかに影響がでることもあるでしょう。今回はサーフィンとバイクを楽しんでいるクリエイターに、趣味と仕事との関連性について話を聞きました。
●藤沢に引っ越したことをきっかけにサーフィンにハマる
今回登場していただくのは、映像制作会社でクリエイティブデレクションを担っている明本英男さん。
クリエイティブディレクション、それを執り行うクリエイティブディレクターと聞くと、さも常人とは逸脱したファッションセンスだったり、小難しい薀蓄(うんちく)を語りだしたら止まらないうるさ型を想像していたのですが、お会いした明本さんはナチュラルなスタイルで、あたりも柔らか、スポーツマンのような爽やかさも漂います。
一般には分かりづらいクリエイティブディレクションというお仕事ですが、見えているものを綺麗に映すだけでなく、目に見えないもの心の映像もビジュアル化し、それを創造物として生み出し、その作品で訴えたいけれど見えない部分まで見えるようにしたり、人々に感動を与えるのがお仕事と言えるのではないでしょうか。
年少時代から絵を書くことが好きだった明本さんは、学生時代にデザインを学び、若い頃はVJ(ビジュアルジョッキー※クラブなどで流す映像の制作担当)を通じてアーティスト活動もされていたそう。
現在は企業からのオファーを受けプロモーション系の映像をはじめ、イベント会場や博物館の映像展示や屋外大型ビジョンで流す映像など、幅広い分野で活躍するクリエイターです。
VJ時代の映像については「時代とともに(ハードやソフトが)進化していることもあり、いまの若手が手がける映像と比べると、恥ずかしいクオリティです…」とため息をつく明本さんですが、それらの映像制作がフックとなり、どんどん仕事のフィールドは拡大。現在は撮影まで担うようになりました。
そんな明本さんが仕事でモットーとしているのは、映像制作において前例を踏襲しないこと。
明本さんいわく、映像という仕事もルーティーン化してしまうところがあるので、常に以前とは違う何か、表現の変化を求める姿勢を貫いているそう。
また、仕事において一番のやりがいはクオリティの高い映像作りをテーマとし、それをやりとげることだと話す明本さんですが、ご自身にとって仕事は趣味の延長線上にあり「良いものや良い作品を作る楽しいこと」だと話してくれました。
ただ、映像制作以外に以前からハマっていたもの、また最近どハマリしている趣味をお持ちのようです。
ひとつがサーフィン。明本さんは海に近い場所で暮らしたいとの思いを実現すべく、1年前に都内から神奈川県藤沢市に移り住んだのですが、サーフィンをはじめたのは同地に引っ越してきたからのこと。
近くに住んでいる友人と二人でまずはサーフィンのスクールに通い、ショップでサーフボードを購入。ボードはミッドレングス(中間サイズ)からはじめ、ロングボード、さらにショートと、現在は5本所有するほどに。波のサイズや状況にあわせそれぞれのボードを楽しんでいるそうです。
「まだ上手くはないのですが、短いボードも長いボードもそれぞれの特性が全然違って面白いんですよ。あんなボードも乗ってみたい、これもいいなと試していったらどんどん本数が増えてきて…。午前中は意図的に仕事を入れないようにして、いまの時季だと朝の6時半、夏だと4時半頃からほぼ毎日サーフィンを楽しんでいます」。
●若い頃から乗り続けているバイクの楽しみ方
そしてもうひとつの趣味がバイク。とくにバイクはサーフィンとは違い、若い頃からずっと楽しんでいます。
スペックや機能面よりクリエイターという職業柄なのか、デザインを重視すると話す明本さんの現在の愛車はヤマハXSR700。そして、ただのスクーターでは面白くないからと、足代わりとして購入したトリシティ125の2台。
都内から藤沢へ引っ越したことで、通勤時間や距離が大きく伸びてしまいましたが、XSR700を自宅から都内にあるオフィスまでの通勤にも利用しているようです。現在、コロナ禍でオフィスに行く機会は減ったとはいえ、往復100kmほどの通勤にバイクを使うのは、とくに真夏や真冬は大変かと思うのですがそうではないと話します。
「XSR700でオフィスに向かう時の意識は、通勤というよりはツーリングなんですよ。時間に余裕がある時にバイクでオフィスに移動するのですが、国道1号線をずっと走ったり、高速道路を利用したり、鎌倉の方まで向かったあと海沿いの道を使ったりと、そのときの気分に合わせてルートを決めるなど本当にツーリング感覚でバイクに乗っています」。
通勤ではなくツーリングなので暑さや寒さは気にならず、ただ楽しい時間を過ごしているのだと話す明本さんですが、若い頃からずっとバイクにハマっている理由を挙げてくれました。
まずバイクならではの自由さ機動力の高さ、ここは同じ移動ツールである公共交通やクルマとは違うメリットがあると主張します。
例えば、温泉地に電車で行く場合、電車から下車しても目的地まで決められたレールの上で移動させられている気分に陥ってしまう。駅から温泉地に向かうまでの導線上にある土産店でさえ、そこで何かを買わなくてはいけない人工的に作られた環境にいると感じてしまうのだそう。
それがバイクを利用すると、ポイントからポイントへの移動の最中も、どこをどういうふうに移動しても自由。しかも、クルマよりも小回りが効くことでお店や風景との出会いが格段に上がる。そこに大きな魅力を感じていました。
ただし、バイクと同じく自由に移動できるクルマの場合は、移動中に途中で発見があっても駐車場を探さないといけない精神的な壁を感じてしまうとのこと。クルマに乗ることで、バイクのフレキシブルさを改めて感じるといいます。
自由度が高いバイクでツーリングを楽しむ明本さんですが、藤沢に越してきてからツーリングの味わい方が少し違ってきているとのこと。
「藤沢からは箱根や東伊豆など、ツーリングに適したエリアに行きやすくなったこともあり、散歩感覚でバイクを楽しむようになりました。例えば熱海方面へ行こうと決めたら、明確に目的地や行き先を決めずになにか発見できたらいいなとバイクを走らせる。ツーリングで行きたいところはわりと行き尽くした感があるからでしょうか、ここに行こうとルートをしっかり決めて走らせるのではなく、ふらっとバイクで出かける、そんな感覚で最近はツーリングを楽しんでいます」。
またバイク以外にも自転車、また徒歩で散歩するそうですが、クルマでのドライブ、バイクや自転車でのツーリングをする際は“解像度”の違いがあるとも話してくれました。
徒歩での移動中には道端に咲く花や草木を見ながら楽しむのものだとすると、自転車になると速度域がかわってくるため見える景色が変わってくる。移動中、発見したお店の商品は徒歩や自転車であればなんとなく見えますが、クルマやバイクの速度域になると店内まではっきりと見えないので、看板や建物の雰囲気を楽しむ。また四方をボディに覆われたクルマとバイクでは見える風景が違う、というように、同じルートを移動するにしてもそれぞれで楽しめるものが全然違ってくるというのです。
●バイクを走らせるとインスピレーションが湧く
このように、日々バイクやサーフィンを楽しむ明本さんですが、これらの趣味、特にバイクは仕事にもいい影響を与えてくれるといいます。
ひとつは、バイクを操っている時間は無になれるため頭がクリアになること。無になるとともに、無意識に自分自身と会話をしていることで、仕事に必要なインスピレーションが湧くことがあるのだそうです。
もうひとつは、バイクを走らせることで仕事柄、必要な美的感覚を磨くことができる美しい風景と出会えること。
晴れた日の海で見ることができる、太陽に照らされキラキラと光る海面、息を飲むほどの絶景が広がる山々など、美術館の展示物に劣らない感動体験を得ることができるといいます。感動体験との出会いは自然の中で楽しむもうひとつの趣味、サーフィンからももたらされていることでしょう。
「私の仕事は感性を磨くことが重要なのですが、年を取るごとにだんだん鈍っていく、つまり感動することが少なくなっているような気がします。しかし、バイクを走らせることでちょっとした景色、たとえば夕景などでも美しいなと感動することができます。しかも、バイクは走らせると風を感じますし振動も味わえる。機動力が高いバイクを通じて、新しい出会いや発見があることは私にとって非常に大きなことだと思います」。
バイクが備える機動力は感動との出会いをもたらす──オンオフ問わずに人生を豊かにする明本さんの趣味と仕事の関わり方は興味深いものでした。
(文:テヅカ・ツヨシ/写真:前田 惠介)
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