■圧倒的なパフォーマンスながら、控えめな外観デザインがいかにもVWらしい
国内外問わず自動車メーカーはSUVラインアップを強化していますが、フォルクスワーゲンもその中の1社です。先日マイナーチェンジを行ったティグアンは、日本市場におけるフォルクスワーゲン(VW)のSUVの中心モデルです。
2代目となる現行型ティグアンは、2019年に91万1000台が生産された欧州市場でのベストセラーSUVとなっている実力の高いモデルで、マイナーチェンジ後の1.5Lエンジンを搭載したモデルにも試乗しましたが、隙のないモデルに仕上がっていました。
その2021年5月に行ったマイナーチェンジと同時に、VWブランド初のハイパフォーマンスモデルである「ティグアンR」を追加しました。今回はこのハイパフォーマンスモデルのティグアンRに試乗することができました。
ティグアンRは車両本体価格684万9000円で、ボディサイズは全長4520mm×全幅1860mm×全高1675mm。
価格とサイズそしてパフォーマンスでライバルとなるのは、メルセデス・AMG GLA35 4マチックで、車両本体価格は702万円、ボディサイズは全長4440mm×全幅1850mm×全高1585mmとなっています。
ティグアンRは外観に、専用のフロントそしてリアデザインに加えて、専用デザインの21インチアルミホイールを採用。ブルーにペイントされたブレーキキャリパーによって、高いパフォーマンスを視覚で感じることができます。
搭載されているエンジンは、最高出力320ps・最大トルク420Nmを発生する2L直列4気筒ガソリンターボで、2100回転という低回転域から最大トルクを発生し、0-100km/h加速は4.9秒というパフォーマンスを発揮します。
ハイパワーなエンジンに組み合わされるトランスミッションは、高トルクに対応できるように設計した7速DSG。駆動方式は4モーションと呼ばれるフルタイム4WDですが、モータースポーツの世界からフィードバックされて新たに開発された、“Rパフォーマンス トルクベクタリング”というトルクスプリッター付き四輪駆動システムを、フォルクスワーゲンのモデルで初採用しました。
この駆動システムは、前輪と後輪の間だけでなく、後輪の左右のホイール間の駆動力も配分することができ、特にコーナリング時において、高い敏捷性を実現しています。
さらに、ティグアンRのみに搭載されている4モーションアクティブコントールは、ダイヤルを回すと「オンロード」「スノー」「オフロード」「オフロードカスタム」を瞬時に切替え可能。さらに「オンロード」プロファイルの中から「コンフォート」「スポーツ」「レース」「カスタム」を選ぶことができます。
なかでもティグアンRに専用開発されたレースモードでは、エンジンのサウンドをはじめ、トランスミッションやダンパーをスポーティな仕様に変更します。
ティグアンRの外観を見て、21インチのアルミホイールと255/35R21のタイヤ以外は、良い意味で主張しすぎていないところが美点といえるでしょう。リアゲート中央のエンブレム下にはティグアンではなくRの文字が光っています。今後導入されるゴルフRも同じ仕様となりそうです。
インテリアはブラックを基調として、ブルーをアクセントカラーに使ったクールな演出が施されています。本革シートはドライバーの身体をしっかりとホールドしてくれます。
ティグアンRのアクセルペダルを踏み動かして、まず感じるのはボディのしっかり感です。320psを発生するハイパワーエンジンに対応してボディ剛性は相当鍛えられているようです。
ちょっとラフにアクセルを踏んで加速しても、ボディの歪みは発生しません。そしてコーナリング時でも背の高いSUVで発生しがちな捻り剛性の不足によるリアの挙動の遅れも全く見られません。
最高出力320psを発生する2Lターボエンジンの乾いたサウンドがドライバーを高揚させますし、モードをスポーツやレースにするとそのサウンドはさらに大きくなります。
21インチという大径ホイールを履いていても、街乗りで不快な揺れや振動は全くなく、路面にアンジュレーションがあっても、ティグアンRはフラットな乗り味をキープします。
運転支援システムは、同一車線内全車速運転支援システム“トラベルアシスト”を全車標準装備。従来の渋滞時追従支援システム“トラベルアシスト”をさらに進化させたシステムで、ドライバーが あらかじめ設定した車速内において、前走車との車間距離および走行レーンの維持をサポートします。 ハンドルに設置されている“トラベルアシストボタン”を押すだけで、システムを起動することができます。
ティグアンRのパフォーマンスの高さと充実した運転支援システムを考えると、車両本体価格684万9000円はライバル車と比べてもリーズナブルと言える設定と言えるでしょう。
(文・写真:萩原文博)